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【読書】死にたがりの君に贈る物語(生きる理由なんて本当はきっとない)

読書の秋ですね。
本屋さんをフラフラしていて、久しぶりに紙の本をジャケ買いしました。
『死にたがりの君に贈る物語/著・綾崎 隼
ちょっとセンチメンタルな気分だったんだと思います。
なんてったって、秋ですし。
タイトルとあらすじを読んだ雰囲気で、思春期~青年期のちょっと生きづらくて、息苦しくて、日々を生きるのが精いっぱいな人たちが頑張るお話なんだろうな、という想像で買ってみました。
私自身、そういう思いをしてきた側の人間で、最近忙しすぎてメンタル落ち込み気味だったので、心のチューニングをするつもりで読んでみました。

以下はネタバレを含む可能性がありますので、ご注意ください。
ただし、意図的なネタバレも考察もするつもりはありませんので、逆にがっつりネタバレが読みたいんだという方も期待には応えられませんので、予めご了承ください。
あらすじについても、本の紹介ページに記載がありますので、そちらにまるっと投げさせていただきます。
ただの個人の感想です。
子どもの頃はあんなに嫌いだった読書感想文を大人になってから自主的に書こうと思うのも不思議なものですね。

さて。
子どもの頃、どんな気持ちで日々を過ごしていましたか?
私は途方に暮れてたような気がします。
絶望している。
というほどには何かに不自由していたわけでもなく。
生き生きしている。
というには無気力でした。
ヒロインの純歌は、大好きな小説の作者が亡くなって続きが読めなくなったことに絶望して自殺未遂をします。
このヒロインの自殺理由を「理解できる」側の人と、「理解できない」側の人がいるのではないでしょうか。
私は「理解できる」側の人です。

自殺は罪だ。
そう断じる人もいます。

そんなに苦しかったのなら、一言相談してくれれば。
と悔いる人もいます。

もちろん、どうしようもなく追い詰められて死を選ぶ人も多くいらっしゃるでしょう。
あるいは、うつ病など心を病んで死を選んでしまった人もいるでしょう。

けれど、「死にたがり」な人の中には、そういった事情がない人も含まれているのではないかと思います。
つい数年前、ヨアソビさんの「夜に駆ける」という歌が流行りましたが、あの歌の原作小説は「タナトスの誘惑」。
太宰治の「人間失格」が現代でも名著として読み継がれているように。
死に焦がれる、あるいは生への執着が薄い人というのは一定数いるのではないかと私は感じています。
むしろ、思春期の頃なんてみんなそうだと私は思っていました。
最近、オンラインサロンなどでいろんな人の様子を見ていて、生きるのに貪欲で前向きな人たちがたくさんいることに衝撃を覚えているところです。
どうやら多くの人は、「自分が死ぬことなど考えたくない」らしい!
流行歌や小説の中では、生き辛そうな人たちがたくさん描かれているので、みんな多かれ少なかれに死に焦がれてるものだとばかり思っていたけれど、そういう人もいるけれど、そうではない人も多くいるのが世界のようです。

自殺を肯定するつもりは私も全くありません。
今は生きていて幸せだと感じています。
でも、毎日生きていて苦しかった時期がある、それも事実です。
それは、「死ぬほど辛いことがあるから」ではなく。
「何のために生きなければならないのか」がわからなかったから。
ぜいたくな悩みだと言われればその通りだと思います。
健康な身体があって。
衣食住に困らなくて。
何不自由ない。
もっと辛い生活をしている人たちが世の中には五万といる。
そんなことは、わかってる。
嫌というほど、わかってる。
でも、ただ生きてることに何の意味があるんだろう。
むしろ、生きているから何の役にも立たない自分が、誰かを害しているんじゃないだろうか。
自分がいない方が、いっそ世のためになるのでは?
そんな風に思ってしまうことがある人は、たぶん少なからずいます。
そんな人たちが命を繋いでいる理由も様々で。
生きるのはしんどいけれど、死ぬのも怖いからだったり。
万が一、生き残った方が面倒だと思っているからだったり。
そんな自分でも、生きて欲しいと願ってくれている人がいることを知っていたり。
ただ、死を選ぶほどのきっかけがなかったり。
純歌のように、続きが気になる小説があるからだったり。
逆に自分の作品を楽しみにしてくれている誰かがいるからだったり。
そんな細い細い蜘蛛の糸を必死で手繰るように。
薄い薄い氷の上を歩くように。
日々を過ごしている人もいる。
特に思春期からモラトリアムが明けるくらいまでの時期は、そんな不安定さを抱えている人は少なくないのではないのかなぁと感じています。

私自身、20代前半くらいまではかなり不安定な精神状態で生きてきました。
色々な人の支えがあり、出会いがあり、学びがあり、だいぶ落ち着いてきた今日この頃。
それでも、唐突に不安定になる時ってあるんですよね。

前向きになれない時。
エネルギーの強い人たちを見ているのがしんどくなった時。そういう時に、寄り添ってくれる「物語」があります。

『死にたがりの君に贈る物語』
秀逸なタイトルだなぁ、と読み終わって改めて感じました。
純歌の憧れた作家のミマサカリオリの物語を指しているとも言えるし。
廃校で生活したファンたちがミマサカに贈るために求めた物語とも言える。
そして、この本を手に取った読者自身に贈る物語でもある。
気持ちが落ちている時の心のチューニングにはぴったりでした。

自己啓発本や心理学の本も良いけれど。
その時の気持ちに合った歌や小説も心に良く効くお薬ですね。


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