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[実話怪談]視線

これは仕事の帰り道に体験した話。

私は当時スナックで働いていて、帰りはいつも夜中の2時を過ぎていた。

お店から家までは歩いて20分くらいの距離でスナックのホステスという職業柄、お酒を飲むので、帰りはいつも歩いて帰っていた。

お店の周辺は栄えていて街灯もたくさんあり明るかったが、ちょっと裏通りに行くと道も狭く街灯もぽつぽつとある程度。時間も時間なので周囲は静まり返り、いつも心細い気持ちで家へと向かっていた。

その日もいつものように仕事が終わり家まで歩いていたが、真夏の夜は蒸し蒸しと暑く服が汗で肌に張り付き気持ちの良いものではなかった。

どのくらい歩いただろう。ふと気がつくと見知らぬ場所に立っていた。

いつもの道を歩いていたはずだったし、道を間違えるなんて初めてだったので、いつ道を間違えたのか不思議に思いながらも、大通りに出たら大体の場所は分かるだろうと、また歩きはじめた。

しかし10分…20分…30分歩いても歩いても大通りに出るどころか、なんだか同じ場所をぐるぐると周っている感じだった。

高いコンクリートの塀で囲まれた大きな寺の前をもう3回は通っている。

彷徨い歩く中、常に感じていたのは…視線。

誰かにじーっと凝視されているような気配をずっと感じていた。

いつまで経っても見覚えのある道に出られないし、もう夜中の3時近くで人気もない。

それなのに誰かの視線は常に全身に纏わりつくように感じていて、冷や汗が出てきた。

まただ…必死に歩いていると目の前にまたあの寺がでてきた。

高いコンクリートの塀沿いを歩いていた時、今まで以上に視線を感じた。

私は勇気を出して見られている気配にパッと目を向けた…すると

塀の上からたくさんの人が身を乗り出すようにして、私を見下ろしていた。

7、8人は居たと思う。老若男女問わず白装束に身を包んだ生気のない顔。無表情なんだけど目だけは一様にギロリとして私を見ていた。

私はその場から必死に走り去った。

気がつくといつもの見知った帰り道にでたので、急いて家に帰り、その日はヘトヘトでシャワーを浴びると今あったことを考える気力も無くすぐに眠りについた。

次の日、昨日のことがどうしても気になり、無性にまたあの場所に行きたいと思った。

といっても自分がどこにいたのか分からなかったので、地図を確認した。すると、大きい寺は近くに一つしか無かったので、ここだと思い行ってみることにした。

寺に着いて、たくさんの人がのぞいていた塀の裏に何があるのか見に行った。

そこは無縁仏の墓だった…




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