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到達点

茶道を習いはじめて19年が経った。だが、未だに点前を忘れるし、満足な茶が点たない。それでも年月を重ねただけのことはあって、だいぶマシになった。

私は左利きなので、最初の5年ばかりは茶筅を振ることすら怪しかった。何かを手に取ろうとすればまず左が出る。茶巾を絞るのも左手が前になる。火箸が扱えず、炭点前では白炭を何度落として割ったことか。

それでも続けていれば、右手を少しは使えるようになる。入らなかった力も徐々に入るようになってくる。要は慣れということ。茶道の基本だ。それが「逆勝手」(亭主の右側に客の席を設けるのが正勝手、亭主の左側に客の席を設けるのが逆勝手)がとなるとボロボロで、右利きの方でも混線するのに、左利きはせっかく慣れてきた右手の扱いが「逆勝手」をするとさらに混線する。せっかく慣れてきた右手の扱いがリセットされてしまい、何が何やら分からなくなる。

10年を過ぎた頃から、左手を出してしまう間違いを犯す事もなくなり、右を使うことができるようになった。でも右利きになれたわけではない。普通の「右利き」の人並とはいかず、(意識してやっと)使えるになっただけ。ここでやっと初心者のスタートラインに立てた気がした。だから、教授になりたいだとか、免許を取りたいは二の次で、続けること、右手でちゃんと点前が出来ることが私の到達点であり、なにより大事なことなのだ。

それからまた10年経とうとしている。右手の扱いは自然にできるようになったが、今度は物忘れがひどくなってきた。平点前ならいいが「久しぶりに濃茶でもしましょう」などと言われると、つっかえつっかえ、やっとの点前になってしまう。いやはや、また到達点が遠のいてきたぞ。困ったものだ。

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