運命の子猫 3
別れ
私はしばらくの間、父と母が出ていった扉を見つめていた。
両親は娘がこんな姿になったことをすんなり受け止めてくれるのだろうか。
そもそも、どうやって伝えたら良いのか。
私はしばらくこの扉の向こう側にいる両親に全てを打ち明けるか悩んだ。
そして私は、何も言わずに出ていくと決めた。
心配されることは目に見えている。
両親にとっては正直に言ったほうが良いかもしれない。
しかし、怖かった。
大事になることは目に見えている。
母は極度の心配症だ。
結局、私は親のせいにしてしまった。
私は胸が締め付けられる思いを押し込めて、再び家からどうやって出るか考え始めた。
大変なのはそこからだった。
猫となってからは自力で自分の部屋から出ることさえできない。
それから何時間も扉が開くのを待ち続け、なんとか見つからず自分の部屋から出た後も再び玄関が開くのを靴箱の影から待ち続けた。
~・~・~
私はずっと長い間一人だ。
そんな中、ついこの間一人では無くなった。
猫を拾ったのだ。
とても綺麗な猫だった。しかし、かなり弱っているように見えた。
猫は弱々しく私の方へ歩き、私の足元で力尽きてしまった。
その時私は運命を感じた。
この子を救う以外に選択肢は無いと思った。
すぐに清潔なタオルでその小さな子猫を包み込み、家へ連れて帰った。
今は白いふかふかの毛布の上できもちよさそうにすやすやと眠っている。
弱っていたのが嘘のようだ。
またよく見ると、猫の胸元には小さな青い石のようなものが付いていた。
まるで心臓のような小さな石はまるで身体の一部のようにくっついている。
子猫を拾ったのは夕方に家の近くを少し歩くだけの散歩の時で、子猫を洗って寝かせると外はすっかり暗くなっていた。
子猫の幸せそうな顔を眺めながら私は久しぶりに心地よい眠りについた。
翌朝。目を覚ますと見知らぬ猫がいた。
猫はとても驚いた顔で私を見ていた。
私は日記を見ることから一日が始まる。
私は認知症になってから、これだけを頼りに一人で生きている。
昨日、私は猫を拾ったらしい。
とても綺麗で元気そうなので、病院にはもう連れて行ったのだろう。
「おはようさん」
猫はずっと私の目を見つめてくる。
とりあえず、私は朝ごはんの用意をすることにした。