ゴジラ-1.0を観た

今更ゴジラ-1.0を観ました。
本当に今更ですがネタバレがあります。ご注意ください。
そして同監督の作品「アルキメデスの大戦」を引き合いに出すこと、あまり絶賛ではないこと
なにより、ミリタリーにもゴジラにもまったく詳しくありませんので、見当違いの感想になることをご了承ください。

目次


どうして今更観たのか

最初に観たゴジラ映画がシン・ゴジラで、めちゃくちゃハマった。
その後はファイナルウォーズとキングオブモンスターズ(KOM)しか観ていない。どっちも好き。
なので、特にゴジラだから観たいというのがなくて、タイムライン上で信頼できる人々のレビューを読んで落ち着いたら観ようかな、くらいの気持ちでいたら
結局今更になりました。
アカデミー賞とかはまったく関係ない。

ただ、封切り以来誰のどんなレビューを読んでも、その人がどんな視点で観ていても、賛否両論どちらだとしても、同じ事が書いてある。
映像はいいけど話がクソ。
その間に観たい映画は山積み、映画祭もあったし個人的にも忙しくて後回しになりました。

配信でもいいかな、とも思ったけど、これは映画館で観ておいて正解だった。
いい意味でも悪い意味でも。

映像は本当にいい


とにかくこれはよほど詳しい人でない限り、口を揃えて言われていたし、本当に大画面で観て損しないクォリティの映像だった。
そこまでいい音響でなくてもだいたいの音は聴こえるし、迫力もあるし。
音楽(特にゴジラ関係)のことは分からないので何も思わなかったけど、最終決戦の際、戦闘機で飛んでるシーンでのBGMがアルキメデスの大戦の要所々々で使われていた曲に似てて(同じ曲?)、緊迫感がありつつ感情豊かなシーンであの音使うのが監督の性癖なのかな…

銀座で暴れるゴジラのシーンは圧巻だったし、熱線を吐き出す予備動作の青白く発光してばきばきトゲ?が生えるのは格好良かった。
海のシーンも影と光がパキッとしてて、空の色も派手すぎなくて、とにかくゴジラが映える。
ゴジラが砕けて光が漏れながら海に沈んでいくところも画としての美しさがあった。
ミリタリー系のことはとんと分からないので、船も飛行機も格好良かったです!

それ以外は本当にアレだった

本当にアレすぎてびっくりしちゃった。
こんなにアンバランスなまま映像とストーリーを切り離して鑑賞しなきゃいけない映画があるんだ…。
音響込みの映像ですげー!って思いながら、ストーリーにツッコミ、目立つ粗に目を瞑り、理解が追いつかないまま終わってしまう。
後からレビュー見たら泣けたとかこれぞゴジラとあって、ゴジラ知らんから泣けもしない…と愕然とした。

なので、以下は謎だったところとかマイナスなところとかしか出てきません。

そもそもあのゴジラってなに?

冒頭、島の住人がゴジラって呼んでるという話があったけど、じゃあ島の住人は今までどうやってゴジラと共存してきたんだろう?
攻撃しなかったらたまに出てきてこんにちは〜でやり過ごせてたの?
でもいくら整備とはいえ、島の外から人間がばんばん入ってきて戦闘機も飛んできてたら敷島が来る前に騒がしくて起きてきそう…。
噛みついてたけど捕食はしてない、でも噛みつかれたら人間なんて千切れそう。踏み潰したら酷いことになりそう。
なのに橘の回収してきた遺体は結構人の形してた…しかし一晩であの怪我であの人数を?

ゴジラの行動原理とか生態がまず分からなくて、次に橘と敷島だけ生き残った理由が分からない。
敷島は気絶してたから死んだと判断して攻撃しなかったのかもしれないけど、橘は?
もしかして、立ち向かおうとしたけど怖くて死んだふりをしたのか?でもそんなことする人が、敷島に他のメンバーの写真をあんなふうに押し付けるか?

途中で流れてた核実験?の影響で進化した(してしまった)のは理解出来たんだけど、それを恨むなら米国とかに行ってくれ!
銀座に来て暴れた後、多分海に帰ったんだろうけどそこも特に描かれてないし…。
シン・ゴジラだと体を冷やすためじゃないか?とか推測したりしてたけど、そういうのもなかったので一瞬「ゴジラどこ行った?」と引っかかってしまった。

ゴジラという生物の生態について特に深く研究しようとしていなかったのは、時間がないのもあるけど
・あの時代、生物に関する学問は蔑ろにされていたため専門家を見つけられなかった(そんなことある?)
・集めたメンバーが海軍(船乗り)中心だったため生物学に通ずるメンバーがいなかった(海洋系の生物学者くらいいそうだけど)
・あてはあったが協力を得られなかった(有力候補)
みたいな理由があるんだろうか。倒すなら武器より先にそっちでは?

