文字書きが作った同人文庫 備忘録 1冊目
今日に到るまでに4冊の同人誌(文庫本)を作成してきましたが、そろそろ備忘録を作ってもいい頃合いじゃないかなと思い記事を書きました。
どれも共通してこだわっているのは【書店に並んでいるような文庫本を目指す】という点。実物画像を交えて気をつけたポイントなどをつらつら書いていきます。
8割方自分用ですが、装丁や組版などについても記載しています。もし今から同人誌を作ってみようと思っている方がいらっしゃればこういった形もあるんだなぁくらいの軽い気持ちでご覧ください。
※本記事の前半は、本持ってない方からしたらなんのこっちゃ?な内容なので、装丁の話だけ読みたい方は飛ばしてくださいね。
今回はこちらの本の話を書きます。
原稿は2020年の秋頃から着手し、刊行は2021年の5月。原稿期間は長めでのんびり制作しているようにも見えますが、初めての同人誌作りで結構四苦八苦していました。
1.タイトルの話
元々自サイトで連載しており、再録+第二部で想定していたので、当時つけたタイトルそのままです。場所とふたりの関係性っていう、どんな話が書いてあるのかわかりやすいタイトルにしたような気がする。
2.中身の話
第一部は自サイトのあとがきに書いたので、第二部について少しだけ。
第二部では環境が変わったおかげか、少しずつ距離が近くなるふたり。ですが、まだまだくっつきそうにはありません。最後のオチはふたりらしいなぁ、と少し笑ってしまうような終わり方にしました。
おまけの話では某彼が登場したり、猫が猫の面倒を見たり……平和な話ばかりで個人的には結構気に入っています。
3.装丁の話
・カバー表紙
長年文字書きとしてあれそれはしてきましたが、デザインはど素人。本文よりもこちらの方が大変でした……泣
まずはカバー表紙。写真を使用する第一案とイラストを使用する第二案とがありなかなか悩みましたが、コインランドリーの匂いと温風をイメージしてクリーム色っぽい表紙にしたい。となると写真ではなくイラストがいいか、ということで第二案を採用。
普段絵は描かないのですがどうにか自分で形にしたい!という強い思いがあり、ちょうど良いタイミングで入手したばかりのiPadに加えてAppleペンシルとお絵かきソフト(Procreate)を購入。買切り型で機能もシンプルで私にはこちらで充分でした。※ただしiPadのスペックによってレイヤー数の上限値が変わる&なぜかcmykでしか書きせないため要注意です(もしかしたら私が知らないだけで両方解決されている問題かもしれません。自己責任でどうぞ)
レイヤーってなに?カラープロファイルってなに?と疑問符だらけの描きはじめでしたが、アプリの使い方を勉強して、毎日こつこつ描いては消して描いては消してを繰り返して一旦完成。
今になってバックアップみると、大量のファイルが出てきました。A案B案C案D案……なんどもリテイクしてました。頑張ってたなぁ。
このタイミングで試し刷りをしてみたところどうにも気に入らず、描き直しをして出来上がったのが今の表紙です。
色味が若干違うけれどまぁ誤差の範囲かな。
表紙に描かれている食べ物やら小道具たちは、掲載されているお話の中に登場するものばかりです。線はがたがただし拡大縮小繰り返して滲んでしまったものもあるし素人感満載の表紙だけれど、本当に長い時間かけて作ったので愛着があります。文字を入れる場所が存外小さくなってしまったのですが、そこを修正する気力はもうありませんでした(泣)
背景のうずまきはとっさに思いついて入れてみたのですが、全体が締まる感じになったような気がします。
・帯
帯は気合入れて作ってみました。
本は書店に並んでいるような見た目にしたいので帯もそれっぽくしたい&本書を知らない方にも手に取ってもらえるような文章にしたくって、本文の一部を引用しつつ作ってみました。なるべくポエミーにならないように気をつけたつもり。色味も良い感じに収まってくれて満足しています。
・裏表紙
裏表紙も文庫本っぽさを出す為に、概要文とバーコードを掲載。これは絶対のせると決めていました
右にあるロゴデザインは自分で考えました。サークル名にちなんで卵と雷。実在しそうにないサークル名ですが、ロゴデザインに落とし込むと実在しそうな気がしてくる不思議。
