ヴィオラの曲集を買ってきた
バイオリンの曲集は国内、海外ともに豊富にあり、パート譜も細かなアーティキュレーションや指番号が記載してあり従実しているのですが、ヴィオラになるとそもそも曲集がかなり少なく、バイオリンの1/100くらい。楽譜を開くとパート譜のアーティキュレーションがほぼ無いとか、指番号が書いていないとか、アレンジがしょぼいとか、そもそもクラシック音楽をクラシック音楽たらしめている「原典版」が存在しない神なき世界。ベーレンライター様、ヘンレ様はどこにおいでにならしゃる。ああ、いた。モーツアルト様に救済されているのか。こういったなんか中世の貴族が貧民街に落とされる、まあよくある物語のような気分を味わえますね。ここから這い上がるしかないという楽しみでワクワクする部分もあるし、もしかしたらヴィオラ曲集はビジネス用語でいうブルーオーシャンなのかもしれませんが、信者の数を圧倒的に増やさないとムズカシイですかね。ヴィオラの音域は人の声と同じところにあるので疲れた人々を癒す力があります。優れた作曲家が晩年の作品はヴィオラ曲です。あなたがアレンジャーなら信者になりましょう。
さて購入してきたのが以下です。
Viola Playing Selection
サウンド・オブ・ミュージックが入っているので購入しようかなと思っていたのですがアマゾンでの評価が低いのと曲数が多いので、編曲の品質が低いかもということで現物を見てヤマハ池袋店で購入。サウンドオブ・ミュージックはよかったですね。きっちりとリチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン二世の2大巨匠のサウンドを継承しておりました。なんちゃってサウンド・オブ・ミュージックの編曲が多いなかこれは褒めれます。ただ、序奏部分が省略されているのがマイナス。このわくわく感溢れる序奏がないのは画竜点睛にかけますので、自分で14小節追加して演奏してみたところ感動のサウンド・オブ・ミュージックになりました。弾いていて気持ちが良いです。
ここからホルンが始まる2回目(43秒付近)から序奏に抜粋しました。それにしても久しぶりにジュリー・アンドリュースの歌を聴いて不覚にも涙が溢れました。これぞ偉大なる音楽の力ですね。
まとめになりますが、この曲集は全体的にヴィオラの醍醐味であるC線が活躍しないし音域が狭く、重音、ハーモニックスが出てこない、弦楽器特有の音域の広いパッセージがでてこないのでおそらく弦楽器の経験がない編曲者なのだろうと予想します。プロのヴィオリストに監修してもらえればね。アレンジ的には和声や対旋律の動かし方がうまく、オリジナルを尊重しておりかなりよい編曲になっていただろうに少し残念。これのプロ・バージョンをぜひ作ってほしいですよね。あと初心者さんに注意として、ヴィオラパートに指番号とボーイングが書かれていないので、先生につけてもらうか、オケ経験者に頼んでつけてもらうとよいでしょう。
ヴィオラで奏でるクラシックバラード
ベートーヴェンの悲愴が気になったので購入。こちらはアーティキュレーションは最低限かかれてますが、指番号はなしです。おまけとしては演奏用CDがついてます。ショパンやチャイコフスキーなどのピアノ曲からのアレンジでヴィオラ・オリジナル曲がないのが悲しいですよね。他の曲集もそうですけども。
ヴィオラのための小品名曲集
この曲集はアーティキュレーションが細かく書いてあり指番号、ボーイング指定もきっちり書いてあるのが好印象。さすがヴィオリストが編集したヴィオラ曲集だけのことはありますね。凝ったアレンジと演奏会でも使えるレベルです。今のところ曲集としては一番お薦めできるというか国内では唯一のまともなヴィオラ曲集と思います。
わたしはカッチーニのアヴェ・マリアを弾きたかったので購入しました。カッチーニはひどいアレンジが多く原典版もないようなので困っていたのですが、とりあえず合格ですね。カッチーニのアリアは、ヴァヴィロフの偽作であることで有名ですけども和音の使い方がモダンなんですよね。これだとすぐに偽作とバレますなあ。これに輪をかけてジャズ風のドヤ顔アレンジをしてしまう人のなんて多いことか。人間というのは承認欲求があるので抑えるのがムズカシイです。
まあしかしこの曲はイタリア・オペラ調からジャズ調とか何でもありアレンジですよね。時代を考えればこの演奏かなあと思うのだけれども、これでもかなり時代が新しく感じるのですよね。クラシック音楽でもオペラの場合は時代考証はやらずにより未来にぶっ飛んだ方向に行っているので面白いですよね。
まあざっと3冊紹介しておいたのですが、全音の「演奏会用ヴァイオリン名曲集1〜5巻」のような本格的なヴィオラ曲集がほしいですよね。ヴィオラ・オリジルの曲で傑作も結構あるので是非とも感じですよね。
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