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なぜテネットは難解なのか

どうも、毎度おなじみ観劇おじさんです。

今回は小劇場演劇ではなく、クリストファー・ノーラン 監督が仕掛ける、究極の映像体験×タイムサスペンス超大作!『TENET テネット』大ヒット上映中!ということでテネットの話をします。公式HP

テネットについては公開になってまだ2週間ほどなのでネタバレ嫌いな自分としては見た人とだけ話がしたいなぁと思ってたんですが、twitterで「説明が少なすぎて不親切!」みたいな言動が多々見受けられたので、それを見てそもそも視聴を断念してしまうことがないようにネタバレを極力避けつつ、でもちょこっとネタバレしつつテネットへの拒絶反応を少しでも減らせるようにとの想いを綴ろうとキーボードを手に取りました。

簡単なあらすじから書いていこうと思って公式HPのあらすじ読んだけど開始10分以内のことしか書いてなかったから自分で書きます。

いっけなーい!爆破爆破! 私、主人公(作中で名前への言及なし)。特殊部隊メンバー!このテロは陽動!どこにでもある至って普通のアクション映画!でも逆行する弾丸と祖父殺しのパラドックスのせいで全人類がピンチ!しかも逆行するのはモノだけじゃなくて!?一体私、これからどうなっちゃうの〜!?!?!?

こんな感じです。

こんな感じだよ??

あらすじが分かったところでタイトルの通り「テネットがわからん!」となる理由について列挙していきたいと思います。

①時間を逆行しているものとしていないものの区別が付きづらい
馬鹿なことを言うなお前は予告編を見てないのか弾丸とか炎とか戻ってたやんけ、とおっしゃるかもしれませんが、実際に映画を観たらこの意味が分かります。この混乱は巡行と逆行の2つの属性しかないと先入観にとらわれているから起こるものだと考えます。実際は次の4パターンがあります。

A. 巡行世界で巡行している
B. 巡行世界で逆行している
C. 巡行世界で逆行していたがある手段を用いて巡行している
D. 巡行世界で逆行している乗り物などに乗っているが巡行している

まだ付いてきていますか?

Aの説明は不要ですが、視点としては必要です。

Bについては予告編にも出てくる「銃の中に戻る弾丸」などがあたります。Bの状態の人間には予告編の主人公のように物理法則が逆になって見えます。

Cは物語の確信に迫るものですが作中に言及が一切ありません。

Dはある条件が分かればすぐに見分けられるんですが見分けたところで大した意味はありません。

この映画の中ではこれら4つの事象がほぼ同時並行で物語に組み込まれ、展開していきます。正気か????二次関数の説明をした後に複素数平面の問題を解かせる基地外みたいな感じか??逆行状態での制約とか誰が巡行で誰が逆行だとかいう基本的なことをすべて理解している前提で話は進むので、1度見てわからなことだらけなのは正常だと思います。わかるまで見ましょう。

②主人公の察しが良すぎる
主役だから特別なんです。時間が逆行する+逆行する物体がある+逆行する手段がある+相手は逆行に関して30年以上の経験があるベテランというすべての要素を分かったのか分かってないのか分からない顔をしながら全部理解して行動する主人公。無敵じゃんね。そもそもこれだけ察しが良くないとこの話の主役にはなれません。とっさに筋の通った嘘も付くしヒロインのことも利用するし状況変化に対して的確に切り返すしマジで無敵。それでいて腕っぷしも強い。自分の行動について説明台詞のひとつも吐いてほしいところですがここでも観客は置いてけぼりになります。わかるまで見ましょう。

③主人公と同じくらい敵も強い
2でも少し触れましたが、この法外な強さの主人公と対等にやり合う敵の親玉もこの道30年以上のベテランなので負けていません。階段を上ってくるポルナレフを一生懸命階下に戻してるDIO様並みに裏でいろいろ動いています。主人公視点でしかお話が見られないので観客がそれを知るすべはなく、あくまで想像するのみ。でも観覧中は無理ですノンストップですから。わかるまで見ましょう。

④タイムパラドックスに関する考え方の説明が曖昧
テネット1回目を観終わった後に私が謎のツイートをしていたことをご存じの方もいらっしゃるかと思います。

タイムトラベルに付き物なタイムパラドックスですが、作品によってその解釈は様々です。

Wikipediaの記事内にも記載がある通りドラえもん世界のタイムトラベルにおいては過去改変の試みは織り込み済みで、過去を変えたことによる影響で自分が消えてしまうようなことは起こりません。前述の映画ドラえもんのび太のパラレル西遊記においても、過去にタイムトラベルしたのび太が見た孫悟空は物語後半で再びタイムトラベルしてきた現在ののび太からつながる未来ののび太です。ここまで読んでテネットを観た人であれば私のツイートの意図が読み取れると思います。

ネタバレになりそうでならないラインだと思いますが、テネットにおけるタイムパラドックスの解釈はドラえもんのそれとほぼ同じだと自分は考えています。ここで問題なのが、作中でこのパラドックスについて全く逆の見解を元に主人公と相棒が会話をするシーンがあるんですよね。ミスリードも大概にして欲しい。どこでそんなミスリードがあったのか覚えてない?わかるまで見ましょう。

⑤答え合わせができない
説明しすぎるSFもどうかと思うが、見ている最中に自分で予想した事象が正しいのか正しくないのか答え合わせができるタイミングがこれほど少ない映画は(あるにはあるけど)あまりない気がします。最後のシーンで全部わかる作りになっている同監督のメメントや、これからどんなことをするのか割と詳細にプランを話してくれる同監督のインセプションはいい塩梅になってるのにテネットがこの様な理由はおそらく、説明をちゃんとしてると5時間をゆうに超えちゃうからだと思います。上演時間が昔に比べてどんどん短くなっている風潮など全く気にするそぶりも見せない165分!でも足りない!!!!そりゃ説明も少なくなりますわ。これ以上詰め込んで尺伸ばしたら見てる側がギブアップしちゃうもん。答え合わせする余裕がないのは必然なので、わかるまで見ましょう。


と、ここまで語ってきましたが、結局尺が足りないのが一番大きい原因だと思うのでノーラン監督は早く7時間尺で完全版テネットを出してくださいお願いします。とりあえずBlu-ray出たら絶対買う。

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