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[戯言戯言日記]100メートルのLANケーブル

5月3日(月)

 本棚の上に箱が乗っている。ダンボールの、ちょうど人の頭が一つ入るぐらいの大きさの箱だ。表面に書いてある文字を引き写してみよう。

EU RoHS 指令準拠
Cat6 Gigabit
LAN Cable
カテゴリー6ツイストペアケーブル
0.5mm × 4P
100m

 興味深い。箱に書かれた文字は情報であり、何かを伝えるためのものだ。しかしこれはいったいなんだ。書かれた情報は、「この全部がわかる人に向けて書いていますよ」という意思までも含んでいるように思われる。なんのこっちゃいなと思うようなことがひたすら書かれているわけだ。

 この箱は一体何かと言うと、LANケーブルである。LANケーブルといって何かわかる人でも、表面に書かれた上記の情報を全部理解できるとは限らない。そもそもLANケーブルというのがなにか知らない人にとってはほとんどすべて意味がわからないだろう。

 LANケーブルというのはローカル・エリア・ネットワーク・ケーブルのことで、雑に言えばローカルネットワークで機器同士をつなぐためのケーブルとでもいうことになるだろう。どうだろうみなさんの家庭のネットワーク環境はどんな感じだろうか。今どきはWi-Fiなんつって、調子のいい言葉のやつが飛び交っているかもしれない。その場合、ローカルネットは無線接続が主流で、LANケーブルというのは使っていないかもしれない。

 わたしの家の本棚の上にあるこのダンボール箱は、そのLANケーブルの100メートル巻の箱だ。箱には穴が空いていてそこからケーブルが飛び出している。箱の中には芯があり、ケーブルがその芯にぐるぐる巻にされていて、端っこが穴から外へ出ているわけだ。この端っこを引っ張ると箱の中でリールがぐるぐる回転してケーブルがずるずると引き出されるという仕掛けになっている。その総延長100メートル。

 家庭のネットワークでLANケーブルが100メートルも必要なのかといえば、もちろん必要ない。家庭の規模にもよるしネットワークの趣味度にもよるが、ほとんどの場合、100メートルもは必要ないだろう。わたしも100メートル巻で購入したものの、おそらく5メートルも使っていないのではなかろうか。

 なんで100メートルも買ったのか。

 それは、コネクタのついていないケーブルのみのものを買おうと思ったら100メートル単位しか無かったからだ。必要な長さに切り、コネクタを取り付けて使用する。そうするとケーブルはどこも必要な長さピッタリになり、余ってわらわらと処置に困るようなことがない。ここは45センチ、ここでは70センチ、といった必要な長さというものがあるわけだが、売っているものは0.5メートルの次が1メートルだったりして、微妙に足りなかったりモーレツに余ったりする。必要な長さで切り出せたらスッキリするじゃないか、という発想で100メートル巻を買った。

 ONU(回線終端装置)からすぐ隣りに置いたルータまでを接続するLANケーブル15センチ。この15センチのケーブルを作って接続したときの至福感。この瞬間のために100メートル巻を買ったんだとさえ思うほど恍惚とした気分だ。

 そしてケーブルは盛大に余った。おそらく90メートル分以上残っているだろう。ずっしりと重いダンボールが本棚の上に鎮座している。

 なお、100メートル巻のケーブルと合わせてLANコネクタも購入したわけだが、こちらも100個入で購入し、大量に余っている。100メートルのLANケーブルにはロマンが詰まっている。ロマンとはきっと無駄という意味だろう。無駄なことを思い切りやる。その理由としてロマンは便利だ。ロマンさえあれば、全部無駄でもいい。

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