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今さらながら「マル秘展」の感想を語る

こんにちは!スペースマーケットデザイン部の新井です。
みなさん、おうち時間はいかがお過ごしでしょうか?私は出社・退社のタイミングがないとずっと仕事をしてしまうことが判明したので、最近息抜きをするために突然DTMを始めました。最近のDAWってすごいんですね...。

つらい時を支えるのはいつも未来への希望と、そして楽しかった思い出ということで今回は以前行った「マル秘展」の感想を書きます。もう2〜3ヶ月くらい経過していますが、わりと鮮明に覚えています。それくらい印象深い展示でした。

※現在休館中です。マル秘展は会期を延長して開催予定とのことです。

どんな内容なのか?

「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」という題のもと、デザインのラフやスケッチ、模型などに焦点を当てた企画展です。日常生活でデザインの完成品は目にする機会が多くありますが、過程はなかなか見ることができません。日本有数のデザイナーが手がけてきた作品の完成までの過程を垣間見ることのできる貴重な機会です。

入り口のUXから

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大好きな都営大江戸線の六本木駅から出て会場に向かいます。案内表示が秀逸でした。絶対迷わないだろうなという文言と看板。

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余談ですが、美術館に来てこういう表示を目にすると以前拝聴した色部義昭さんの講演を思い出します。施設内における「目印」や「矢印」について。視認性良く、アイコンや方向を示す線が空間に馴染んだ 迷わないデザイン。

色部さんの研究所は東京都現代美術館や草間彌生美術館などを手がけられています。講演では、実際の来場者の身長や年齢などを想定した上でデザインの位置や大きさなどを考えている、というお話をされていました。
このようなサインもそうですが、日々暮らしていて「違和感なく溶け込み、かつ分かりやすい」表示がいかに考えられた末にできているものかデザイナーになってから思い知りました。
ちなみに開催会場の21_21 DESIGN SIGHT は安藤忠雄さんの作品です。カッコイイ。

会場へ入る

まず入り口で欲しかった本を発見してしまい、帰りに購入することを心に決めます。

入場してすぐ、まず目に入るのは一面に並べられたポスターやDMハガキのデザインでした。

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デザインギャラリー歴代の作品がずらっと並べられており、歴史を物語りながらもどれもまったく古さというものを感じさせないビジュアルです。横には日本デザインコミッティーのメンバー年表もあり、1953年からの移り変わりを知ることができました。

映像で見る原研哉

続いて、3名のデザイナーによる作業風景が壁3面に映し出される映像ゾーンに入ります。

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この大きな壁いっぱいに原研哉さんや山中俊治さんが黙々と作業する様子がひたすら流れているのですが、鉛筆が紙を引っ掻く音に耳を澄ませてじーっと見ていると、原画が創出される瞬間に立ち会えているような錯覚を味わうことができました。

貴重な「過程」の数々

映像を見終わった後は、先の「原画」の展示スペースへ。デザイナーごとにまとめられているのですが、これがとにかくものすごい量でした。一つひとつの原画を見て、メモを端から端まで読んで解析していたら本当に何時間もいられそうなほど。

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デザイナーごとに(当たり前ですが)書く紙のサイズも書き方も大きさも異なるロゴのラフも興味深かったですし、ロゴタイプのほんの微妙な文字の形・傾きの調整の過程からは美しさへのこだわりを感じました。

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原研哉さんのオリンピックのラフなど、この展示がなかったら一生見られなかったのでは。

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建築の模型や検討メモの内容も面白かったです。隈研吾さんのメモ(文章)の量、たぶん一番多かったです。

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田川さんのエリアでは以前刷新で話題になった、メルカリのロゴやフォントについての資料も見ることができました。この絶妙な丸みのバランスが「かわいい」を感じる理由のひとつですよね。

感想。デザインってなんだ

「やっぱりデザインの目的は、課題解決にある」

というのが一番の感想です。松永真さんがスコッティのコンペで「花のイメージと既存のロゴを使う」条件を無視して勝ったのが一番象徴的なエピソードでした。

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例えば企業や製品のロゴを作る際、デザインが達成すべき項目のひとつとして挙げられるのは「いかにその企業・製品が使う人に与えたい印象を表現できるか」だと思います。この課題は顕在的なものである場合もあれば、スコッティの例のように潜在的な場合もあります。デザイナーはその課題を発見するために現状を把握した上で情報を集め、咀嚼し、それに対する最適解を視覚として認識できる形に落とし込まなくてはいけません。つまりデザイナーとは、問いの発見から解の体現まですべてを行う必要がある職業だと私は解釈しています。

私はWebサービスのUIデザインに携わっているのでロゴやモノのデザインとは色々な点で異なりますが、ボタンの位置や文言ひとつでも思い悩むことが多々あります。その時自分の出せる最適解の根拠や参考となるのは、これまで見てきたWebサービスやアプリで見た良い例やこれまでの経験、時には立ち返ってデザイン原則だったりします。このように悩んで試して勉強してを日々繰り返していくことで少しずつスキルが身についてくるとは思うのですが、今回この展示で目にした原画の数々にはそれが到底及ばぬ発想力と、それに相応するほどの努力と推敲を強く感じずにはいられませんでした。これにはもう、途方もない尊敬と憧れを抱きます。

「デザイナーってかっこいいな」と、心の底から思いました。

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ということで、非常に感動した思い出でした。
日本・世界有数のデザイナーの方々の思考の片鱗ともいえる貴重な原画の数々を見られたことを嬉しく思います。こんな風に思い出すだけで気持ちを奮い立たせられるような、素敵な展示をありがとうございました。

それでは。ここまで読んでいただきありがとうございました!


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