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連載小説 星のクラフト 5章 #4

 食事を終わらせたローモンドに、シャワーするように告げた。私が地球に来たばかりの頃の服がまだクローゼットに残っていた。生地が地球のものとは異なる。それで捨て方がわからなかった。中央司令部から言われるまでは保存するように言われてもいた。それが今、役に立つなんて。
 シャワーを浴びてさっぱりとし、私の子供の頃の衣服を着たローモンドは、まるで私の子供時代に見えた。
「ひょっとして、顔も似てる?」
 私たちは並んで鏡の前に立った。ローモンドは金髪を長くし、私は黒に染めた髪を短く切っている。だから髪型はまるで違うし、年齢も十五歳ほど離れているために、一見似ても似つかないように見えるが、顔だけを取り出してみるとパーツはそっくりだった。
「私の子供時代の姿って、ローモンドみたいだったのかしら」
 写真もなく、思い出せなかった。
「ほんとにそっくり」
 ローモンドも驚きを隠せないようだ。
「子供時代の記憶だけではなく、身体もそっくりだなんて」
 私たちは互いの顔を見合わせた。お互いに見つめ合い、喜ばしいことなのか、それとも絶望すべきことなのかわからなかった。
「ローラン、ローランの子供の頃のこと、教えて」
「私の?」
「そう。湖とお城を行ったり来たりしていた私の子供時代のことは話したでしょう。そうだ、アルバムを持って来たはず」
 二人で再び中庭に出て、円盤の中を探した。
「あった!」
 ローモンドが座席の横に落ちていたアルバムを取り出した。
 部屋に戻り、それを見始める。
「うまくできている。ローランが上手に再現してくれたから」
 ローモンドは嬉しそうだった。「本当だったら、写真なんて誰も撮ってくれなかったから、失われてしまうはずのものだったのに」
「綺麗な湖ね」
 深い緑の森に水色の湖が輝いている。
「ところで、ローランの子供時代について教えて」
「そうだ。中央司令部からの電話の中で、私の子供時代の思い出を記録すると約束したのよ」
「へえ、どうして」
「ローモンドがここに居るって言わなかったら、過去を失うと地球にはいられなくなるとお嬢様が仰って、他の記憶を持った子を送ると言うので、やめてもらったの。その代わり、本当の過去を装着するからと言うと、忘れないうちに記録するようにと言われた」
「地球探索員養成所の記憶でもいいの?」
「もちろん、地球では内緒よ。別に悪いことを企んでいるわけじゃないけれど、決して受け入れられないだろうから。それに、まだ、この後、私には任務があるらしくて——」
 任務について話してもいいかどうか迷った。ローモンドはまだ子供だ。「そのうち話すけど、ローモンドにも手伝ってもらえればと思う」
 それは本音だった。
「わかった!」
 ローモンドの表情は輝いた。
「じゃあ、これから私が子供時代について話すから、ローモンド、一緒に記録して。時には絵を描いたり」
 私が言うと、ローモンドは嬉しそうに、OKと力こぶを作って見せた。

つづく。

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