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『Nameless Story』②


「医師 齋藤飛鳥」


はぁ…イライラする

「齋藤先生、701の吉田さんなんですけど…」

「薬なら出しといたよ」

「ありがとうございます」

はぁ…

「齋藤先生、明日のオペなんですけど」

「大丈夫、任せて」

はぁ…

「齋藤先生!高橋さんが!」

「すぐ行く」

病院の日常風景。私は急いで病室に向かった。

「齋藤先生って感じだね」

「さすが、氷の女王ね」

看護師のヒソヒソ話が後ろから聞こえる。

氷の女王…別に私は雪だるまに命を与えたりはできない。

今はそんな話に気を取られてる暇も無い。私は病室に向かう足を速めた。



いつからだろう。このイライラが積もるようになったのは。

仕事が忙しいから?

彼氏が出来ないから?

氷の女王と呼ばれているから?

全部ピンと来ない。だから余計にイライラする。

「はぁ…」

仮眠室に溜め息が漏れる。それと同じくして内線が鳴る。

「はい、すぐ行きます」

慌ただしい1日はまだ終わらない。こうやって私は婚期を逃していくんだねぇ。


たまに思うことがある。

“どうして私は医者になったんだろう”

ってね。

もう忘れてしまった初心を、どこか必死に探しているのかもしれない。

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