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秋葉原UDX 2022 弦楽器展

今年も島村楽器さん主催の『弦楽器大展示会 in 秋葉原UDX』に行ってきました。日本弦楽器製作者協会主催の「弦楽器フェア」の方は3年くらい開催されていないので、情報収集の場所として貴重です。本年はヴィオラを中心に見てきたのですが、やはり人が少ない時間帯に見ていくのがコツですかね。良い印象を持っていた楽器も人が多くなると音がぱっとしなくなります。高域のエネルギーが拡散するからでしょうか。
 今回の変わり種としては、竹で作ったバイオリンが展示されておりました。竹でも作れるのか驚きましたがうまく作られています。

岡野壮人さんの作品

 玄関の方に面白いビオラがあって、なんと裏面がまっ平なんですよね。試奏してみたところ、音はなかなか良いのですがボディの共鳴方向がいつもと違うので何とも不思議な気がしました。魂柱の立て方が独特で右側にかなりよって立っていましたよ。

こちらも岡野壮人さんの作品

 さらに入っていくと木村哲也さんのヴィオラがひときわ目立っていました。2台あったのですが、下の写真で左は412で私に大きくあわず、右は406なのでなんとか弾けましたが、なかなかの鳴りっぷりでほれぼれしました。2021年の作品でしたが音はオールドで良くなります。塗装が究極のガチ・アンティーク仕上げ。これぞ日本の職人技という感じでした。顎あては特殊なタイプで古楽奏者が使うものだそうです。木村さんとお話ができたのですが木材への研究とこだわりというのが十分に感じられました。

見事なアンティーク仕上げ。もはや巨匠の領域
こういう作品を観ておかないと素人がなんちゃってアンティークを見分けることができないです

 バイオリンの方で目立っていたのがストラディバリの「サンライズ」のコピーですが、かなり安い価格で販売されていました。通常このような装飾バイオリンはマスターメードで300万越えになりますが、松本伸さんが装飾バイオリンを得意にしていたのを思い出しました。

ストラドのサンライズのコピー

 さて戻ってヴィオラの弓の方なんですが、どんな弓がよいのかヴィオラが弾ける店員さんの話を尋ねてみると、初心者は弓元が重くなるフロッグ(大きなもの)は避け、弦全体に対し平均的に弓の重さがかかる弓、弓先に注目するとよいでしょうとのこと。特にC線を弾くときに着目とのこと。弓に関しては20万円くらいだせばまずOKで、それ以上(機能と音色)を求めるのであれば50万円越えを目指してほしい。なお初心者は5万円くらいでも十分なのでまずは楽器にお金を積んでほしいとのこと。楽器が決まらないと弓が決めれないということですね。弓は毛替えで2本必要なので投資は無駄にはならないし、アマオケの定番曲の幻想交響曲(注釈:恐怖のコルレーニョ奏法)で使えるのでもっていて損はないとのこと。

サイズの大きな黒檀のフロッグは重いので弓元に重心がある。
弓毛に対し均等に重量がかかることが重要

 この展示会には目玉があってプロ演奏家の演奏が無料で聴けることです。
今回は、今津文恵さんの無伴奏ヴィオラでヒンデミットのソナタを聴けましたが、このヴィオラはなんとヒンデミットから譲り受けたものということでした。大きさ425くらいありそうですね。
 翌日に﨑谷直人さんの無伴奏ヴァイオリンを聴くことができました。﨑谷さんの長身にまず驚きました。190cmくらいはありそう。漂々としておりトークも面白い。

「みなさんは腕が達者で私よりもうまい人がいっぱいおられますが、楽器を選ぶときは曲をガンガン弾くのではなく音階をゆっくり弾いて、その楽器の弱点を探りながら弾いてくださいね。」

なんか坂本龍一さんに感じが似ているしゃべり方で笑いを誘っていました

音で凄く感心したのがスタカートとスピーカートの音色で、丸い感じで真珠の数珠玉のような音色。リズムも独特で風に揺れる風鈴のような間をもって弾いています。こういうバイオリニストは聴いたことがないのでびっくり。和風を感じさせる独特の世界観を感じさせる天才的なセンス、いいですね。

アマゾンでの評価が低いですけども、弦楽器奏者なら間違いなく★5を付けるでしょう。だってこんな音を出せる人はいないのですから。ただ録音だとどこまで音色が録れているのか、大抵はバイオリンの繊細な音色をとらえることができていませんからね。マイクはDPAかSCHOEPS、Sennheiserで録ってほしいですよね。


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