JOE3
朝目が覚めるといつもと変わらない部屋だった
昨日のことは何もなかったことになって鮮やかさは消えて、神様もいないいつもの俺の部屋
壁にかかってるのは親父がもってきたボブマーリーの壁掛けと無駄に大きな直径1mはありそうな時計
ファミコンが繋がれたブラウン管テレビと映画が入っているテレビボックス
ファミコンに刺さってるのはマカマカ
置いてる映画はゴダールにジム・ジャームッシュ
ご多分に漏れず俺も父親からの影響をうけている
ラスタはいつも何処から手に入れてきたのか、俺の部屋に変なものばかり置いていく。
さっき紹介したものの殆どはラスタが勝手に俺の部屋に持ち込んだものだ
ケンジと釣りをしにいった帰りにラスタが巨大な時計担いで2階のウチの部屋まであがっていっている時は度肝を抜かれた
さらに部屋はラスタの好きなポスターまみれ
自分の部屋の壁が埋まり
ガミガミに怒られながら次は便所の壁を埋めて
リビングを埋めようとしたところで、さらにガミガミのカミナリが落ちて俺の部屋に落ち着いたのだ
まったく、じょうだんじゃねぇ
部屋に置いてある映画をもじるなら勝手にしやがれってそのままの感じだ
おそらくはじめて部屋にきた友達は飽きることはないであろう中古レコード屋のような部屋をでて洗面台にむかう
いつもと同じ1日
またはじまった1日だ
鏡に映った顔を見ると目ヤニをつけてボサボサの髪の俺
歯ブラシをもって歯を磨き
口をゆすいで顔を洗って
寝癖をなおしてリビングにむかって
朝ごはんをたべる
そう、同じ1日、同じ1日
そんなクソはごめんだ、映画の始まりは些細なんだぜ
俺は人生にキックをいれる
右耳の上の方にピヨっとあがっているおれの寝癖は今日はなおさない
「ふふん、、」
ちょっと小粋に鼻で笑う
口で
ハーーっ
と息をして、鏡を白くしてそこに寝癖つきのニコちゃんを書き入れる
「よし、できあがりっと」
俺は寝癖をなおさないできあがった髪型でリビングに向かった
ガミガミの朝は早い、なにしろ人にガミガミガミガミ言うくらいだ自分のことはそれなりにキッチリやっているのだろう
「あら、おはよ!」
「おはよ」
「あんたアタマピヨついてるわよ!顔洗ってとっとと着替えなさい!」
「みてみろよ、かぁちゃん俺の目を!綺麗に目ヤニが取れてるだろ、俺はもうすっかり鏡をみて顔を洗って歯を磨いて綺麗にしてきたんだぜ!」
「あんた、、そんなに自信もって言えるくらいなのにそんなに目立つ寝癖なおさないなんてどういうことよ、」
「1日に違いをいれるんだ!今日という日の1を変えることによって、あし」
「まぁ、いいわ、はよ食べなさい!」
ガミガミの野郎は俺の一日にキックをいれるために寝癖をつけたという理由を遮ってさっさと朝飯を突き出してきた
フレンチトースト、決して豪華じゃないが朝から作ってだしてくれるガミガミのこういうところは尊敬している
「はぁ、、あんたはお父さんに似てほーんと少し変わった子よねぇ、お父さんったら昨日は何の影響を受けたのか知らないけどシーラカンスの刺身を食べに旅立つと言って騒いでたのよ」
朝から実の父親であるラスタの奇行話を聞くのはなかなかハードだ
だが俺はそんなラスタがきらいじゃない
「いいじゃん、夢があって」
「夢があったってお金がないじゃない!うちには金がないのよお金が!夢を叶えようにもどこにそんなことできる手立てがあるってんでしょうね、おまけにホントに寝てる時にみてる夢みたいな夢だしねぇ」
ガミガミはリアリストだ、ラスタの遊び心をもう少し理解してあげてほしい
世の中にはおもちゃを選ぶ時のような感情が必要だ
だから俺は何かを買う時は決まって遊び心があるものを買うことにしている
ドンドンドンドンドン
ラスタの部屋から音が聞こえて洗面所に消えていく
「あら、お父さん起きたみたいね!あんた早いこと食べて席あけてお父さんに譲ってあげな!」
これだからせっかちなリアリストは嫌だ嫌だ
家族揃って食卓を囲むことより嵐のような家族の朝食をとっとと終わらせることに夢中だ
まぁ、いい、どうせフレンチトーストなんてものは突っ込んで食ったってゆっくり食ったって味は同じだ
ガフガフガフ
俺は口に突っ込む
「うぃーー、おはよぉーー、かぁちゃん水くれぇー」
ラスタのご登場だ、洗面所に行ったってのに未だに残る毎度の二日酔いの雰囲気だ
ゴフゥ!!!
俺はラスタの顔をみた瞬間突っ込んでたフレンチトーストを吹き出してしまった
ラスタのバカ俺の鏡に描いたラクガキ気づきやがったな
俺と同じ位置に同じように寝癖をつけて、洗面所からなおさずにやってくるとは、
「今日はい〜い一日になる気がするぜぇーー。おっ!ジョーー同じ髪だな!洗面所の神様見習ってお前もやったのか?それともお前が神様かぁ〜??」
「バカヤローー!おれにはいろいろと考えがあってやってんだよ!まず今日という1日にキッ、」
「あんたら、親子してバカやってないではやく朝ごはん食べなさい!!」
ガミガミがまた俺の言葉を遮りやがった
ラスタはケラケラと笑っている
俺はそんなラスタの遊び心が好きだった
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