世界最高時価総額の石油会社「サウジアラムコ」誕生【JOCV Day150】
サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」がサウジ証券取引所に新規上場した。アラビア語では أرامكو السعودية と書き、発音を無理矢理カタカナにすると「アラムク・アルサウディーヤ」となるが、今はその点はどうでもよい。
■上場企業「サウジアラムコ」の誕生
初値は35.2リヤルと、公開価格の32リヤルを10%上回るストップ高で初日の取引を終えた。初値をもとにした株式時価総額は1兆8,800億ドルと、日本円で200兆円を超える、世界最大の上場企業が中東で誕生したことになる。
Appleの時価総額が約120兆円、TOYOTAの時価総額が約24兆円なので、この巨大企業の凄まじさが良く分かる。
また、今回の上場による資金調達額は256億ドル(約2兆8,000万円)と、2014年に上場した中国の電子商取引最大手アリババの250億ドルを上回り、こちらも史上最大。
石油輸入の4割近く(2018年)をサウジアラビアに頼る日本のメディアも大きく取り上げているようだ。
■サウジアラムコから原油を買っている国々
サウジアラビアは世界の原油生産量の約10%を占めている。サウジアラムコはサウジアラビアの原油採掘権を独占しているので、世界の原油の10%はサウジアラムコという一企業が支えていることになる。
東洋経済ONLINE「サウジ攻撃、余波は原油価格急騰だけではない」より
サウジアラビアから原油を輸入する国は、実質的にサウジアラムコから原油を購入していることになる。日本も然り、世界各国が原油調達をサウジアラムコに頼っている。
The Washington Post "Who buys Saudi Arabia’s oil?"より
ワシントンポスト紙が非常に分かりやすい図を掲載していた。円の大きさがその国が2018年に輸入した原油の総量を、円の赤色の濃さがサウジアラビアへの原油依存度を、それぞれ示している。
図を見ると、世界各国がサウジから原油を輸入していることが分かる。日本も石油の4割近くをサウジアラビアから輸入している。
■サウジアラムコに頼るヨルダン
上の図でヨルダンが最も濃い赤色で示されていたことに気付いただろうか。私が青年海外協力隊として派遣されているヨルダンは中東の一角で、サウジアラビアはお隣の国であるが、実は石油がほとんど採れない。そのためヨルダンは原油の輸入国であり、96.5%をサウジアラビアから輸入しているのだ。
原油だけではなく、石油化学品についてもサウジアラビアから多く輸入している。サウジアラムコは単に原油を輸出するだけでなく、原油の精製から石油化学品の製造まで、原油に関することなら何でもやっている企業だ。2019年3月には同じくサウジアラビアの石油化学品大手であるサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)を買収するなど、事業拡大を図っている。
ヨルダンの町を歩いているとSABICの製品を頻繁に見かける。下の写真はプラスチックの1つであるポリ塩化ビニル(PVC)。SABICのロゴがパッケージに印刷されている。
ヨルダンの経済情勢は近隣の石油産出国の潤いに影響される。多くの人が知っている通り、石油や石炭などの化石燃料の採掘・消費に関しては風当たりが強い。それでも化石燃料は現代社会に欠かせない資源でしばらく在り続けるだろうが、中東諸国も石油一本足からは早く抜け出したいと考えているだろう。
サウジアラムコは今回の上場で調達した資金を脱石油に向けて使うこととしている。サウジアラムコが中心となって推し進めるであろうサウジアラビアの今後のエネルギー政策が、隣国のヨルダン経済にどのような風を吹かすのだろうか。
※ヘッダー画像:NHK「サウジアラムコが株式公開 世界最大の上場企業が誕生」より