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ボクシングジムでお前呼ばわりされた話


キックボクシングのジムに通っていたときの話。

そのジムには何人かのトレーナがおり、引退した元K-1ファイターや、プロボクサーを目指すお兄さん、そして、タイ人がいた。ホームページによると、「ムエタイの楽しさを伝える為に日本へ来ました。」とある。ムエタイの選手だったのかは分からない。


そのボクシングジムは、10:00〜15:00昼の部、17:00~21:00夜の部で営業しており、
私は人の少ない昼の部の、さらに人がいない12時頃によく通っていた。

平日のお昼時に来る人なんてそうそういないので、その時間は基本タイ人トレーナー1人で営業していた。

元々寡黙なタイプなのか、日本語があまり得意でなかったのか分からないが、彼はあまり喋らなかった。ムエタイを普及する強いモチベーションは特になさそうである。
私(や他の客)がジムに入ると無言でコクリと会釈。
縄跳び2分×3のアップが終わるまで、受付の奥でスマホをいじりながらじっと待つ。
私が縄跳びを束ねたり解いたりして準備が終わった感を出すと、黙ってのそのそやってくる。なかなか日本的な空気が読めるやつである。

そこからトレーニングが始まるのだが、大抵はトレーナーと一緒にジャブ・ストレート・アッパーなどを一通り練習し、その後ミット打ちをする流れだった。

そのタイ人トレーナーは、若干聞き取りにくい日本語ながら大変丁寧に教えてくれた。腕を伸ばしてください、足をもっと上げてくださいなど、きちんと 丁寧語 で。私が指示通り動いてみると、いいですね!と褒めてくれ、非常にやりやすかった。


しかし、彼に限らず外国人とって日本語というものはやはり難しいのだろう。


彼の中では、you=「お前」。

指示を出される度、「お前、腕を伸ばしてください」「お前、足をもっと上げてください」と私は言われていた。


確かに、意味は通じるけど…


そのジムで私は、ボクシングと日本語の難しさを身を持って学ぶことができたのだった。


サワディーカップ!


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