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キャリア自律と令和の"サービス残業"

先週の日経新聞で以下の記事を読み、そこからしばらくキャリア自律について考えていましたので簡単にまとめてみます。

※日経有料版の記事です。ただし論点の調査はリクルートのHPから参照可。


記事の紹介兼イントロ

日経記事の内容はエーザイにおけるリスキリングの事例です。
49歳の時に全社改革で部長職を外れられた長井さんという方が医療経営士の取得や英語学習といったリスキリングに励まれ、国際部門への異動を果たした、という内容です。

大変素晴らしいストーリーであり、ぜひ一読いただきたい内容なのですが、個人的にはこの事例の最後に引用されていた調査結果が引っかかりました。

それはリクルート社による調査で自身が「キャリア自律できていると思う」と回答した人が18%しかいないということ。

上記にリンクのある「キャリア自律・キャリアオーナーシップの実態・課題・処方箋」という資料が日経で引用されているもののようでした。
調査概要はP4、件の調査の結果はP12をご参照ください。

私自身はこの18%に間違いなく入りますが、ではなぜそんなにキャリア自律ができていない(と思う)人が多いんだろう、どうすればこの比率が向上するんだろうと疑問が湧きました。

日本人はキャリア自律が苦手?

2018年の記事ですが、そもそも「キャリア自律しなければならない」という意識が日本人は低いという調査結果もありました。

高校まで不自由ない暮らしをさせてもらって、みんなと一緒に大学に入って、時期になったら就活をして就職、というありがちなシナリオはどうやら海外では珍しいという話はチラホラ聞きます。
また、終身雇用制の中で会社の指示に従っていれば安定した人生が得られる、という価値観も根強く残っているんだろうなと思います。

とは言えこの流れは徐々に改善されてきており、2023年のリクルートの調査でも学生のキャリア意識が高いことが示されています(P29など)。
自分の周りの若手社員を見ていても、その雰囲気は強く感じるところです。

しかし、世の中の大半はすでに働いている方々と思うと、今からどうする?を考えていく必要があります。
同じ2023年のリクルート調査からキャリア自律の課題を抽出すると以下の通りでした。

自身のキャリアを主体的に形成する際の課題は、「何をしたらいいか」「自分の強み・持ち味・市場価値」が分からない「行動に移せない」「キャリアの選択肢が分からない」

「キャリア自律・キャリアオーナーシップの実態・課題・処方箋」P14

日本人向けのキャリア自律戦略

ここからは自身の経験も踏まえて、課題への対応を書いてみますが、私の基本的なスタンスは「やってみないとわからない」です。
ちなみにこれは2023年調査P41で引用されている考え方(計画的偶発性理論)でもあります。

クランボルツの理論
計画された偶発性(Planned Happenstance)
計画的偶発性理論はゴールを決めないキャリアの考え方
クランボルツ教授がビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査したところ、そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるものだった
<理論のPOINT>
① 予期せぬ出来事がキャリアを左右する
② 偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たなキャリアにつながる
③ 何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える

「キャリア自律・キャリアオーナーシップの実態・課題・処方箋」P41

では、何をしたらいいのか、ですが、それは自分で考えましょう…と書くと堂々巡りなのでオススメとしては「会社・職場の方針や課題に対して何をすべきかを考える」ことです。

何だよ、結局は会社の言うことに従えってことか、って思われそうですが、これは「会社の指示に従っていれば安定した人生が得られる」という発想とは全く違います。
受け身ではなく、会社・職場の状況に対して「課題と対策を提案していく」という主体的な活動です。
ただし、それは批判ではなく、創造的な働きかけである必要があります。
ここを間違うと誰も話を聞いてくれません。

もちろん「それをそもそもしたいと思えない」「しても100%聞いてくれない」という意見もあると思います。
その場合は環境を変えないと行けないかもしれません。
また、そもそも法律違反をしているケースなどは論外です。

令和の"サービス残業"

具体的な手法として、職場の問題解決に関する情報・書籍は山のようにあります。
以下の書籍などはとっつきやすくてオススメです。

また、ロジカルシンキングや組織内コミュニケーションに関するノウハウも数多く言語化されています。

ただ、ここで多くの方が思うのは「自分のプライベートの時間を使って、会社・職場の改善のことを考えないといけないの?」ということではないでしょうか。
仕事で疲れているんだから、休みくらいはゆっくりさせてよ、という気持ちは非常にわかります。

しかし、考えなくてはならないのは、「こういう知識・技術はルーチンワークをする中では得られにくい」ということと、「働き方改革・ジョブ型雇用の名の下で自主的に勉強しない人の給料はどんどん減る」ということです(データ無し)。

よく上の世代の人から聞くのが「以前までは残業がうるさく言われなくて良かった。休日も関係なくお客さんとコミュニケーション取ったり、社内資料で勉強したりして成長できた」的な回顧録です。
労働規制が国際競争力の低下に結びつく的な話は、何となく分かります。

ですが、ここでようやくタイトル回収。
「だったら自分のキャリア自律・スキル向上のために、"サービス残業"しましょう」ということです。
もちろん普通のサービス残業は絶対にダメです。

ここで言いたいのは、業務には直接繋がらないけれども、その学習によって自分のスキルが向上し、結果的に、時間をかけて業務上の成果にもつながる、そういう取り組みのことです。
自分の職場を頭に思い浮かべながら『職場の問題地図』を読んでみる。
『ダークサイド・スキル』を読みながら上司にどう提案を通すのかを考えてみる。

給料をもらうほどではないのですが、完全にプライベートなのか?と言われると、普遍的な回答は私には思いつきません。
なので、その結果が仕事に結びつき、1年後、2年後に給料が上がるまでは、”サービス残業”です。

まとめ

「令和の”サービス残業”」…私の場合、資格の勉強や読書、またこういうnoteを投稿する時間などが当たります。
ちょっと言葉のチョイスが悪いかもしれませんが、個人的には、自己研鑽をモチベートする表現として気に入っています。

一応、補足しておくと、この取り組みが業務指示の場合は当然に業務時間扱いですので、一歩間違うと本当のサービス残業になってしまいます。
そういうものを我慢してやる、という発想でないことはご認識ください。

あとは「プライベートの時に仕事のこと考えたくないよ」って人の方が多いかもしれませんが、そもそも仕事を自分の人生にとってポジティブなものに変えていくことが大事なのではないかと思います。

そのために、会社・職場の中長期的な課題を理解しつつ、期待に応えられる技術を自ら身につけ、提案し、解決に導き、評価してもらい、という良いサイクルを回していくことがキャリア自律だと私は考えています。
「会社・職場」を「顧客」に置き換えると、ビジネスにおいては当たり前のことじゃないですかね。

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