仮面浪人しようか迷っている人へ

私は大学に入学して2ヶ月経った頃、仮面浪人を始めた。

理由は、ボーダーフリー、通称Fランの私立大にいる自分が、これまでずっと優等生として生きてきた自分とかけ離れていたからだ。

センター利用でぎりぎり引っかかった大学なんて、行きたくない。

部活が忙しかったから、もう一年あれば絶対もっといいとこに受かるはずだから、就職も頑張るから、お金も全て返すから、浪人させてください。

今思うとなんとも惨めな言い訳だが、親に文字通り土下座した。

しかしかなり揉め、結局そのまま受かっていた大学に入学した。

最初は心を入れ替えて頑張ろうとしていたが、心の底の方にある劣等感や自己否定感はいつでも付きまとった。

学歴コンプレックス。

何度検索したか分からない。くだらないと分かっているのについ考えてしまう。

’出来ない’自分にイライラして、毎晩、親に聞こえないように声を押し殺して泣いた。

そして現実から目を背けるように、受験勉強を再開した。

人がたくさん居るのが怖くなり授業に行けなくなっても、ひとりで参考書を解くことなら何時間でもできた。

友達には資格の勉強があると嘘をついて、そのうち完全に一人になった。

自分について深く考える時間が増え、考えれば考えるほど自分がいかにダメな人間なのかということばかりが脳内を占めて、精神を病んでしまった。

大学に行けなくなった。1年間での取得単位、15。

戻れないところまで来てしまったような気がして、ホームのベンチに座ってぼーっと考えていたら、線路から目を外せなくなった。

こんな私は、生きてても死んでも、変わらないんじゃないのか。

落ちていく思考とは裏腹に、勉強量と成績は上がっていった。

心を決めた。8月模試の結果を見せて、震えながら親に話した。

両親は色々と言いながらも、仮面浪人をすることと受験費の一時負担を許してくれた。

一気に安心して、ホームのベンチに3時間も座ってたんだよね~と笑いながら話をしたら、父に涙目で怒られた。

仮面浪人というものは孤独だ。

参考書を開くごとに大学生である自分が傷つけられ、

大学へ向かいながら、授業を受けながら、期末試験の勉強をしながら、

浪人生である自分とも向き合わなければならない。

それで結局、どちらにもなり切れない。

センター試験の1日目が終わって会場を歩いている時、

高校の時の友達が偶然すぐ前を歩いていた。

たぶん上手くいったと思う、と嬉しそうに話しているその声が鼓膜にまとわりついて、

ばれないように必死で俯いて歩く自分がみじめで、消えてしまいたかった。


国立前期の結果、不合格。

合格したらすぐ提出しに行くつもりだった退学届けを引き出しにしまって、小論文対策の参考書を買いに行った。

今さら落ち込んでいる暇はない。合格したいというよりも、この状況を抜け出したいという焦りだけで動いていた。


後期試験が終わり、一年前から決まっていた旅行に友達と行った。

すっかり大学生活に染まった友達たちと、浪人を終えて無事大学に受かった友達たちにおめでと~!なんて言っている自分が辛かった。

皆は当たり前に一年分先に進んでいる。

自分だけが去年の3月から動けていない。

センター試験懐かしいね、なんて話を振られても

ぎこちなく笑うことしかできない。この前受けてきたんだよ、私は。


それでも、なんとか執念は叶った。

後期合格。

現役時代からの第一志望に入学することができた。

前の大学に退学届けを出しに行ったら、手続きはすぐに終わった。

事務のお姉さんが理由欄をチラッと見て、「おめでとうございます」と、思ってもなさそうなトーンで呟いて、そのお姉さんに学生証を渡して、キャンパスを出て、もうそれで私の’1年生’はあっけなく終わってしまった。

そして、次の週からはすぐに、2回目の’’1年生’’が始まった。


夢から醒めたかのように、自分でもびっくりするくらい心持ちが変わった。

気持ちが変われば、行動も自然と変わる。

人と関わることへの恐怖心は薄れ、サークルに入って、すぐに気の合う友達もできた。

授業もそこそこにこなし、バイトもなんだかんだ楽しい。

何よりも変わったのは、

’’学歴’’について考えなくなったということだ。

心身がボロボロになるまで’’学歴’’に執着したことで

このコンプレックスが消えたというのは、皮肉のようでもある。


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この記事を読んでくださった方には、仮面浪人を考えている人、

今現在がんばっている人、過去に苦しんだ人もいるでしょうか。

おすすめはしません。でも止めもしません。

結局受かったから呑気な事言ってんだろ、と言われたらそうなのかもしれませんが、

誰かに背中を押してほしいと思っている人の手助けになればと思って書きました。

3年前の自分はそうだったので。

この記事を完成させるのに数年かかるなんて思っていませんでした。

それくらい思い出すのがしんどくて、泣きながら書きましたが、

なんとか3年前の自分の苦しみが供養できそうです。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

受験生、特に浪人生、応援してます!!




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