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映画・ラストエンペラーの色彩表現

中3息子と話していた時に
何かの拍子に
『ラストエンペラー』の映画の話になった

普段親が好む映画には興味がないので
珍しいなと思いつつ
GWに親子で鑑賞

今映画館でやってるみたいだけど
うちは自宅で
息子の希望もあって吹替版

公開は1987年だから
最初に観たのは36年前
その後一度テレビで見た気はする

そんなにも日が経っているというのに
古びた感じがしない

愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)の
服役中の場面は色数少なく
画面がグレーがかっているのに対し
回想シーンは色数がぐっと増える

とくに、紫禁城太和殿での戴冠式
幼い溥儀が
皇帝のみにゆるされた黄色の布
その布の向こう側へ
広場に足を踏み入れた瞬間

あのときの空間の壮大さ
彼にとっての世界はどこまでもどこまでも
広くつづいているように思えた

広場に集まった人々も
皇帝の衣装にも
黄色があらゆるところで多く使われていた

その後何度か服役中シーンや
回想シーンが繰り返されるたびに

黄色の配分は少なくなり
彼の「世界」も狭くなっていく
赤い扉
赤い布
彼の世界が狭くなるごとに
赤い色は彩度を増して鮮やかになる

満州国での即位の際に
満州の人々が振っていた満洲国皇帝旗は
黄色に染められて振られていたけれど

日本の国旗と並べて掲げられたものは
黄色ではなかった
(生成ベースに黄色の満州国章)

こちらが満州国皇帝旗(ウィキペディアより)

その色の違いが
日本にとっての溥儀への扱いの軽さ
そんな風に感じ取れて
悲しくなった

また回想シーンの中でも
色が全体的にセピアががかっているところもあれば
彼が自由を感じているシーンでは
一段トーンが明るくなり
パッと心が開放された気持ちになる

色で心情表現が伝わってくるところがすごい

昔見た時はのんびりみていたので
こんな色彩表現があるなんて気づかなかったな

一緒に観ていた息子は
「いや、これはすごかった
 3時間半も納得だ」
と言葉にならない感動があったようだった
(色のことではなく、映画の内容ですが)

最後に話がまたずれちゃうけど
皇后の婉容(えんよう)が
蘭の花と思われる植物を
モリモリ食べまくっちゃうシーンがある

彼女の悲しさの極みと
アヘン中毒の異常性を
表しているシーンだけれど

あの花、満州国の国章によく似てて
(実際には違う花)
この花をみて
満州国の皇帝に担ぎ上げられて
自分のことを見てもくれない溥儀を連想し

悔しくて悲しくて
無くしてしまいたい
という気持ちがあふれてしまったのかも
と感じさせた

そんなシーンなのに
花の紫と緑の配色は鮮やかで
美しいほどに悲しさが募る

この映画は何度みても
そのたびに違う発見がありそう

昔の自分より
年を経て様々なことを経験し
学んできた今の自分の方が
感情を揺さぶられる映画だった


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