Jackson Browne の「Late for the Sky 」#14
つきあっていた彼女をやっと忘れた頃、電話が鳴った。
「もしもし…」
(携帯のない時代、誰からの電話かわからなかったのが懐かしい)
「rakuda 君、おめでとう!よかったね。お祝いしてあげるから逢おうよ」
「もしかして〇〇さん?」
突然の電話に驚いた。
僕はフレッシュサウンズコンテストに、あるバンドの助っ人として参加、グランプリを受賞していた。
一瞬、ためらったことが受話器を通してわかったんだろう。
「嫌なの?もう元カノには逢いたくない?」
と笑いながら言った。
待ち合わせの場所に行くと、彼女が笑顔で「ひさしぶり」と手を軽く振った。
ちょっと大人っぽくなった彼女は可愛いから、綺麗になっていて、胸の鼓動が早くなった。
彼女が「最近、たまに行ってる」というカウンターだけの天ぷら専門店に入った。
つきあっていた頃、ふたりで行っていた店とは違う雰囲気に気後れしてしまう自分がすこし情けなかった。
彼女は屈託なく「よかったね」「おめでとう」を繰り返し言ってくれた。
杯を重ねるうちに、僕の心もほぐれてきて素直に話をすることができた。
彼女は僕がいつかは実家に帰ることを知っていた。
彼女は地元を離れられない。それも別れた原因のひとつ。
「実家に帰るなら早く帰ったほうがrakuda君の為だと思うし、そうすべきだよ」と言ってくれたのも彼女。
何度も何度も話し合って別れたのに、こうして彼女といると、まるでつきあっているような錯覚をしてしまう。
店を出た。
「今日はありがとう。ご馳走様、美味しかった」
「うん、美味しかったね。ちょっと飲み過ぎたかなぁ~」
と赤くなった顔をした彼女が言う。
「僕、引越ししたんだけど近くだから休んでいく?」
「え~~」
「だいじょうぶだよ。なにもしないし…」
彼女と付き合っていた頃は、まだ、風呂もないようなとこに住んでいたので、少しはマシになった部屋を僕は見て欲しかったし、もちろんふたりで、もうすこし一緒にいたかった。
「じゃ、じゃんけんしてrakuda君が勝ったら行く」
僕が勝った。
遅出ししたのに彼女はなにもいわずついてきた。
「わ~~、私もこんな綺麗な部屋で一緒にいたかったなぁ。お風呂もある」「今一緒にいるじゃん」
「今は彼女じゃないし。rakuda君、今つきあってる人いるん?」
「いない。〇〇さんは?」
「ひみつ 笑」
別れてから今まで、何を考えて、どんな風に過ごしていたのか。
お互いのことを語り合った。時間が足りない夜だった…
よかったらお時間がある時にでも聴いてください。