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英語を話す人はアイコンタクトをなめちゃいけない

通訳ガイドのぶんちょうです。通訳案内士として仕事をしているときに起きたあることについてです。

ガイドの仕事は色々な形がありますが、そのツアーはイギリス人のツアーリーダーが日本へお客様と同行してくるものでした。ツアーリーダーは、出発国で集合したお客さんを日本に連れてくることも含めて、色々ツアー中の面倒をみる仕事をします。そして来日してから、日本のガイドに会い、ガイドと一緒に観光地を回ります。

ガイドにとってツアーリーダーは、ツアー中ずっと一緒に仕事をするパートナーなので会うまでちょっと心配なのです。でも、今回のイギリス人ツアーリーダーは仕事もきちんとしてくれるし、2日くらい経てばお互いの仕事のやり方もわかり、意気投合して協力し合える良好な関係を築けました。

団体のツアーの場合、観光客に集合時間を告げて自由行動にすると、その間ガイドは、ほんのひとときの休憩ができるのです。その合間にツアーリーダーからお茶をごちそうになりプライベートの話などで打ち解けて、私は「今回は優しい、いい人当ってよかった」と思いました。

ところが、ツアーも終盤にさしかかった頃、ある観光地で日本人にも人気のとある有名なホテルにチェックインした時のことです。ホテルの担当の方とイギリス人ツアーリーダーとガイドの私で3人で打ち合わせをしていました。

ホテルのサービスは良く、スタッフも皆感じがよく、さすが老舗と思わせる対応、そのホテルの担当もとても腰が低くて丁寧な言葉遣いでした。数分の打ち合わせを終えて、解散すると、ツアーリーダーが今までになく不機嫌な顔をしています。

そして「あの人は君の方ばかり見て、僕とは1回も目線を合わせなかった。僕はこの団体のツアーリーダーなのに、なぜ僕の方を見てきちんと話さないんだ。非常に失礼だ」と言って怒りだしたのです。

あの穏やかな人がここまで怒ったのでびっくりしましたが、それ以上に「目を合わせない」「アイコンタクトを取らない」と言うことが、この怒りの原因だということを知って私はびっくりしたのです。

言われるまで、私にはホテルの人に落ち度は全く感じられませんでした。しかも、ホテルの人は始めに「英語に自信がないので日本語で言いますので通訳をお願いします」と断っていて、それを私もリーダーに伝えていたのです。だから、リーダーはホテルの人の話を私の言葉を介して聞いているのです。

ホテルの人と私が話した内容を、私がリーダーに伝えるときは、普通に目を合わせて話していたので何ら問題はないと私は考えていました。でもリーダーはそうではなかったのです。たとえ、わからない言語であってもホテルの人にはきちんと自分に話しかけてほしかった。目を合わせてきちんと話してほしかったのです。

私は衝撃を受けました。日本人としては丁寧な応対と感じることでも、こんな風に異文化では誤解が生じるという一例を目の当たりにしたのです。

日本人は人の目を見るのは場合によっては失礼だったり、挑発的だと捉えられることもありますよね。下級武士は将軍の前で顔も上げられないという歴史があるくらいですから。でも、外国人が日本人に対して不快に思うことの一番はアイコンタクトを取らないことだそうです。

その理由として、目を合わせないのは無視されたと感じたり、何か隠していると感じることが挙げられていました。

曲がりなりにも英語を生業にしているので、そのことはわかっていたつもりでしたが、甘かったです。完全に。3人のうち、ひとりがアイコンタクトを取らないことで、リーダーは蚊帳の外にいるような気持ちになっていたのです。

リーダーはその後、怒りを引きずるようなことはありませんでしたが、アイコンタクトは私が思っている以上に大切だということを体験で学んだできごとでした。

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