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令和2年診断士2次試験を書く~事例①~

書き始める前に

私は合格はしたものの、得点開示請求はしていません。(なんとなくやる動機がないな~なんて)ゆえに、一体この解答がどの程度のクオリティなのかという保証は全くないわけです。そもそもこの試験、解答が公開されていないので、細かい「ここが何点!」ということがわからないということもあります。
しかも予備校によって解答がまちまちだったりします。今回の問題でいうところの事例2第3問設問1がその顕著な例だと思います。(アンゾフのあれ)
一度しか試験を受けてませんが、何を書いたかというより何をどのような根拠で書いたかが大事な気がした(あくまで個人的な実感)ので、そのあたりを念頭に置きながら、書いてみようと思います。
問題分や設問は載せないので、各自お手元にということで。
解答と根拠は分けるので、解答だけみたい方は解答だけどうぞ。なお解答の再現度は70%くらいなので、「あれ?文字数全然足れへん!」をご容赦ください。
*『 』→問題もしくは設問から抜粋として記述します。
<重要>
記述する内容はすべて私の個人的な考えであり、必ずしも正解ではありません。
「へー。こんな考えもあるんやね」くらいのスタンスでお願いします。

第1問設問①~解答~

日本の文化や伝統を象徴するブランド力と、既存の高級旅館などグループ企業とのシナジーを活かして、新規事業開発を行い、インバウンド需要を獲得し、地域活性化につなげるというビジョン

第1問設問①~設問読解~

老舗蔵元A社を買収する段階の話であり、A社長の祖父に関する設問であること。
A社の経営権を獲得する際における、経営ビジョン(≒将来の姿)を聞かれていること。

余談ですが、『どのような経営ビジョン~』と聞かれているので、「~というビジョン」という答え方が個人的に好みです。
「描いていたビジョンは~」と解答する方もいらっしゃると思います。ただ、個人的に「好きなラーメンは何?」と聞かれたら「好きなラーメンはとんこつ」ではなくて「とんこつのラーメン」と答えるから、という簡単な話です。一蘭さんのラーメン美味しいですよね。

第1問設問①~解答根拠~

この設問に関しては、関連記述が明らかです。
『インバウンドブームの前兆期ともいえる当時、日本の文化や伝統に憧れる来訪者にとっても、200年の年月に裏打ちされた老舗ブランドは魅力的であるし、それが地域の活性化につながっていくといった確信が買収を後押ししたのである』の部分です。
この点が買収を後押しした≒ビジョンを描けていたからこそ買収という意思決定ができた。ということになるためです。
ということで、老舗ブランドが魅力的であることを活かして何かを行い、それを地域活性化につなげるというビジョンといった大枠の解答が、この時点で出来上がります。
何かの部分は、インバウンド需要の獲得にしました。老舗ブランドは来訪者にとって魅力的であるということ、当時はインバウンドブームの前兆期だったというから、すんなりつながります。
とはいえこれだけでは解答の文字数が埋まらないので、もう少し色付けが必要だなーなんて思うわけです。ここで引き出してきたのは、既存事業との何かしらのシナジーがあるかも?という視点です。この視点から問題分を捜索すると、『旅館などグループ企業からの営業支援』というフレーズを見つけ出せました。
確かにこの記述自体は、買収時点の話ではありません。しかし、営業支援が『あった』としていることから買収直後からあったとして違和感はないと思います。その上、既にある「高級」旅館と「老舗」ブランドは結び付きやすいですし、(多少偏見)実際にシナジーを意識したであろう施策を行っている(高級食材を提供するレストランの建設)ことから解答に盛り込みました。唯一、営業支援がA社社長、ないしはA社長祖父の指示であるような明確な記述がないことが気になりましたが、このような全社的取り組みはおおむねトップマネジメント主導だろうと、ここは推測です。
「インバウンド需要を獲得し、地域活性化につなげるというビジョン」という点は間違いないと思いますが、全体の解答としては弱いかも知れないですね。
次の設問が人的資源の設問なので、『買収先の資源を有効活用し、短時間で新規事業展開を行う』みたいなフレーズも入れられるともっと良かったかなーと今になって思います。

