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インスタもFBもしてない旅行者

通訳ガイドのぶんちょうです。
先日の観光客は一人旅の男性。日本が大好きで、何回かひとりで来ているそう。

ゲストがひとりの時は、特に楽しみです。たった一人のためだけに一番いいツアーを100%提供してあげられるからです。

家族であっても、親は神社仏閣が見たいけれど子どもはファッションの街を歩きたい。などよくあることです。そんな時は両方の望みをかなえてあげるわけですが、やはり親や子どもに「おつき合い」の時間は多少、生まれますからね。

この旅行者は日本のファンで何回も来日しているとのこと、日本食も大好きで日本人の友達もいる。それじゃ、まだ行ったことのない場所で、面白い場所に行きましょうとなりました。

向かったのは上野方面。まずアメ横に行きました。ここに来ると独特のパワーを感じます。観光客をウキウキさせるような場所みたいです。そこでの薄いピンクのイチゴと白いイチゴを買って食べました。観光客にとって初めての白いイチゴはワクワクします。ほんとにおいしいの?と半信半疑。

お正月明けだったせいか、いつもより値段がすごく高いので、ちょっと私は躊躇しました(10個で3000円から4000円くらい)が味は最高でした。グルメのゲストも満足です。ピンクのイチゴはちょっと桃のような香りがする気がします。白いイチゴも何年か前に最初に見た時は熟していない実のようで、あまりおいしくなさそうと思いましたが、食べてみて甘さにびっくりしたので、よく勧めています。

その後、下町の住宅街をそぞろ歩き。主な観光地は、すでに多く訪れている彼にとって、私たち日本人にとっては「何もない」「つまらない」「退屈な」場所も目新しく、魅力的に映っていました。

都会の喧噪を離れて静かな住宅地を歩く。そこで生活している人たち。家の周りをホウキで掃いている人、花に水をやっている人、通学の子どもたち。普段着でコンビニに入っていく人。立ち話をする主婦。小さな魚屋さん。お米屋さん。墓地。地域のだれもいない、小さな神社やお寺。

銀座や青山では見られない、こんな風景もまた日本を楽しんでもらえる場所です。

路地裏を一緒に歩き、尽きない雑談をしながら「こういう所は素晴らしいね」「静かだね」「古い家がとてもいい」としきりに褒めてくれました。

有名レストランや一流ホテルの話も盛り上がりましたが、今日のランチは家庭料理を出してくれる一軒家の店へ。「寿司」「天ぷら」「とんかつ」など名前のついた和食ではなく、ご飯と味噌汁と魚やお肉という組み合わせの、いわば「家庭料理」の店に行きました。こういう「日本上級者」には是非、味わっていただきたいものです。

彼は米国の弁護士さんで、珍しいことにフェースブックもインスタグラムも何もしていない。と言うのです。「僕は多分世界でひとりだ」と笑っていました。そういうものをする時間がもったいない。と言うのです。

確かにFB、インスタ、ツイッターも考えてみれば、私は仕事用に使うことがほとんど。なくても生きていけるし、ついつい余計なものまで見てしまって時間を失うことはしょっちゅう。つながっている人の近況だって、ほんとに必要なものはほとんどないかもしれません。

そうは言っても、辞められないのも事実で「時間がもったいない」と断言できる人の潔さには完全に脱帽。大衆迎合の見本のような私には、なんともかっこいい人間に見えました。

だから、有名観光地だけでなく、東京のさりげない一面を見て感動できる感性があるのかもしれませんね。

その後も、ちょっと面白いけどあまりメジャーではない場所へどんどん移動して沢山の場所を巡りました。でも、写真も撮らずに、ただただ五感だけで、それぞれの場所の空気を味わっていました。

私が旅行先で写真を撮る理由は、今度いつ来るかわからないから今、撮っておかないと忘れそうという気持ち。自分の記憶に、今見ている景色を留めておく自信がないからかもしれません。もうひとつはインスタにあげるため。いわば証拠写真ですよね。ここ、行ってきたぞという。見栄なのかもしれません。

もし、写真を撮らずに旅行するとどうなるのでしょうか。3年後、5年後、その景色は私の脳裏にちゃんと残っているのでしょうか。SNSを辞める勇気がないのと同様、写真を撮らないという選択肢を選ぶ勇気も私にはまだなさそうです。

次回、日本に来るときは、富士山を案内してほしいとのこと。インスタないけれど、メールアドレスわかるから大丈夫と言ってくれました。




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