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カラオケボックスの鏡の中

ある夜、山田さんは友人の佐藤さんと一緒にカラオケに行きました。カラオケボックスは駅から少し離れた場所にありましたが、山田さんは佐藤さんに誘われてついて行きました。カラオケボックスに着くと、受付の人が「今日はお客様が少ないので、どの部屋でもご自由にどうぞ」と言いました。山田さんと佐藤さんは奥の方にある部屋を選びました。部屋に入ると、壁に大きな鏡がありました。山田さんは鏡を見て「この鏡、なんか怖いね」と言いました。佐藤さんは「そんなことないよ。気のせいだよ」と言って、カラオケを始めました。


 しばらく歌っていると、山田さんは鏡に何か動くものが見えたような気がしました。鏡を見ると、自分と佐藤さんの姿が映っていましたが、その後ろにもう一人の女性が立っていました。女性は白いワンピースを着ていて、長い黒髪が顔を覆っていました。山田さんは驚いて「あっ!」と叫びました。佐藤さんは「どうしたの?」と聞きました。山田さんは「鏡に見えたんだけど、後ろに女の人がいるよ」と言いました。佐藤さんは「え?どこ?」と言って鏡を見ましたが、女性の姿はありませんでした。「嘘つき」と言って笑いました。
 山田さんは不安になりましたが、佐藤さんに付き合って歌い続けました。しかし、その後も何度も鏡に女性の姿が見えました。女性はだんだん近づいてきて、最後には山田さんの耳元で囁きました。「私と一緒に歌って」山田さんは恐怖で叫びましたが、佐藤さんは何も聞こえませんでした。山田さんは鏡を割ろうとしましたが、手がすり抜けてしまいました。鏡の中に吸い込まれてしまったのです。佐藤さんは山田さんがどこに行ったのか分からず、パニックになりました。


 受付の人が様子を見に来て、「どうしたんですか?」と聞きました。佐藤さんは「友達が消えたんです」と言いました。受付の人は「消えた?どういうことですか?」と言って部屋を見回しました。すると、鏡に三人の姿が映っていました。山田さんと佐藤さんと女性です。「あれ?」と言って近づきましたが、その瞬間、鏡から女性の手が伸びてきて受付の人を引きずり込みました。


 その後、カラオケボックスは閉店しました。警察が調べたところ、鏡の裏側に隠し部屋がありました。そこには白いワンピースを着た女性の遺体がありました。女性はカラオケボックスの従業員でしたが、ある日、鏡の裏側に閉じ込められて死んでしまったのです。その後、彼女の霊は鏡を通して人を呼び寄せては殺していたのです。山田さんと佐藤さんと受付の人の遺体も見つかりました。彼らは鏡の中で死んでいました。鏡には血の文字で「私と一緒に歌って」と書かれていました。

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