バーコードはISDN (国際標準同人誌番号) さんに依頼。無料のサービスです。これあるだけで市販の本っぽさが増すのでオススメです。
・背表紙
背表紙については”それっぽさ”を出せるようにひらがな+架空の番号(本書の彼の名前にちなんだ番号)とサークル名を載せてみました。色は表紙に合わせて暖かめの色に。
・表紙
そして表紙については中央の円形は星と線のブラシがあったので、カバー表紙に合わせて丸く繋げておこうくらいの軽い気持ちで作成。
檸檬色の表紙、落ち着いていてよかったです。
4.印刷所と入稿の話
カバー表紙、表紙、帯が標準でついているかつ試し刷りもOKで少部数印刷も可能なワンブックス さんに依頼しました。
実は、当時は10冊だけ印刷すれば足りるだろうと想定していたので、とにかく少部数対応してくれるところで探していました(この後結局2回ほど再販することになるとは知らずに……ありがたい話です……)
Twitterの公式アカウントをみると、色んな方が実際に本を作った内容の呟きをリツイートされていたり、用紙について熱心に語られていたりしたので、ここ良さそうだなあと思って申し込みしました。
初めての見積取り寄せの時も早々に返信くださったり、試し刷り到着〜本原稿提出の期間の短さに怯えて問い合わせした際も予約期限延長のご提案をくださったりと、担当の方が丁寧に返信してくださり心強かったです。
ただし、原稿の不備などの連絡がほとんどないことと(ただ、入稿直後の時点で印刷工程に問題ありそうな不備があればすぐに教えてくださいます。私の場合はオビ原稿にガイドラインも一緒に統合してしまっている点をご指摘いただき助かりました)、印刷工程の進捗度合いが全くわからない点については不安でした。
今回は試し刷りしていることもあり誤字以外の不備はなかったので問題ありませんでしたが、不安な方は他印刷所さんのサービスと比較してもいいかもしれません。
その後ですが、2回ほど再生産申し込みをしています。
ワンブックスさんでは再生産フォームから申し込みすると前回仕様を引用してくれるので楽でした。
原稿の差し替えはOKだったので、奥付に第◯版表記をする&他発行本の情報を記載するという憧れを叶えることができました。
自己満足の世界かもしれないですけど嬉しいです。手元に本書がある方は第何版なのかみてみてくださいね。
5.仕様の話
つるっとした表紙にしたかったので、クリアPP加工に合いそうな用紙を選択してみました。おそらく1番ベーシックなチョイスかと思います。
Twitterで色んな方が作ってる本を参考にさせていただき……本当に勉強になりました。
本文用紙については当初ワンブックスノベルを選択していたのですが、試用版を確認してみると思っていたより背表紙が薄かったため、メヌエットフォルテCの0.130mmに変更。結構厚めの紙でしっかりしてます。文字の裏写りはうっすら程度で綺麗なクリーム色。よく聞くクリームキンマリとかはこんな感じなのかな?
あと、試し刷りした際の仕様も載せておきます。
紙の厚みはmm単位で違うっていうのはわかっていたんですが、実物比較してびっくりしました。
用紙はほんとうに柔らかくて滑らかで、これぞ文庫の紙って感じ。
残念ながら本紙は2022年現在廃盤になっています。
6.本文レイアウト(組版)の話
本文原稿はPagesを使用して作成しました。ワードや縦式での作成が多いと聞いてはいたものの、諸々の事情で私はiOS標準搭載のpagesを使っています。
余白のゆとりもあってかなりみやすい形になっています。市販の文庫本の文字数数えてみたり、フォロワーさんにどんな設定がいいか教えていただいたりして設定した記憶があります(教えてくださったフォロワー様方、本当にありがとうございました)
7.まとめ
はじめての本作りでしたが、本当に良い経験になりました。
今までは、書いた話をネット上で公開することしか知らなかったのですが、自分が書いた話だけで構成された本がこうして現実世界に"ある"のがミラクルのように思えて、手元に実物が届いた時には信じられませんでした。が、次第に実感が湧き、ついには我が子のように可愛く思えるようになりました。
大変なことの方が多かったですが、なんだかんだ楽しく作成できて良かった。
お手に取ってくださったみなさま、ありがとうございました。