絵から動画を作る #こんな仕事です
はい。この企画への応募作、第二弾です。どうもビミョいタイトルになったのは、この職種を何と呼ぶのが良いのかよくわからないから。
さて、みなさんはエロゲーってご存知ですか? アダルトゲームの俗称で、いわゆる成人向けのゲームコンテンツですね。18禁のやつ。僕はそれの、プロモーション映像を作る、という仕事をしたことがある。
あ、今いろいろ警戒したみなさん、大丈夫です。ここには18禁の内容は出てきませんし、僕がやった仕事も、18禁のゲームの宣伝映像を、18禁にならないように作る、という内容だった。この宣伝ムービーはYoutube で流したりすることが決まっており、むしろ「絶対に18禁にならないように作ってください」というオーダーだった。
今回この仕事を思い出してネットで検索してみたら、既に公式が上げていたYoutubeは存在しなかったものの、ニコ動に丸ごと上がっていた。実に15年ぐらい前にやったお仕事。
サムネがキワドいけれど、前述のように「絶対18禁にならないように」作ったムービーなので大丈夫(なはず)。まさにこの映像が、僕の作ったものです。エロゲーあるあるなのだが、歌がとても良い。
宣伝ムービーのはずがオープニングと書かれているじゃないか、と思ったあなた!目ざとい。
実は、宣伝として依頼されて納品したこれをメーカーの方が気に入ってくださり、そのままオープニングとして使おう、という話になったのでありました。
今回は、これをどうやって作ったかという話をしようと思う。
見かけがとっても胡散臭いおっさんから電話がかかってきて、開口一番「零音さん、エロゲー好きですか?」と。「え、まったくやったことないですが」「興味ないですか?(グイグイ来る)」「え、えぇ、あまりないですね」「PV作ってほしいんですが」「やりましょう」
ってな具合に引き受けたのでありました。
ゲームの制作に関わられたイラストレーターさんの描いたイラストがドバっと届き、この楽曲のデータが届く。で、僕に仕事を依頼してきたおっさんの書いた文字要素(映像の中に文字として出てきている文言)が届き、だいたい歌のどの部分でどの絵を使いたい、といったオーダーが来る。
僕はそのオーダーに沿って映像に仕上げる、というわけ。
で。送られてきたイラストは大変クオリティが高いだけでなく、素材ごとにレイヤーがわかれていて、レイヤーを一つずつ非表示にしていくと、だんだん服が脱げていく(!)ようになっていた。顔の表情も何種類もあり、レイヤーを切り替えることで表情を変えられるようになっているのである。すごい。
これを駆使して映像にしていくのだが、限られた素材数、かつ、動いていない静止画のイラストのみを使って、あとは僕の工夫でなんとか間を持たせる、というお仕事。登場するキャラクターが魅力的に見えるように、さらに、元コンテンツはアダルトゲームなので、やはりちょっとエッチ感は欲しく、しかしそれでいてこのムービー自体が18禁になることは避けねばならない。
最終的な動画の画面サイズと元のイラストの大きさの兼ね合い、画面に対する人物の大きさ、などをあれこれ調整していくと、理想的なサイズにすると映ってはいけないところが映ってしまうなどの問題があり、かなり頭をひねることになった。
もともと絵の数も少ないため、普通にやると退屈な絵になってしまう。そこでバリエーションを持たせたいわけだが、着ているか脱いでいるかみたいなバリエーションしかない中でどうするのかという問題もあった。
で、デジタル技術を駆使して、キラキラのツブツブが飛び散ったり、文字の出し方を工夫したり、曲のリズムに合わせたり外したり、ふわっとした映像に仕上げたり。
持てるスキルを端から動員して、18禁ラインぎりぎりを攻める。曲が良いのでさながらミュージックビデオを作成しているような気分になるのだが、素材選びのために開いているサブモニターには完全に18禁の絵が表示されていたりする。自分がいったい何をしているのかわからなくなるような仕事であったが、おかげさまでクライアントにも大好評で、前述のように、「これそのままオープニングにさせてください」という展開になった。
この手の仕事をする前までは、こういう18禁の仕事というのは、ギャラが良いので、本当はあまりやりたくないのだけれど仕方なくやっている、みたいな人が多いんだろうなと思っていた。でも違った。みんな嬉々としてやっていた。心底好きでたまらんという人たちが全力で作っていて、だからなかなかどうして、非常に質の高いものができていたりする。
クリエイティブは最終的に、「好き」に駆動されるのではないかという気がする。