見出し画像

連載小説 星のクラフト 6章 #10

「リオはクラビスの作った三つのパーツをダウンサイジングできず、こちらに持ち込めなかったことについてどう思っているかな」
 パーツは全て揃わなければ新しい中継星は作れないはずだった。
「パーツ類は全てダウンサイジングできるはずだと指示されていたとしたら、リオは私のオブジェをパーツではないと思ったのではないでしょうか。一応、どうしてダウンサイジングできないのか、と考えたかもしれませんが。たとえば、パーツ収納庫に光線を当ててダウンサイジングする方法があったとしましょう。そうすれば両掌に入る程度に縮小される。そして、箱に入れて21次元に持ち込む。その手順だけを教え込まれて、速やかに任務を果たせばいいのであれば、縮小されないものがあったとしても気にもしないのかもしれません。そして、上部組織は、まだ鍵が開けられていないものの、開けさえすれば、あの箱の中に全てのパーツがぬかりなく入っていると考えているのです」
 クラビスはどこまでも細かく推理しているらしい。
「じゃあ、クラビスの作った三つのパーツがまだ0次元にあることを僕たち以外には誰も知らないのか」
「そうなります」
 クラビスが言うと、インディ・チエムが甲高い声で鳴いた。「あ、いや、インディ・チエムも知っているらしい」
 やがて、森の中にあるテーブルの場所に到着し、二人はどちらからともなく椅子に座った。
「どうして、上部組織が彼らだけでパーツを持ち去ろうとしているのかはわかりません。しかも、わざわざ、私達をこの21次元まで連れてきた。組み立て要員として連れて来られたのかと思っていましたが、パーツを持ち去るのであれば、ここに来る理由はなかった。ラン隊長とナツさん以外は、です」
「隊長はやめてくれと言っているだろう」
「そうでしたね」
「いずれにしても、全部クラビスの推測に過ぎない」
「それも、そうですね」
「僕の推理も話しておこう。上部組織は最初から君のことを疑っているのではないか。地球人ではないのではないかと」
「そうでしょうか」
 クラビスは短く応答する。
 なんとなく気まずい空気が流れ、二人は一瞬黙り込んだ。インディ・チエムが柔らかい声で囀り、気まずい空気に戸惑っているかのようだった。
「リオの鍵を僕に預けてくれないか」
 ランは手をクラビスに差し出した。
「それはできない」
「鍵を開けたところで、クラビスが作ったパーツがなければ、中継星は完成しないのだろう?」
「それはそうですね」
「じゃあ、どうして?」
「私の作ったパーツだけが入っていないことがバレるでしょう? 私が地球人ではないことがすでに上部組織にバレているとしたら、それは先日の会話をリオさんが司令長官に伝えたからです。もしも今でもバレていなかったら、リオさんと司令長官の結びつきはそれほど強くはない。しかし、鍵を返してしまったら、そのことを確かめる方法がなくなってしまう。上部は直ちに0次元の装置に誰かを派遣し、私の作った三つのパーツを探し出すでしょう」
「いやに疑い深いですね」
「私はそのように訓練されましたから」
 クラビスが言うと、森の中を生暖かい風が通り抜けた。

つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?