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消えないために

茶道を習っていると、和菓子、特に上生菓子をいただく事が多い。練切、こなし、きんとん、薯蕷、羹。小さな世界に色とりどりの季節を詰め込んだ菓子を、毎週のように見て楽しみ味わい喜んでいた。市内にも上生菓子を商う店舗がいくつもあり、テーマは同じでも、店により作り方も菓銘も違う。それもまた楽しみの一つだった。
ところが、ここ数年で和菓子屋、それも上生菓子を作る店が次々と店を畳んでいる。私が習い始めた頃は、生活圏に両手に余るほどあった店も、今は数軒を残すのみとなった。

和菓子店の閉店が相次いでいる一因に、茶道人口の減少が考えられる。2001年に273万人いたとされる茶道人口は、2016年の調査では176万人。2021年の調査に至っては92万人まで激減している(社会生活基本調査より)。ここ20年で三分の一まで減少、それに合わせるように教室や先生(教授)の数もこの10年で半減している。和菓子の消費量が減っているのも、このあたりが関係しているようだ。茶道人口のボリュームは昭和の高度成長期にはじめた女性たちによりグッと押し上げられ、今もその世代により支えられている。対して若手、学校の部活、サークルなどではじめる10代は増えているが、20代を超えるととたんに減少に転じる。

新型コロナ流行によりさらに茶道離れは進んだ。2016年から2021年の茶道人口半減少は、コロナ禍が大いに関係しているとは分かっていても、ある意味衝撃的だ。以前から濃茶を回し飲むことを嫌う人が一定数いたが、コロナ禍がさらに忌避するものとしてみられるようになった。また、閉鎖的な空間で長い間対峙したり、菓子などを取り回すこと、マスクの取り扱いなど、感染対策においてはどのようにするべきか、作法だけでなく茶道のあり方も問われる時代となっている。

伝統ばかり守っても社会に広く根ざしたものがなければ廃る。かと言って、変えてはならないところもあるわけで、茶道がこの先、どのように進んでいくのがよいのか、末席から思考していきたい。

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