第1問設問2~解答~

理由は、事業展開を行う上で、ベテラン従業員の知識やノウハウを活用するため、酒造りの経験がないA氏が、経営顧問やベテランの蔵人から酒造りを学ぶため、そして、前体制時の雇用責任を果たすため。

第1問設問2~設問読解~

①主語がA社長の祖父であること
理由を聞かれていること
③問いの中心は人的資源であること。

余談ではありますが、「理由は」という書き出しは不要なのではと思ったりしています。なくても日本語としては違和感なくないですか?

第1問設問2~解答根拠~

『長年にわたって勤めてきた10名の従業員に対する雇用責任から廃業を逡巡していた』の記述から、一番わかりやすい理由としてあげられるのは雇用責任だと思います。友好的買収を行うためにはこの条件は当然クリアしていなければならないものです。しかし、それだけでは、解答として不十分だと考えました。
というのも、雇用責任は買収に伴う前提条件で、この条件を勘案して、「メリットがある」つまりは設問1のビジョン実現に役立つと判断しない限り、買収を決断しえないはずだからです。
また、この事例のような状況において、買収先の資源(無形含む)を有効に活用することが重要であることは明らかです。
以上ふまえて、重要だと思った事柄は以下3点です。
①A社長は酒造りの経験がない。
→経営顧問や杜氏、蔵人から酒造りを学んだ(知識の活用、伝承)
②A社長は経営実務の経験値が高いとは言えず、祖父の下で修行を行った
→A社長育成はA社長祖父にとっても重要であった
③事業を統括する体制づくりにベテラン社員や蔵人たちが活用された
→ノウハウを活用した事業展開を行っている(ビジョンの実現)
ということで、「A社祖父はA社長の育成ビジョンの実現のため、買収先の人的資源が有効活用できる」と考えたと判断しました。
それに前述の雇用責任を加えて、解答はできあがりです。

第2問~解答~

手順は、まずベテラン事務員と共に働くことでその暗黙知を自身の暗黙知として習得し、次に、それを使用していく中で、誰もが確認可能な形式知として整理し、最後にその形式知を情報システム化した。

第2問~設問読解~

①主語が女性社員であること。
②情報システム化を進めた手順を聞かれていること。
≒「こうして、こうして、こう」という流れを解答に見せたほうが美しい。

第2問~解答根拠~

私は設問と本文見た段階で、「SECIモデル聞かれてるな」と思いました。なぜかというと、1文しかなさそうに見える関連記述の書き方が「まさに」だったからです。
『また、総務担当責任者も前任のベテラン女性事務員と2年ほど共に働いて知識や経験を受け継いだだけでなく、それを整理して情報システム化を進めたことで抜擢された若い女性社員である』の部分です。
そもそもこの関連記述、かなり強引に入れてる印象です。該当分の段落は「血縁関係ではない人を抜擢してきました」という内容で、その抜擢された人が何をしてきたかは、言ってしまえば「なくても意味は通る」記述です。(あくまで設問などを無視して、単純な読み物として)それがわざわざあるということは設問に対する重要度は高いように思います。実際、第3問の重要記述もここにあります。
上記考慮して該当部分を見ます。この部分、これでも意味が通りませんか?「総務担当責任者も、業務の情報システム化を進めたことで抜擢された若い女性社員である」・・・・どうでしょう?
何が言いたいかというと、設問さえなければ『前任のベテラン女性事務員と2年ほど共に働いて知識や経験を受け継いだだけでなく、それを整理して』の部分、なくていいんです。逆に言えば、設問があるから必要なんじゃないか?なんて思ったわけです。
ということで、その部分だけにフォーカスすると
『2年ほど共に働いて知識や経験を受け継いだ』=共同化
『それを整理』=表出化
『(整理したものをつなぎ合わせて)情報システム化』=連結化
*内面化は記述なし。とはいえされているものと思っていい。
と読み替えられました。あとはこの流れ通りに解答を書けば完成です。
振り替ってみると、もうちょっとスマートな解答書けたなぁと思います。


