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期待とお悩み 科学技術コミュニケーションと新型コロナワクチン -- 試されすぎる大地から・2021春(4)

〜期待とお悩み〜

新型コロナウイルスのワクチンのことです。
供給が遅くてじれったいとか、予約の混乱とか色々あるんですが、
今回のワクチンがどんなものか、ということがなかなか知られていないらしいことについてです。

今日本で使われているファイザー社製、
もうすぐ承認されそうなモデルナ社製はどちらも「mRNAワクチン」という種類のワクチンです。

仕組みは、生物が苦手で「微生物学」のせいで留年した僕にはちょっと難しいですが、
生物学系の博士(本物)に聞いたら「生物にどっぷり浸かってしまうと、当たり前すぎてどこがわからないのかわからない」
とのことで、つまり魔法じゃなくて生物学の基礎知識でわかるシンプルな仕組みみたいです。

有効率が95%という、従来の常識を打ち破る高さ。まさに「最終兵器」です。

従来はというと、メジャーなのは「不活化ワクチン」でした。毎年争奪戦が起きるインフルエンザのワクチンもこれです。有効率は50%ぐらいだと言われています。
それでもかかった時の症状を軽くするなど、存分にメリットをもたらしてくるのですが、コロナワクチンの有効率95%は、すごい。

ワクチンによってウイルスに感染しにくくなり、
感染しても症状が無症状or軽く済むようになり、
感染してもウイルス量が少なく済んで他人にうつしにくくなります。

全員が打っていなくても、ある程度の割合に接種が進めば、感染者数が減っていきます。「集団免疫」という考え方です。

実際、スピード接種を進めたイスラエルでは今の所接種率6割ぐらいですが、既に感染者数が激減しています。


…… そんなこと、知らなくても良いっちゃ良いのですが、
「接種しても半分ぐらいしか防げない」インフルエンザワクチンと同じに思われるのはモッタイナイと思うんです。

このスゴさ、仕組み、あるいは注意点などをどうやって伝えるか、は今の科学技術コミュニケーションの最新の課題だと思っています。

ことは単純でなく、スゴさを主張するあまりファイザー社のステマ的になっちゃうとアレだし、
一人でも多くの人に接種してもらおうという誘導になるのもアレだし。
(公衆衛生上の緊急事態なのでぜひ接種はしてほしいのですが)

あとは、少し違う仕組みを使っていて、最近不評な🇬🇧アストラゼネカ製ワクチンとか、
西側諸国には敬遠されがちな🇨🇳製・🇷🇺製ワクチンを科学的にはどう語るかとか(僕はそれぞれ一長一短あると思う)、
🇯🇵の研究が🇺🇸🇩🇪🇬🇧🇨🇳🇷🇺に追いつかず供給を外国に依存せざるを得なかった問題(ゆえに接種も出遅れた)、とか
そういうことにも考えを巡らせています。


実は、新聞などには良い解説記事が出ています。

でも、◯◯新聞に1回載るだけじゃ、ましてや科学面の記事を読む人はそう多くないだろうし。

あとは、科学技術コミュニケーションじゃないけど現実問題として、
いつ頃自分のとこに回ってくるのかとか、
自治体の接種会場とかかりつけ医のどっちが空いているかとか、
電話混んでるからって役所やクリニックに突撃するのはやめて!とか、ドタキャンしないで!とか、
キャンセル枠を柔軟に使う上での広報とか(いきなり町長さんに回す是非はともかく)。

広報担当者でもないくせに勝手に問題意識を持っています。

◆ワクチンの仕組み オススメ解説

1. 🇬🇧BBCの動画(日本語字幕 約2分半)

「キャラクターを選択せよ!」
それぞれの長所と短所が一目瞭然で素晴らしいです。
※ちなみに、値段に関してはマジで謎です。
少し前にニュースになった、ファイザー者のワクチン売り上げ額を供給量で割ると、1本1万円とかそんな高い値段じゃないです。もしかしたら先進国には高く売ってるのかも。

2. (科学の扉)ワクチン、短期開発のわけ ウイルスのmRNA注射、変異にも即応可

仕組みと、従来方との違いが図解されています。

◆「集団免疫」について

多くの人がワクチンを手に入れれば、例えば
今まで「AさんとBさんの2人が感染すると、CさんDさんEさん3人がどちらかからうつされる」状態(Rt=1.5)だったとすれば、

接種率3分の1で「2人から、CさんDさんEさんのうち2人にうつる」(Rt=1.0)になれば感染者数はほぼ一定、つまり拡大が止まり、

そこから先は感染者数は減少に転じ、

接種率3分の2で「2人の感染者から1人の割合でうつる」(Rt=0.5)にもなれば感染者はどんどん減っていきます。

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