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朝倉秋成/教室が、ひとりになるまで

登場人物たちが不思議な力を使える
特殊設定ありの本格ミステリ。
ミステリを読むときいつも思うのは、
謎解きにそれほど興味を感じないこと。
謎解きのトリックやロジックが、
物語の空気と相まっているかどうか。
必然性を感じさせるかどうかを重視したい。
僕にとっては、謎解きよりも物語の方に大事だ。
ただ二転三転する謎解きの真相はハラハラを高め、
うまくフィットすると物語の面白さを深めてくれる。
この物語でいうと、
特殊設定の不思議な力がうまく効いている。
謎解き的にも物語的にもピタッとはまっている。

高校生の教室内に存在する、
クラスカーストをめぐる物語。
クラスで目出つ人間=上の人間と、
目立たない人間=下の人間をめぐる戦い。
その息苦しさがリアルに描かれている。
ある者にとっての心地良さは、
ある者にとっては息苦しく、
ある者にとっての退屈の解消が、
ある者にとっては地獄を見せる。
息苦しさを互いに共有することはできない。
それがカーストの哀しいところかもしれない。

それぞれが複層的な自分を発揮し、
多様な交流が生まれる教室があるといい。

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