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(読書シリーズ)ここまで ではなく、ここから という 思考 の 持ち方

 そもそも私達はソーシャルワークの展開について「個別援助」があり、「集団援助」がある、と学んだが、既存の福祉施設は大人数を集めた「集団援助」を前提にしがちである。
そして「個別援助」を二の次にしている事に問題意識を持たず、「集団援助」に適応できないクライアントに責任転嫁をする。こうした不適応を「困難事例」と呼ぶのは支援者の傲慢に他ならないのではないか。
 
 これは、中央法規「ソーシャルワーク研究」(2023年第3号)の中で「相談室あめあがり」の太田隆康氏(相談支援専門員)が事例研究として論述された内容になります。
この記述を見て「まさにその通り」と相談支援専門員として往々に感じる事を的確に言い表しているなと感じました。
 「集団生活の場なのでね」と言われる事は多く、その度に「個別の支援を図って集団の場に統合していく努力、道筋が必要なのではないか」と呟いたりしているのですが、そういう事を察知されると「現場の事を知らない」と反論される事があります。しかし相談支援専門員は沢山の現場を見ている、実際にそのような事ができている現場がある事を沢山知っています。つまり、工夫をして学び、実践する姿勢があれば、どこでもできる。そのように考える相談支援専門員は多いのではないでしょうか。
 
そのような事を考える中、先月8月の法人ニュースMicrosoft Word - ÕºËåü¹,238÷ 8 .docx (kyofc.or.jp)の支援センター記事の中「個別支援計画」について下記の記述がありましたが、この部分について私の考えを少し補足させて頂きます。
ここで大事なポイントは個別支援計画です。
個別性を重視し、契約時にアセスメントをしっかりとり、当施設ではこのような個別支援計画の内容で支援出来ます、とより具体的な内容で示すことが重要だと思います。言い換えると、この個別支援計画で記載している内容以外はこちらではできません、となります。どの施設もすべてのニーズに応えられないと思います。最初に現状の限界を示しておく、というのは施設や施設職員を守るうえで必要な考え方なのではないでしょうか。同時にニーズを満たすための努力を示すことも大事です。
 
個別支援計画は「本人」の「望み・希望」から出発されるもので、計画相談で作成する「サービス等利用計画」と連動される計画となります。本人の「望み・希望」、その背景にある気持ちを中心に置き、目標を定め、どのようにしたら近づけていけるのかを一緒に考えていくためのツールになります。
そのため「どの施設もすべてのニーズに答えられないと思」うのはそうであっても、それが「職員を守る上で、必要な考え方」が中心になりすぎると、当事者支援を行う上で、また組織の力を高めていく上でも、そこで思考や行動が止まってしまうのではないか、と危惧します。
当事者のニーズに対して、どのように埋める事ができるのか。社会構造と関連づけながら、当事者、そしてその周囲の支援者が、一緒に成し遂げていくにはどうしたらいいのか。まずはその事を志向していく事が必要だと感じています。限界を認識する事は悪い事ではなく、限界を個人として、また組織としての「伸びしろ」として捉える事ができます。限界を見つめつつ、その「伸びしろ」を少しずつ広げていく。一方、現時点で自施設での取組として難しい事だという事であれば、他職種、他機関に協力を求め、一緒に方法を考えていくという姿勢が重要なのではないかなと考えています。
ですので個別支援計画に書いていないものは「できないもの」=「やりません」ではなく、「どのようにしたらできるのか、その事を継続して考えていく必要があるもの」になります。攻めは最大の防御と言われるように、限界に取り組む直向きな努力は、支援者を育んでいく。故に、様々な事に柔軟に応じられていく自由さを得る事ができる、つまるところ質の向上に結びつくというふうに考える事ができるのではないでしょうか。
 
 さて、冒頭の太田隆康さんですが、同じ事例研究の中で、次のような記述をされています。
(中略)相談支援専門員が担当していると、施設職員にも「困った事は相談支援専門員へ」と認識されがちである。と同時に、地域の新設事業所中でも相談に応じるノウハウが蓄積されていない場合がある。(中略)この職員はまた自分では応じず誰かに相談するように伝えるだけであろう。
これも、相談支援専門員の中では「あるある」と言える例と言えます。
サービス等利用計画・計画相談が制度化された事で、本当に様々な事での連絡・調整等、相談支援専門員に依頼される事が多いです。中には、「こっちから本人に言うと、関係が悪くなるかもしれないので相談員さんから言ってほしいです」と自事業所が伝えるべき内容を、相談支援専門員から言うようにお願いされる事もあったりし、「それは自分の事業所の事なのにどうして自分から言わないのか」、「この事業所、大丈夫なのかな?」と勝手に心配になる一方、「こういった事を僕らに任せてしまうと、自身の対人援助の能力が向上しないのにな」と心の底で考えていたりしています。
 制度のサービス類型が沢山できた事はいいことですが、「これはうちのやる事ではない。」と縦割りに言われる事も多く、「自分の能力を貶める事になっているよ」と言いたくなってしまいます。
 
とは言いつつ、私も最近ある区の担当者に「こっちは本人と全然連絡がとれないのですよ。連絡が取れる所から連絡したらいいんじゃないですか?」と言ってしまった事に、はっと我に返り「訪問する時は一緒に行かせてください、こちらの事も理解して頂くように努力します」と言い直した事がありました。
 自分の感情をコントロールできていない、支援センターは忙しいのですよ!と言いたい節がでてしまったな、とか、振り返りつつ今回のニュースを書いています。
 できる事、できない事を設定する事は大事な事ではあるのですが、一方で障害当事者の生活を、権利を「守る」「支援する」仕事であるため、どのように生活ニーズを満たす事ができるのか、を継続して考えていく必要があります。
 ひとつの事業所ではできない事も、様々の機関と協力する事でできる事もあるという事を、様々な事例を通し体験してほしい。そして一緒に成長していく事ができたらうれしいなと感じています。
周りに助けてもらいながら、精一杯自分を使い果たし、支援を届けていきたいなと自戒の意味を込め、また明日から皆さんと共に進んでいきたいなと考えています。

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