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イソップ寓話

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『イソップ寓話集』を元に、楽満的にアレンジしたお話を書いています。
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記事一覧

井戸の中のキツネとヤギ

井戸の中のキツネとヤギ

 ある村の近くに一匹のキツネが住んでいました。ある日、キツネは事故で井戸の底に落っこちてしまいました。キツネはあの手この手で登ろうとしましたが、井戸は深くどうしても登ることができません。やむを得ず寒く暗い井戸の底でじっとしていたところ、一匹のヤギがやってきました。ヤギは喉が渇いていて、水を飲みにきたのです。井戸の中にいるキツネを見つけて、ヤギは声をかけました。

「おうい、そこの水は美味いか」

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ネコのお医者とニワトリ

ネコのお医者とニワトリ

 あるところに一匹のネコがいました。近所のニワトリが病気にかかっていると聞きつけたネコの医者は、人間に化けて診察に必要な機器を取り揃えると、病気のニワトリがいる小屋に出向きました。ネコはニワトリ小屋の前に立ち、ドアをノックして言いました。

「もし、ニワトリさん。わたくしめは医者でございます。具合が悪いとお伺いいたしましたので、診察に参りました。気分はいかがでしょう。ぜひあなたさまの病気を治して差

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山羊飼いと野生の山羊

山羊飼いと野生の山羊

 ある晴れた日の朝、山羊飼いがいつも通り自分の牧場に山羊を連れて行きました。山羊たちは牧場に生えた下草をたくさん食べました。夕方になり陽が落ちる前に、いつも通り小屋に帰るように山羊たちを追い立てました。その時山羊飼いはある一匹の野生の山羊が紛れ込んでいるのに気がつきました。山羊飼いは自分の山羊たちと一緒に、野生の山羊も小屋に入れました。

 次の日はひどい嵐でした。嵐の日は山羊飼いは山羊を牧場に連

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借金のあるアテネ人

借金のあるアテネ人

 あるアテネの農家の男は、生活に困って金貸しから借金をしていました。ある日金貸しが家に来て、金を返すように言いました。男は相変わらず生活に困っていたので、返すのをもうすこし待ってもらいたいとお願いしましたが、金貸しはもう待てないと言いました。金貸しは一匹の豚を飼っていることを知っていたので、その豚を売って金にして、それでもって返済をするように提案しました。他に借金を返す元手になるものを持っていなか

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サヨナキドリと鷹

サヨナキドリと鷹

 ある森に一匹のサヨナキドリが住んでいました。サヨナキドリは歌を歌うのが得意で、高い木の上で歌を歌うのが日課でした。いつものようにサヨナキドリが高い木の上で歌っていると、一匹の鷹がそれを見つけました。お腹をすかせていた鷹は、すぐにサヨナキドリにつかみかかりました。

 鷹に捕まってしまったサヨナキドリはこのままでは殺されてしまうと思い、鷹に言いました。

「わたしはあなたのような立派なからだを持っ

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ワシとコガネムシ

ワシとコガネムシ

 ある森にウサギがおりました。森にはウサギのいのちを狙う者がたくさんおりましたが、ウサギのことを助けてくれようとする者はいませんでした。この日、ウサギはワシに追いかけられていました。もう走るのも限界だと思った時、ウサギは道ゆく小さなコガネムシを見つけました。

 ウサギはコガネムシに「助けてください、もう走ることもできません」と言いました。状況をとっさに把握し、どうにかウサギを助けたいと思ったコガ

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ワシとカラスと羊飼

ワシとカラスと羊飼

 ある村の外れに一匹のワシが住んでいました。ワシは大きなからだを持っており、自慢の鋭い爪で地上のいろんなものをひっさらってはお腹を満たしていました。この日のワシは牧場にいる小さく健康そうな子羊に狙いを定めていました。高い岩場から舞い降り、その子羊をむんずと掴んだまま飛び去り、他の猛禽類や猛獣のいないところに着くとお腹いっぱいに子羊を食べました。

 それを見ていたカラスが一匹おりました。カラスは普

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ワシとキツネ

ワシとキツネ

 ある森にワシとキツネが住んでいました。ふたりは仲が良く、いつも一緒にいました。ある日ワシが「今の家が古くなってきたので引っ越しを考えている。おまえさんと話すのは楽しいから、おまえさんの家の近くに越してきてもいいだろうか」と言いました。キツネも「それがいい。それならいつも一緒にいられるから、きっと毎日たのしいだろう。」と言いました。

 こうしてふたりは近所に住むことにしました。ワシはある高い木の

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