私はノートは手書き派です。

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第3問~解答~

求められた能力は、①新たに直販の得意先を獲得する新規開拓力と、②顧客ニーズなどの、新規事業や本業の酒造事業に活かせる情報を顧客から聞き出し、社内に持ち帰ってくる能力。

第3問~設問読解~

直販を取り入れ、売上を伸長させるにあたって、要求された能力を聞かれている。
②あくまで直販を取り入れ、売上を伸長させるにあたって、であって、直販の売上を伸長させるにあたって、ではない
≒直販を取り入れ、売上を伸長させる方法の一つとして、直販を売上そのものを上げるという方法もあるが、それは方法のひとつでしかない。直販を取り入れることで他の事業に良い影響を与え、売上を伸ばした、なんて考え方もあってもいい

第3問~解答根拠~

関連記述は『ルートセールスを中心とした古い営業のやり方を抜本的に見直し、直販方式の導入によって本業の酒造事業の売上を伸長させた人材であり、杜氏や蔵人と新規事業との橋渡し役としての役割も果たしている』の部分です。私はここしか使いませんでした。(余談ですが、例によってこの1文、なくても読み物としては意味が通ると思いませんか?)
設問読解で既述の通り、視点を二つ持ってこの1文読みますと、ズバンと半分に割ることができました。
『~売上を伸長させた人物であり、/(ここ) 杜氏や~』
前半は直販の売上増加による本業の売上伸長、後半はその他の事業への影響です。
前半に関しては、なんの捻りなく素直に解答に盛り込みました。「直販を伸ばすには、今までのルートセールス以外の新規顧客要るな。ということはその開拓能力は当然求められるやろ」という至極単純な解答です。
後半は少し本文からは飛躍した解答になっています。『橋渡し役を果たしている』ということは、この執行役員を通した事業間、人間間の情報共有は円滑であると考えられる、つまり直販で有益な情報を回収できれば、そのまま他事業へ活用できるはずだと判断しました。さらに、直販=顧客と直接コミュニケーションをとれる=ニーズの収集という視点から顧客ニーズの収集を一例として入れました。
我ながらやや飛躍しているなと思っているのは、情報が必要だとはどこにも書いていないことです。このご時世情報が重要なのは当然ですが、書いていないということは一抹の不安要素です。
また、『橋渡し役を果たしている』ことが好影響だという点で見れば営業担当者にも同じ能力(≒橋渡し役をこなせる)を要求したでも違和感なさそうです。実際この考え方がなかったわけでないですが、直販を取り入れて、売上を伸長したという視点において、ちょっと弱いなと思って解答から落としました。もし直販がなくても、事業間、人間間の情報共有は重要であることは変わりないよね、ということです。
この設問は私よりもっといい解答書けていらっしゃる方たくさんおられると思います。

第4問~解答~

留意すべきことは、人事制度に関する基準を設定し、明確な形で明文化すること。それによって明確な基準に基づいた実力主義の導入と、事業に必要な能力を持つ人材を採用段階で判別し、採用する。

第4問~設問読解~

①『グループ全体の人事制度を確立してくために』『留意すべきこと』を聞かれている
②『企業グループの総帥となるA社長が』とわざわざ書いてあることから、企業グループとして統制が取れ、統一されたものでなくてはならない(ここは軽く思っただけです)

