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消えたマグロ

通訳ガイドのぶんちょうです。
築地市場の地下にマグロが埋まっているという話を聞いたことがありますか。1965年、アメリカの水爆実験で第五福竜丸というマグロ漁船が被爆しました。

船員たちがひどい被爆症状に苦しみ、亡くなった方も出た大きな出来事です。この船の他、数百隻の漁船も被爆し、全国で500トン近い魚が廃棄されたそうです。これをきっかけに国内で反核運動が起きました。

また、水爆実験で眠りから覚めたという設定の、あの映画「ゴジラ」はこの事件がきっかけになっているそうです。

当時、築地に運ばれた魚類の放射線量は基準値を大幅に超えていたため、セリが中止になるなど市場はパニックになったそうです。そして汚染されたマグロなどは地中3メートルの所に埋められました。

それから50年近く経って都営地下鉄の工事の際に発掘調査が行われました。ところが、当時の資料による、埋めたはずの正面入り口付近ではマグロの片鱗すら見つからなかったそうなのです。

付近の放射線量は異常はなかったというこですが、一体どこに消えてしまったのでしょうか。

船員の生き残りのひとりで、この悲劇が風化しないよう、マグロ塚という石碑の設置を東京都に嘆願したり、講演活動をされていた大石又七さんが亡くなったというニュースを今年、2021年の3月に読みました。

「水爆実験では福竜丸に乗っていた23人の乗組員全員が被曝。半年後に無線長が死亡し、大石さんも1年2カ月の入院で脱毛や白血球の減少に苦しんだ。退院後は「放射能がうつる」と言われたり、慰謝料が支払われたこともねたみの対象になったりした経験も。故郷の静岡から逃げるように上京し、被曝者であることを隠し通していた。」     朝日新聞より

大石さんは、この後、ある中学生の依頼で講演活動を行うようになり、亡くなる直前まで続けていたとのことです。

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