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やっと終わったガイド繁忙期

通訳ガイドのぶんちょうです。
いちばん忙しい桜の季節を駆け抜けると、ガイド仕事は少しだけ緩むのがいつもだったけれど、今年は違った。

仕事依頼は7月頭までペースが落ちないまま続いた。小休止はゴールデンウイーク。この期間は、なぜかツアーがほとんどなく、一週間ほどゆっくりできた。

ゲストに会うごとに「ゴールデンウイークと年末は来ちゃだめよ」と半分冗談、半分本気で言ってたのが世界に浸透したか(笑)

そして、やっとペースが落ち着いた今、7月半ば。
いまの正直な気持ち……少し疲れた。大都会、東京に。
自分にとって、もっとも勝手知ったる場所だけれど、いつでもどこでも観光地は人でいっぱい。築地、浅草、渋谷に原宿。

世界を牽引するパワーを持つ東京を遊び尽くすためにやってくる人達を効率よく案内して回り、喜んでいただくのは楽しい。

でも、自覚はしていないが、そのエネルギーに負けじと気を張っているのかもしれない。暑さが増す季節になれば、ヒートアイランドを歩くために朝から気合いも必要だ。暑さは気合いで乗り切るしかない。


東京のツアーに加えて、ここのところ数ヶ月、週に一度は箱根でのツアーがあった。

ゲストとの待ち合わせのために、ひとり下りのロマンスカーに乗る。
小田原を過ぎたころ、ビルばかりの都会の景色から徐々に田んぼが見えてくる。川が見える。山が見える。畑仕事をする人が見える。のどかな景色に癒やされる。
この景色が見られる日本は、なんて平和で素敵な国なんだろうと思った。

都心から1時間ほどで見えてくる、こんな景色。箱根は、外国人のゲストもよく言うが、本当に緑が多い。

小田原でゲストと合流し、箱根へと向かう山道は車で走っていると緑のトンネルだ。

つづら折りの山道を滑らかに走っていく車。カーブを曲がっても、曲がっても新緑が目に飛びこんでくる。木漏れ日が美しい。

東京と言う街も好きだが、週替わりのイベント、次々に建設される新しいビルや施設や店。その最新情報を追うのはけっこう大変。見つけた!と思ったお気に入りのレストランも翌年には、ビルごとなくなっていたりする。

箱根は都会的な要素もかなりあるが、東京に比べたら「田舎」だ。
ある日の夜、バスを間違えて乗った外国人が泣きながら、ハイヤーの運転手さんにホテルまで乗せてほしいと頼み込んできたと言う。ハイヤーはタクシーと違い、距離での課金システムがないので、普通、お客さんを路上で拾うということはないのだが、その時、たまたま時間があったので、乗せてあげたという。

箱根では、バスは早い時間に終わり、流しのタクシーはほとんどない。お金を払うと、その観光客は言ったが、そういう車ではないからとドライバーさんは受け取らなかったそう。そして、こう私に言った。「これで少しでも、日本のイメージがよくなれば、うれしいからね」と。

観光に携わるお仕事の方の多くが、こうして日本を盛り上げていこうと言う気持ちで働いていることを度々感じる。私自身、日々の忙しさにかまけて、忘れかけていた気持ちなのではっとさせられた。


私の好きな彫刻の森美術館で、ゲストと一緒に立ち止まり、空を見上げる。遠くが見える。山が見える。それだけで、癒された。東京をいっしょに観光して遊び疲れたゲストも、ここで一呼吸と言ったところか。

芦ノ湖からの景色もいい。霧のかかった箱根の外輪山。何十回、同じ景色を見てきたことか。それなのに、いつも違う。同じ曇りでも、今日のように日が射しているのに、周りの山々には霧がかかっていたり。

富士山がきれいに見えると気持ちが高揚するが、小雨の降る湖面を船の中から見ているのもまたいい。風雨が強く、いつロープウェイが止まってしまうか、ちょっとハラハラしながら来る時もある。

そういえば、大雨の箱根でレストランにこもり、ゲストふたりがのんびりと霧に包まれた芦ノ湖を見ながら、昼間から飲んでまったり、なんていう日もあった。旅程を取りやめてハイキングになったこともある。

雨だからとて、いそいそと美術館めぐりなどせず、ゆっくり過ごしたいという気持ちにさせるのも自然があるからかもしれない。ゆったりペースの個人ツアーなら叶うぜいたく旅だ。

ラグジュアリーな人は、その時の気分が最優先。予約があろうと気分が乗らなければ行かない。貧乏性の私は「もったいなーい」と思ってしまうが。

さて、私も夏休みの今、その日の気分でダラダラ過ごしている。予約なんてしようものなら、「元取る」ために雷雨だろうが猛暑だろうが出かけちゃう庶民だから。




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