第4問~設問読解~

一番悩み、「ここは取れなくても仕方ねーや!」と思った設問です。事実、見直しても随分とクオリティの低い解答書いてます。こういうときはとにかく本文記述を根拠にして書くことだけに集中します。
『近い将来には、自身が総帥となる企業グループ全体のバランスを考えた人事制度の整備が必須である』という記述があります。逆に言うと、今は整備されていないということになりますので、本文中にいくつか明示されている問題点を解決しなければならない、という視点に絞りました。
私が問題点としてとらえたのは下記3点です。
①『A社の人事管理は伝統的な家族主義的経営や祖父の経験や勘をベースとした前近代的なものであることも否めない』
②『社員の賃金を同業他社よりやや高めに設定しているとはいえ、年功序列型賃金が基本である』
③『A社長は酒造りを学びながら、一方でこれらの社員と共に現場で働き、全ての仕事の流れを確認していくと同時に、その能力を見極めることにも努めた』
今回の解答軸は①から考えられる要素にしました。②と③に関しては、①を整備することによって解決に導く、という形です。
1つずつ見ていきます。
①は明文化された基準がないという問題点を表しているように思います。これが解答の軸です。『経験』や『勘』に頼ったものでは、企業グループ全体でバランスをとることはできないでしょう。
解決策は簡単で、基準を決定することです。その前提として、成功モデルである『経験』や『勘』を体得することが必要とされる可能性がありますが、A社社長は祖父に教えを受けており、下地はできている、と判断しました。
②は実力主義が必要という問題点を表しているように思います。とはいえ、一般的には、年功序列型賃金は必ずしもデメリットばかりではないです。会社への帰属意識が高まったり、それに伴って定着率が上がったり、メリットもあります。ですが、A社にとってはデメリットの方が大きいように考えられます。A社は『若き執行役員や』『若い女性社員』を重要職に抜擢したり、『30代から40代半ばの経験のある人材を正規社員として』(高確率で中途)採用し、自社に好影響を及ぼしています。これが年功序列型賃金だと、働く側のモチベーション低下や、そもそも優秀な人材を雇用できない、ということになりかねません。
解決策はこれまた簡単で、実力主義の採用です。ここで注意したのは、評価基準は明確にするということです。年功序列型賃金が基本のA社では、実力主義に対する基準はもちろんないでしょう。この点で①の解答軸にしっかりハマります。『経験』や『勘』に基づくような実力主義はおそらく機能しません。
③は、採用基準がなく、採用してから能力を見極めているという問題点を表しているように思います。一見すると、「良い」記述に見えるこの箇所を本文中からひねり出した方は恐らく少数派ではないかなと思います。なぜ私がここを出したのかといいますと、①を解答軸に決めた時点で、解答は基準がないという問題点の解決が留意点だという形に落ち着くため、「じゃあ基準がなさそうなところ、あとどこやねん」と考えたときに、私はここしか見当たらなかったからです。本来、能力の見極めは採用時点で行うべきではないでしょうか。これをおろそかにすると、無駄なコストが発生したり、定着率が上がらなかったり、という悪影響が想定されます。それを働きながら行っているということは、『経験』と『勘』で採用しているのでは?という視点です。(余談ですが、「あ。やっぱり適正ないや。やり直し!!」は日本では難しいですよね。それも頭にありました)
解決策は、採用基準の制定です。新卒採用サイトにある「こんな人物像」みたいなものかと思います。あるいは、「○○の経験ありの方」とか「中小企業診断士歓迎!」みたいなものとかでもそうですかね?
以上①から③を順番に組み立てて、私の解答は完成です。
恐らくもっと重要な要素はあったのでしょうが、これしか発見できなかったこともあって「明確な」を繰り返したりして薄めて文字数稼いでるのがバレバレの解答ですね。

総評(というより実感)

第4問はともかく、その他の問題は及第点。まあ絶望的というほどではないと思っています。
当日は「まあ会計の事例で何とでもなるからいけるっしょ!」って思ってました。割とこの時点ではまだまだ大丈夫という感じでした。


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