大工調べ_半〇直樹風味_

大工調べ_半〇直樹風味_

鈴々舎馬るこ
00:00 | 00:00

※試聴版。オリジナル版(25:58)は購入後に視聴可能。

家賃を滞納した大工の与太郎が、
借金のカタとして大家に道具箱を取り上げられる。
与太郎の上司である棟梁が、次の日から始まるワリのいい仕事を持ってくるも、
まずは滞納分の家賃を払わないと道具箱が戻ってこないので、
明日から仕事ができない。
棟梁が滞納分1両2分800文のうち、1両2分を立て替え、
一緒に頭を下げに行くわけではなく、与太郎一人に行かせたところ、棟梁が大家に対して言った陰口をばらされ、よけいに事態がこじれてしまう。
仕方なく棟梁が与太郎と共に大家のもとを訪れ、
江戸の職人らしく、短気なお願いの仕方をすると、大家にネチネチと反撃され、現代の感覚で考えると、割と早い段階で尻をまくってしまう。
旧来の古典落語であると、ここからの棟梁の啖呵がこの古典落語の見せ所であり、落語を志す若者たちもあこがれる部分であり、啖呵が終わった瞬間に演者に拍手を送るのが「通」な客とする観客が拍手をする部分であるが、
よく考えると、大家サイドは間違ったことは何も言っていない。
「1両2分800文を持ってくれば、道具箱は渡す」と一貫して主張している。
足りなく持ってきて「道具箱を今日中に仕事場へ置いといて、明日手ぶらで行けば先方がいい職人だと認識する」だの「いまから800文取りに帰って、あらためて行くと、門限があって間に合わない」などというのは、完全に棟梁側の事情である。
棟梁は今で言う「ゴネた上に逆ギレしたクレーマー」である。
SNSで動画が拡散されれば、やばいやつとしてさらされるレベルなのだが、
昭和の昔は、「悪どく金儲けをしているやつに、実直に生きてる庶民が逆らうのは痛快」という背景があったため、大変に人気を博した演目である。

しかし、令和で演じるにあたって、クレーマーを持ち上げるわけにもいかないので、物語の問題点を整理し、なぜ大家が棟梁に辛くあたるのか、なぜ棟梁は大家に強気に出られるのか、というサイドストーリーを用意し、原作では痛快、現代では時代遅れとも思えるような奉行所の裁きへの道筋も、新たな材料を提供した作品となっている。

演じ方においては、その当時ハマっていたドラマに影響を受けている。

ここから先は

¥ 500

馬るこを「面白い」「応援したい」と思ってくださった方は、サポートしていただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。