造形は本当にいいのにね、ゴジラ!

敷島、何する者ぞ

彼は戦争や特攻に対してではなく、ゴジラに対しての大きな心の傷が出来ていて、それを戦争と重ねて苦しんでいるのかな、と思いながら観ていた。
ただ、それにしても典子に関しての感情の機微について表現がなさすぎるだろう…
疑似家族としても、典子は母親に頼まれたとはいえ明子の面倒を見たり来客時にもてなしたりと、当時の妻の役割を担っていたし、少なからず敷島に家族としてではなく恋愛感情のようなものを抱いているような描写(このまま居座ってたら敷島にお嫁さんこなくなっちゃうし…みたいなシーン)もあったけど
敷島は感謝こそすれど二人を家族としてどう思っているのかすら不明だし、明子の目の前で自分は父親じゃないとか言い出すし(みんな怒ってたけどキレ返してるし)…
なのに船長から「嫁にもらってやれば良かっただろ」と胸ぐら掴まれたら「そうしてやりたかった」と突然言い出すし…。そんな風に見えなかったぞ?
お嫁さん云々のときちょっと微妙な表情はしたけど!

彼のゴジラとゴジラに対するPTSDに立ち向かう話なのかな、それで言動がぐちゃぐちゃしてきたりするのかな、と自分を納得させながら観てたけど
やっぱり典子と明子に対する敷島の感情がまったく分からなくて厳しかった。

良くて良くない仲間たち

主人公であるはずの敷島より、周りのキャラがストーリーを都合良く回しすぎている。

ずばずば言う船長がどんどん話を進める。
水島が茶化すように質問し、説明を引き出させる。
野田が補足しつつ敷島に話を回す。
しかも全部説明台詞で。

あれだけ人を集めて納得させた海神作戦の演説後に、そこらの居酒屋で馴染みのメンバー集めて飲んで
上手くいくのか?
わかんないよ!
みたいなのをぐだぐだやってるのは非常にヤバかった。そのやり取りをさっきしろ!みんなの前で!そしたらもっと意見が出て精度の高い作戦練れただろ!
野田さん一人しか発案者いないのかよ!

ちょうど良くコメディリリーフだったり泣かせるキャラをさせられる水島。
山田裕貴の顔面と演技力だから愛嬌がある。素晴らしい。
でも、水島はどうやって援軍集めたの?ツテでもあったの?そんな描写あった?

あと、みんなドーラン濃すぎない…?
いくら日焼けしてるとはいえ、ドーラン濃すぎて違和感あった。

そんな作戦で大丈夫か?


海神作戦、謎だらけで…。
船でゴジラにボンベをぐるっと巻きつけるのはいいとして、基本的にゴジラは海だとすいすい泳いでるのに
巻きつけた時、立って…る?古式泳法?
1500mの深海、あの場所に引きずり込むという計画では?
しかもいくら震電で気を引いてるとはいえ、さすがにぐるっと周りを船が通るのは無視せず攻撃するでしょ…
ぐるっと回った船も衝突を計算してなかったのか…事故だよあれじゃ…
ゴジラがもがいて波が…!とかじゃなかったような???

水島が援軍を引き連れてきた後も謎で、(援軍も謎だけど)
クレーンが折れてるのにそのまま使ってる(折れてるならゴジラに引っ張られて逆に船の負担になりそう)
船同士をロープで繋ぐ間、結構な時間がかかりそうなのにゴジラはどうしてたのか?(じっとして回復?)
そもそもあの援軍の人たちは誰?水島とどういう関係?あの作戦自体、どこまでどう広がってたのかが謎。

ゴジラの縄張り云々でゴジラ本人の音声流してたけど、あれって誰かが録音してたの…?
中継してたテレビクルーは機材もろとも…って感じだったけど音声だけは何かしらの方法で残ってたのか?

