『アンビュランス』の感想書く
あらすじ
はじめに
『トランスフォーマー』シリーズが有名なマイケル・ベイ監督の最新作映画。「銀行強盗の逃走車が救急車」という訳の分からないテーマを「映像の迫力」によるゴリ押しで成立させている怪作だ。
個人的には非常に楽しめる作品だった。
アンビュランス
タイトルの「アンビュランス(原題:Ambulance)」は「救急車」を意味する単語である。ちなみに今作は、2005年に製作された同名映画のリメイク。(そちらの邦題は『25ミニッツ』)
英題だとAMBU"LA"NCEのLAの部分だけ色が違うのだが、それはロサンゼルス(LA)で起きた事件だからなのだろうか。
だとしたら邦題で「ラン」の部分だけ色が違うのはなんともダサく感じてしまう。(逃げる、という意味で強調しているのかもしれないが)
映像の迫力
なんと言っても特筆すべきはその映像の迫力だろう。一体何台の車がこの映画の撮影により破壊されてしまったのだろう。
恐らく137分の尺の内、8割以上の時間はカーチェイスが描かれていたのではないだろうか。しかもその長いカーチェイスの映像において、「このシーンは手を抜こう」と感じさせるシーンは特に無い。ずっと全力全開のカーチェイスなのだ。正直疲れるくらいの迫力だった。
最近のドローンって凄い
そんな迫力ある映像の中でも、一番衝撃を受けたのは(恐らく)ドローンを使った空撮だった。縦横無尽に入り乱れ爆破四散する車の群れの中を、ドローンが隙間をぬって飛び、的確にその映像を収める様には大変興奮させられた。
正直ここまで凄い映像を撮ることができる、というのを自分は知らなかった。一昔前の感性だと「自由自在に飛ぶことのできる自我を持った妖精さんがカメラを担ぎでもしなきゃこんなの撮れないよw」となるくらいの映像だった。
勿論クレーンを使った空撮もあるが、「カメラの持ち手」を感じさせないその自由な映像の迫力はその一段上を行くと思う。ドローン技術、恐るべし。
ただ一つ苦言を呈すとするなら、あまりにも視点が自在に動きすぎるせいで、耐性の無い人は酔ってもおかしくないとは思う。難しい。
ストーリー
この映画が映像面にのみ力を入れた作品かと言えば、決してそんなことはない。しっかりとストーリーも描かれている。
いや、描こうと努力している。
正直な話、真面目にストーリーを追うとあまりの現実離れした破綻っぷりにゲンナリしてしまう人もいるだろう。何時間も給油無しにフルスロットルで走り続ける救急車、そんな中救急救命士により行われる本職の外科医でも難しい手術(しかも成功)、運転中の運転手から行われる輸血。
そもそもこの令和の現代で銀行強盗が成立するのか?(いやアメリカに令和の概念は無いけど)
ツッコミどころを上げればキリが無い。
だがそんな事はどうでもいい。
確かに怪しいポイントはあるが、「作中のハチャメチャ世界観」の中では成立するように頑張って描かれていた。それだけで自分は満足だ。ウィルは元軍人だから運転が信じられないくらい上手いのだし、膵臓が破裂しても髪留めで止血すれば大丈夫なのだ。そういうものなのだ。(スーパーマンが何故空を飛べるか考えた事はあるだろうか? 無いだろう。そういうことだ)
逆にここがどうしても受け入れられない人には向いてない映画だと思う。
構成で言えばツッコミどころは多いが、人間関係や人となりは頑張って描かれていたと思う。終盤で主人公達兄弟が絆を再確認する場面には正直ほろりと来た。(バカ映画だけれども、それでも悲しく優しい兄弟たちだった)
一方で忘れた頃に唐突に挟んでくるコメディシーンも個人的は好みだった。正直相性による個人差は相当あると思う。
悪かった点
ここまで基本的に褒めてきたが、逆に悪かった所を挙げようと思う。
やはり「カーチェイスシーンがあまりにも長すぎる」というのは流石に問題であると思う。いや勿論全てのカーチェイスシーンに迫力があるのは分かるし、合間合間にストーリーが描かれることもあって意外と飽きが来ないのだが、にしてもやっぱり長過ぎるとは思う。自分は映像に迫力があるだけでご飯が食えるタイプの人間だからまだマシだとは思うのだが、正直クドいと感じる人も少なくないとは思う。
カーチェイスシーンを削って、全体で120分くらいの尺にしたら丁度良かったのではないだろうか。
あと詳しくは書かないが、ラストのいかにもなお涙頂戴シーンはどうかとは思う。(銀行強盗の犯人の妻が急に大金を手にしたら絶対に怪しまれるじゃん、とかは突っ込んではいけない)
まとめ
なんと言っても映像が素晴らしかった。正直それだけで満足である。映画館のスクリーンと音響で楽しむ価値のある作品だと思う。カーチェイスだけでなく、銃撃戦の迫力も申し分ない。グレポンの登場には正直興奮した。
逆に「なんでここはこうなるんだ?」と考え込んでしまう人には向かない映画だと思う。良くも悪くも大味でゴリ押しな作品だ。言うなれば二郎系ラーメン?
あとエンドロールがめちゃめちゃ短かったのが印象的だった。あれほどの規模の映画だから携わっている人の数も膨大なものだと思うが、あっさりと体感1分程度で終わってしまった。もしかしたら退屈なエンドロール嫌いの人にもお勧めできる映画かもしれない。
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