「寝かせる」ということ
もう20年以上も前、私が、まだ採用されたばかりのペーペーだった頃、とても尊敬している先輩がいました。
仕事が手堅く、かつ手早い人で、締め切りのある仕事なども、その期限のはるか前に仕上げてしまうのです、が。
なぜか、その仕上げた仕事を、締め切りのギリギリまで、そのまま手元に置いておくのです。
私はといえば、基本的に、何かひとつカタがついたら、いち早く目の前から消し去ってしまいたくなるので(笑)、先輩のその行動が本当に不思議でした。
そこで、素直にその疑問を投げかけたところ、返ってきた返事が「寝かしておくんだよ」と。
提出期限までに何かあるかもしれないし、自分も考えが変わるかもしれない、そういうときのために、そのまま置いておくんだよ、と。
学生時代、テストを早々に仕上げて、見直しすることもせず(自分の中では、ひと通り解答した時点で、完全に「終わったもの」になり、急速に対象に興味を失ってしまうので。自信があるから見直す必要がないのよ、とか、けしてそういうことではありません、念のため(笑))、ポカミスで減点されることが常だった私からすると、終わった仕事を見返すとか、期限まで温めておくとか、あり得ない!という感覚だったのですが…
月日は流れ、あれから幾度となく痛い思いを経験し(笑)、また、効率的、効果的に仕事を進めるには、逆説的ですが、「時間をかける」ということが何より大事だと、近年、本当に身に沁みて感じるようになりました。
たとえば、スケジュールが決まっている仕事において、何らかの事情で進行を一時的に止めざるを得なかったり、遅れが出たりすると、早く進めたいのに~!と焦ったり、イライラしたりしますが、実際のところ、その停滞している間に、何らかのミスが見つかったり、別のよいアイディアが見つかったりするんですよね。
たまたまかもしれないし、そうでないかもしれないし、けれども、私としては、「流れ」というものに逆らわないほうがいいなと、体感として感じるようになりました。
それまでスムーズに流れていたところに、はい、ここでちょっと待ってね~、とばかりに何か邪魔が入るとき、あ、何かあるな、と思うのです。
そして、そういうときに、躍起になって、その邪魔を排除しようとしたり、邪魔を乗り越えて前に進もうとしたりすると、落とし穴に落ちる(笑)
当時の先輩の、期限まで「寝かせておく」ということとは、少しニュアンスが異なるのかもしれませんが、現に進めているプロジェクトが進まなくなったときに、じたばたしないで「寝かせておく」、焦らずに時間をかける、そうすることで、よりよい道が開ける可能性をつぶさずに済むのだと思います。
年を重ねると、時間を味方にできるのかもしれません。
というわけで、ひと休み、ひと休み(笑)
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