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あの夜

私が食器棚の奥に大切に取っておいた「キャラメルポップコーン」を、食べちゃったっていいんだよ。
いつだって、好きなときに、好きなだけ。
最悪の場合私を差し出すってくらいだよ。
そんなこと言うと「食べていいよ!」って言われるから、言わないけどね。でも実際に君が食べちゃったら、私は反射的に一緒に食べようと言ってしまうだろう。
そしてそのあと2人で映画なんか見ながら、ほろほろ泣いて、それで1日、また1日と生きるだろう。
人間ってなんて深いんだろう。でもそれが、人間だ。

だからせめて、この平和なとき、互いが生きている今は、気前よくありたい。
だから、そのへんにあるものをなんでも食べて、正直で、大きく強く健康でいて、私と一緒に生きてくれ。
そうなったら私も本気で向き合うから。だってもうすでに私たちは生き生きと生きていて面白かったもんね。
生きて生きて生き抜いてくれ。ただそう思う、あなたがいてよかった。

大声では言えないあの夜がなかったら、この日々はただ息が詰まって、もっときつかったかもしれないな、しみじみそう思いながら、この国はパンが主食なのでいっぱい家にパンがあったので、昼はパンとソーセージ、夜はパンといちごジャムという、日本では絶対に食べない、ひどいメニュー。
茶色くて、地味だけど今しかできないこと。あの夜と同じように懐かしく思うときが来ると、そう思う。

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