見出し画像

楽座 RAKUZA NFT MARKETPLACE

浮世絵の話

左:東洲斎写楽『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』
右:葛飾北斎『富嶽三十六景 駿州江尻すんしゅうえじり』

浮世絵は江戸時代に流行した庶民的な絵画で、特に葛飾北斎や東洲斎写楽が有名であるが、題材は極めて多種に及び、美人画、役者絵や名所絵など風俗が描かれ当時の庶民の間で広く楽しまれた。
驚くべきことに、200年前に庶民がフルカラーの印刷物を気軽に楽しめたのは世界でも日本だけのことであり、人気作は増刷を重ね、何千枚と販売された。
現代ではその美術的・文化的価値が高く評価されるようになり、既に変化・消失した名所、人々の生活や生業、文化などを伝える歴史資料としても活用されている。しかしながら、遡れば時代が変化していく過程で、新聞や雑誌、絵葉書などが普及したことにより浮世絵の流行は衰退していった。国内では低俗なものとして軽視されていた浮世絵に対する美術的評価は非常に低く、ゴミ同然に捨てられてしまうものであった。

その後海外で高値で販売することに成功した一部の人々の手によって、海外に大量に流出してしまうわけだが、浮世絵が持つ日本文化の神秘性や異国情緒がゴッホやゴーギャン、ルノアール、モネら印象派の画家たちに大きな影響を与え、世界中で空前のジャポニズムブームが隆盛したのである。

一方で、廃棄を免れた浮世絵が現在では海外の美術館で大切に保管されていることは、奇しくも転売目的で海外へ流出させた人々がこのように捨てられる運命にあった浮世絵を全国から買い集め、救ったからであるともいえるだろう。

そもそも美術品や芸術品というものは、国家が率先して保護を行うなどしない限り、一度市場に出てしまえば国境を越えて多くの人の手に渡ってゆくものである。当時の状況を考えれば、浮世絵が海外に流出するのは必然ともいうべき避けられないもので、誰にも止めることはできなかったのだ。

左:ゴッホ『タンギー爺さん(1887年夏)』 右:クロード・モネ作『ラ・ジャポネーズ』


葛飾北斎『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』


セル画の話

風の谷のナウシカ (セル画)

セル画は、セルアニメの制作過程において用いられる画材「セル」とよばれる透明シートに描かれる絵のことで、日本においてはアニメ産業が成立して以降、1990年代までの商業アニメ作品には基本的にセル画が用いられてきた。

漫画は美術的な観点からすると「印象画」であると解されていることが示す通り、アニメ制作の黎明期には漫画の絵をそのまま立体的に動かすことは難しいとされいた。奥行きがある中にキャラクターを動かすために、動くキャラクターをセルに描き、背景画などを紙に描く技法が生まれ、この技法が普及した。

アニメの制作では動きのポイントとなる絵を描く原画家、原画と原画の間をつなぐ絵を描く動画家、その他多くのスタッフの分業によって作画作業が行われる。その過程でセル画作業においては長年にわたり様々な技法が編み出されてきたので、セル画には多くの技術的要素とアニメーターたちの叡智が込められているといえるだろう。
すなわち、日本の商業アニメはアニメーターたちによって研鑚されたセル画技術によって産業が発展し、幾多の産業変革とともに進化していったのである。

左上:魔女の宅急便 (セル画) 右上:もののけ姫 (原画)
左下:天空の城ラピュタ (セル画) 右下:紅の豚 (セル画)

そもそもアニメは数多くの絵を連続表示させることで動いているように見せる映像表現であり、秒間8枚から24枚という数多くの絵が必要であるため、一つのアニメ作品を制作する過程で膨大な数のセル画が描かれるので、一枚ずつ撮影した後、フィルム化されると無価値と判断され廃棄・焼却処分にされるなど、あくまでもアニメの副産物として扱われ、劇場への来場者に贈呈したり、アニメ会社によっては資金を捻出するために販売していたところもあった。

このような経緯から一部のセル画は市場に出回っているものの、その希少性は年々高まっており、取引価格も上昇傾向にある。セル画としては最古参であるディズニー初期のアニメ『白雪姫』のセル画は数百万ドルの値段で取引されているなど資産価値としては世界共通のものとなっている。


浮世絵とセル画の類似点

ルーヴル美術館特別展『漫画、9番目の芸術』

浮世絵とセル画それぞれの変遷には運命的ともいうべき類似点が散見する。江戸時代に庶民の間で大量に流通した浮世絵は、雑誌やブロマイドのように流行が終わると無価値とされた。その後海外に大量に流出し、日本の美術として多くの画家たちに影響を与え、ジャポニズムブームを経て、日本でも評価されるようになった。現代では非常に貴重な日本の文化財となっている。

一方、セル画もアニメ制作現場では一度撮影が終われば無価値として処分された。多くは廃棄の過程で譲渡されたり無償配布されたりして大量に流出したわけだが、その後アニメ制作現場のCG化が進む中で、2000年代になるとセル画を用いたアニメ制作は消滅し、むしろセル画の価値が見直され、その希少性が高まっている。
さらに、2000年にフランス・ルーヴル美術館において「漫画」が「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学」「演劇」「映画」「メディア芸術」に次ぐ第9の芸術として呼称されるようになったことが話題となった。

日本のアニメが世界的に評価される中、「マンガ」「アニメ」は、もはや日本だけでなく、美術の世界における21世紀のムーブメントとなった。今日ではセル画もアートとして広く認められるようになり、世界的なオークションにおいてセル画や原画の取引価格が急騰している。

事実として、2020年春に香港のサザビーズが行ったオークションでは、人気アニメのセル画や原画が非常に高値で取引され、中国をはじめとする海外への流出は既に始まっている。


なぜ今、セル画をNFT化するのか、RAKUZAの意義とは

開発中のRAKUZAベータ版

そもそも市場で大量に流通しているセル画自体長期保存には適しておらず、日光を避ける場所で保管を行うなど、適切な管理・保存を行わずにそのまま放置しておくと劣化していく。

一方、デジタルデータはそういった劣化の心配はないが、一般的にコピーや改ざんが容易で、リアルな資産などと比べると価値を持たせることが困難とされてきた。

しかし、ブロックチェーン技術を利用することで、参加者間の相互検証によってコピーや改ざんが困難となり、誰でもその資産の真正性や所有権を証明することができるようになった。それがNFTである。
RAKUZAでは、鑑定書や認定書のついたリアルな美術品は適切に管理・保存し、さらにブロックチェーンによってデジタルデータ化(NFT化)をすることで、資産価値を有する存在として強固なものにし、世界中で価値のやり取りを可能にする。

私たちは未来に向けて日本のカルチャーを守り、育むために、セル画のアートとしての価値を高めながらも、同時に文化財として保護していく視点で新たなマーケットを切り開くべきだと思う。

浮世絵が辿った経緯と同じように日本のアニメセル画を海外へ流出させてしまう状況を放置してはならない。

現時点では未だ著作権法上クリアにできない部分もあり、RAKUZAでは所有権のNFT化としてスタートしているが、将来的には著作権者の理解のもとに発展していくことを願っており、セル画をNFT化することも、現物が適切に管理・保存することも、結果的に全てのステークホルダーの権利を守っていくことになると信じて、日本のアニメカルチャーの保護と発展に貢献していきたいと考えている。
RAKUZAは、世界に向けて、また未来に向けて、そのようなヴィジョンを実現させるべく、日本のポップカルチャーと、そのカルチャーの中で活躍しているクリエイターたちを守り、育み、さらには価値向上につながるための新たな経済圏の創出につながることを期待する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?