説明台詞は許さない

山崎監督の作品、とにかく説明台詞が多すぎる。
だから苦手なのでほとんど観ても合わなかった。金ローで流し見して映像観てるくらいが許容範囲。
けれど、一作だけものすごくハマったのが
アルキメデスの大戦
原作があるからというだけではなくて、世界観とキャラが説明台詞でも違和感がない。
理屈っぽい頭脳明晰な主人公と、真面目でお硬いが純粋な監視役の軍人というバディに、周りも何かあれば陥れてやろうという軍人だらけ。
昭和初期の大戦に向けて躍起になっている時代。
新しい軍艦を作るのを阻止するために、数学を駆使して不正を暴こうというストーリー。
説明台詞でも何の違和感もない。
ヒロインや一般人もそこそこ説明台詞多めなんだけど、出てくる頃にはすっかり説明台詞で場が回るのに慣れてるので違和感が薄れている。
あんまりいいことではない。

けれど、ゴジマイに関してはやっぱり説明台詞との相性が最悪。
野田に関しては学者なので説明台詞が多くてもそういう性格、と割り切れるけど
その他は基本的に一般人だし、隣のおばちゃんやらモブやらまで状況だの心境だのペラペラ口にする。
敷島はPTSDを抱えているので理路整然と説明台詞を吐きながらパニックになっているの、普通にそういう症状なのかな、と思ってた。

船長が船の説明するのとか、アナウンサーがゴジラの状況するのとか、野田が作戦を発表するのは普通なんだけど。
説明台詞が多すぎてどこが悪いんだと言われると
もう全部です
としか言えません…いちいち覚えていられなかった…。

ただ、ここまで説明台詞まみれなのに、キャラに関しての説明がほとんどない。

ゴジラも生態が謎、というのはわかってるけど、作戦も穴だらけだし、放射線がと言う割にかなり被害を受けそうな場所にいてもみんなピンピンしている。
このままではゴジラの上陸や熱線以外にも間接的な被害が出る、というような説明は特になかった。
わざわざ計測してるけどあれで大丈夫なのか?そもそもあの巨大生物はなんだ?みたいなざわざわがあってもいいような…
説明台詞、そういう時に使うのもわざとらしいから微妙だけど。

典子の両親の話も突然典子が話しだすだけで、数秒逃げる際の映像挟むなり、明子を連れてる時から生きることにもっと執着させてたりしていれば
典子は生きることに価値を感じているんだな
と分かるのに、パニックになってる状況でパッと言われると、なだめるために咄嗟についた嘘にも聞こえてもったいない。

船長も、あの風格と器量の良さと口の達者さで、ただ者ではなさそうなのに過去が一切不明。
戦争や国への不満が大きいところを見て、戦時中はそれなりの地位で理不尽なやり方に反抗的だったのかな、と推測したけれど
逆に最前線で仲間を失ってきたのかもしれないし、見本になる人がいてあの性格になったのかもしれない。
しかしやたらと国がお上がと不満を言うキャラなので、そのあたりのことをもう少し説明するなり小道具で示しても良かった気がする。

バランスが悪いというか、雑というか。
キャラクターに役割が出来すぎていて、じゃあなんでその人はその台詞を言うのか?が分からない。
そのくせ説明になることをガンガン口にする。
人間パートが雑。
だって説明台詞だもん。

ラストシーン、なんだかなぁ

実は典子は生きてました!
でかなり引いた。
一応粗はあれど、作戦を完遂してなんとかなって気分もスッキリしたのに、なんじゃそりゃ!
あの電報のことはすっかり忘れていたので、余計にびっくり。
というか電報、突然すぎて誰から?とか考えてなかった。
明子を放りだしてやたら綺麗な個室で典子にすがりつく敷島…明子を優先してやれよ!

首のアザ?がゴジラの細胞で、それがあったから典子は生き返って〜
という考察をいくつか目にしたんだけど
あの爆発と爆風ならほぼ形もないのでは?そこからどうして再生したんだろうか…?
他の人たちはどうなってるのか?細胞がくっついたってどういうこと?
生きる意思が強くて、そこにゴジラの細胞が…ということで再生したんだ、ということで一応飲み込めたけど、それって典子にとって安全なのか…?(不穏)

海神作戦も一応、被害は出さないが目標だったから、みんな無事で良かったねとは思ったけど
結局やってることはブラックなんだよな…この精神がまだあるからブラック企業も老害もいなくならないんだよな…
とか繋げてしまって結構もやもやした。

沈んでいくゴジラがボコボコしてるのは、先代のゴジラ映画たちの時代に繋げているんだろうな〜という捉え方をしたので納得。
でも頭を吹き飛ばした後のぼろぼろっと崩れていったのは何だったんだろう…?


ラストまで観て一瞬スッキリしたのに
終わった後に疑問が次々湧き出てくる。
でも映像は本当に良かったので、モノクロ版も観てみたい。
とはいえ、あのストーリーをもう一度観るとなると悩む。
全てが嫌いなわけじゃないけど、かといっていい点だけでは好きにはなれない。
ここまではっきり良いと良くないが混雑している映画があってもいいんだな、と思わされました。

おわり。

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