奏でる

私は音楽が心の底から大好きだ。歌うのも聴くのもなんでも。だけど、中でもとりわけ好きなものがある。それがピアノだ。

私は物心ついたころからピアノを習っていた。今年でかれこれ11年目になるだろうか。改めて考えるとめちゃくちゃ長い。自分でもびっくりだ。

私がピアノを習い始めたきっかけは2つある。1つは母親がピアノ好きで祖母の家に行くと必ずピアノを弾いてくれていたこと。もう1つはご近所さんがピアノ教室だったこと。もともと歌うことや踊ることは大好きだったのできっとハマるだろう、ということで習い始めることになった。

習い始めてまもなく、私はピアノが大好きになった。
一番最初に私が使っていたピアノはひいおばあちゃんの代から受け継がれた年代物のピアノ。虫に食われていたみたいだし、調律も狂いまくりだっただが、私はそのピアノが大好きだった。もうそのピアノは使っていないけれど今でも大好き。優しくて包み込んでくれるようなあの音色は、ずっと大好きでいるだろう。

幼い私のピアノライフを豊かにしてくれていたのはそのピアノだけではない。私が楽しくピアノを弾けていたのは先生がいてこそだ。その先生は私にピアノを弾くことの楽しさを教えてくれた。幼い私にも分かるように一生懸命説明してくれて、毎回たくさん褒めてくれた。あぁ、優しかったなぁ。最近会えていないからまた会ってピアノを聞かせてあげたいし、聞かせてもらいたい。

しかし、私がその先生に習っていたのは小1の秋まで。もっとステップアップしたいと思っていた私はお教室を変えた。

新しいお教室では本当にたくさんの経験をさせてもらった。色々なコンクールにも出させてもらったし、私にはあまりに難しいような曲も根気強く優しく教えてくださって弾けるようになった。ちなみにこの頃弾いた曲は楽譜を見れば今でも弾ける。泣きながら練習したし、レッスンで居眠りしかけたこともあったけど、全部全部良い思い出だ。

そして、私には先生の言葉で絶対に忘れられないし、絶対に忘れてはいけないと思っている言葉がある。それが、

「コンクールは結果が全てじゃない。競争だけじゃない。 今日までたくさん練習してたくさん成長したんだから、○○ちゃんが最優秀賞だよ。」

という言葉だ。

私はコンクールで大失敗をした。1曲目でミスタッチをしたのが最後、そこからどんどん崩れていって左手を止めてしまったのだ。　当時の私はとてつもなく負けず嫌いだったので、悔しくて悔しくて仕方がなく、演奏後のお辞儀で泣いてしまった。泣きながら舞台を降りて客席に戻った私にかけてくれた言葉がこの言葉だった。
ちょっとありきたりな言葉かもしれないけれど、私にはすごく響いた。なんだか肩の荷がすっとおりたような気がした。

あの時の苦い経験は今でも残っているが、私に語りかけてくれた先生の優しい表情や声色はもっともっと鮮明に覚えている。
時々厳しいけど優しくて頼りになる、ずっとずっと大好きな先生だ。

その数年後、私は再びお教室を変え今でも大好きなピアノを続けている。
色々なコンクールに出たり、好きな曲を弾かせてもらったり、、、
 "戦友" もできて、すごくすごく充実したピアノライフを送れている。

今でも舞台上で失敗したり、親と喧嘩をしながら練習したり、自分の納得いく音がなかなか出せなかったりと、苦い思いをすることは数え切れないほどある。
しかし、それ以上にピアノを弾くことの喜びや幸せをたくさん感じている。

何があってもいくつになっても、私はピアノの先生から頂いた数々の言葉や、ピアノを通して学んだたくさんのことを忘れることはないだろう。そしてそれらは私のこれからの人生の糧になっていくはずだ。
これからもピアノへの愛を大好きなピアノの音色に乗せて届けていきたい。