問題のある営業マンに対し、法務パーソンはどのように対応すべきか?

 メーカーにてインハウスをしている者です。自身の備忘録のため、noteを投稿します(ご笑覧ください。年の瀬に、もはや何番煎じとも知れないような営業と法務の関係を綴りましたが、皆さまからもご意見賜れますと嬉しいです。)

 私より年次が上の法務部員の対応に引っかかるところがあり、自身の中で整理してみます。

(事案の概要)

営業マン  メールにて「この契約書のドラフト、今日中にお願いします!」→実は2週間前から彼の手元に当該契約書があり、本来はもっと余裕をもって照会できた。ちなみに同種の照会遅れが多いとの評判。

法務パーソン「(爽やかに)了解!」→実際にはドラフトを当日午前中に完成させたが、あえて退社間際にドラフトを提出。なお、営業からの上記の依頼メールは法務パーソンのみを宛先として送信されていたが、法務パーソンは営業マン側の上司等関係者全員をCCに追加し、メール本文にて度重なる照会遅れを追及。

 法務パーソンの気持ちはわからないではない。また、感情面の話は置くにしても、照会遅れがクセになっている営業マンへの一種の「警告」のようなものであり、同種の問題が今後発生しないよう手を打つこともそれなりに合理的であったと解釈できると考えています。

 ただ、どうにもしっくりこず、私は同種の事案で同じ対応をしようとは思えませんでした。そこで❶なぜ「しっくりこない」のか❷「私自身の考え方」を整理してみました。

❶「しっくりこない」の内容

①どの契約も事業の展開にとって重要となる可能性があり、法務の対応は会社の事業展開をあえて遅らせることで将来の会社の利益を減少させないか?

②問題の営業マンや、CCに入っていた営業マンの上司、関係者は、上記のような対応をする法務パーソン(ひいては法務部自体)に今後照会をかけたいと思うか?

③法務への相談のハードルが上がることで、重要案件が照会されなくなり、会社に重大な法令違反等の致命傷が発生するリスクを上昇させるのではないか?

④営業マンに恥をかかせない他の方法で警告できたのでは?

❷「私自身の考え方」

 改めて私自身の考え方を整理したところ、私の中には、「会社は正しく利益を上げるための存在であり、法務はその前さばき(ドブさらい?)をすべきである」という価値観があることに気がつきました(なんとなく普段から意識はあったと思いますが、改めて言語化してみるまではぼやけたままでした)。

 以上の価値観に従えば、私の法務人生において、事業展開の妨げになる(可能性がある)対応を、1人の営業マンに恥をかかせてまで行うという選択をする日は来なさそうです。レスポンスの遅れにより取引を逃してしまうリスクは、とってはならないリスクです。

 上記事案では「営業から法務への繰り返される無茶振り」という背景があったこととは思います。しかし、会社が事業展開を進める上では、どこかで必ずハードワーク(無茶振り)が発生します。

 ただ、四苦八苦しながらもこれに対応し、会社の利益を実現を目指す職責を負うのは営業も法務も同じです。そして、このような対応を通して、事業への当事者意識と、馴れ合いや形式的な関係ではない、一種の連帯感が発生してきます(ご経験のある方もいらっしゃると確信しています)。

 この当事者意識と連帯感があるからこそ、営業マンは法務の話に真摯に耳を傾け、結果としてリスクが顕在化する前の発見、対応にもつながります。

 上記事案の対応や私の考え方にはもちろん賛否両論があり、また対応の是非はつまるところ事実関係次第でしょう。法務パーソンに期待される役割が何であるのか、立ち返って考えてみる良い機会でしたので、私自身の備忘録として書き留めます。

 それでは皆さま、良いお年をお迎えください。








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