見出し画像

窓際30cmの妄想

  Greenthumb. それは英語で「植物を育てる才能」という意味らしい。少なくても私にはそれはないな、と思っていた。「かわいい~」の衝動で買っていた植物たち・・・いったいいくつ枯らしてきたであろう。その罪の意識からガーデニングエリアに行っても見るだけに抑え、「つれて帰っても殺してしまう」と自分にいいきかせ、衝動買いを自ら阻止してきた。だが、このコロナ過で家時間が大幅に増え、電子機器とにらめっこする事が多くなったためか自然への飢えからついに掟を破ってしまった。
 そうして持ち帰ったガーデンレタスミックスの家庭菜園キット。指示通り土が入ったキットの袋に水を加え揉んでプランターへ。そこに二列の溝を作り種を植えて再び土をかぶせ、霧吹きで土を湿らせた。すると2日で芽が出てきたではないか。なんてかわいいのだ。本当に生きているのだなと実感した。そこで膨らむ誇大妄想。今IT農業がはやっているといっていたな。遠隔で水やりしながら実際の畑には二回ほど行くだけで収穫できるとこの前テレビでやっていたなぁ、と出たばかりのたった2ミリの芽から大きな畑の主へと脳が変貌していった。しかも労働嫌いなところも折り込み済みだ。実際今若い人たちに農業が盛んらしい。この国の自給率の低さやこれからくる食糧難に対しても実にいいニュースではないか。
 しかし実際食糧難になった時、大切なのは種になるのであろう。その種だが今あらゆる種が採取され保管されているらしい。地球に何かあったら、の対策らしく氷河期のような時期が着たらへの準備らしい。火星にでも打ち飛ばすのであろうか。そして限られた人間だけ宇宙船に乗って地球を逃げ出すのであろうか。まるでノアの箱船宇宙版だ。世界的大プロジェクトに思いを馳せ、その船に私は乗っていないであろう未来に少し落胆しながらもこのガーデンレタスミックスを死なせない事が今の自分のできる精一杯かもしれない、と原因は分からないがしなびてしまった芽にあわてて水をやりながら思うのであった。箱船に乗る富豪への嫉妬を抱いたり、巨大ハイテクIT農業以前にこの窓際30cm家庭菜園を成功させることが先決だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?