連載小説 星のクラフト 4章 #11
「リオの鍵を持ったまま居なくならないでくれよ」
ナツが釘を刺す。
「もちろんです」
クラビスは枝から折りてきたインディ・チエムを腕で受けた後、肩に乗せた。
「それとも、僕が預かりましょうか。リオが持っていることが危険だと言うのなら」
ランが手のひらを差し出した。
「それも考えましたが、あなたは司令長官と近い距離にあります。私としては、まだあなたを完全に信頼しきれていないところもあります。全てを話していない」
クラビスはランを疑っているらしかった。
ランとしては、不本意でもなかった。船体室から船体の鍵を持ち出してしまったことは誰にも話していないし、それ以外にも秘密にしていることはある。
「じゃあ、構いませんが、持ったまま消えたりしないでください」
「そんなことはしません。お約束します」
「それにしても、もしも司令部があのパーツを持って自分たちだけでどこかに向かおうとしているのだとしたら、それはどうしてかしら」
リオは不安を隠さなかった。「私達を残して消えるつもり?」
「わかりません。ひとつの可能性について述べたまでですから。もう少し彼らの様子を観察していましょう」
クラビスは宥めるように言う。「それから、ラン隊長」
「なんです?」
「私は、いつか、あなたとサシで話がしたいと思っています」
クラビスの言葉に、誰もが一瞬黙った。
「俺とリオに聞かせたくないことでもあるのか」
ナツは悔しそうに顔を顰めた。
「そういうわけでもありませんが、ラン隊長の方で――」
クラビスが言い掛けたところで、
「いいですよ」
ランは承諾した。「いつか、ここで会いましょう。僕は一人で来ます。そちらはインディ・チエムが一緒でも構いませんよ」
クラビスの肩に止まっていたインディ・チエムが、興奮したかのように羽根を何度もはばたかせた。
4章了
つづく。
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