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山里のこどもたち(短歌集)

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子どものことを詠った短歌集です。
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記事一覧

おしゃべりを残して帰る三日間 娘の焼いたシナモンロール

顔腫らし 地団駄踏んで帰り道 本当の敵は自分自身

煮えきらぬ 冴えない君のもやもやも 虹を描けばほら朝が来る

戻り梅雨明ければ川へ網持って 中学おなごがエビだのハヤだの

雨降りの 山の民には子守唄 吐息は深く大地に還る

秋の野は 酸っぱい汗の風が吹く 君が挑む明日への種まき

落下する 紅葉の種の竹とんぼ 追いかける君クルクルクル

秋の夜は 遠く手伸ばしたる夢の 身にしむ色の藍に届かん

遠い空 届かぬ君へ金木犀 納得できない秋風の今

胃袋は おふくろの味で満たされて 胎児の布団でまるまる眠る

束の間の賑やか 子らの過ぎ去って ひとり窓から冬の風花

常識を木っ端みじんにぶっ壊し 若者はいつもまっすぐ進む

重すぎる 理性と常識の鎧捨て 今だけのため少年は走る

誕生日 君はまっすぐ飛び立って 振り返らない二十歳の光