見出し画像

18年前に発売した伝説の鬱ゲーを令和の今になってガチレビューしてみた

注意: この記事はPS2用ゲーム『ドラッグオンドラグーン』のネタバレを含みます。


突然ですが”鬱ゲー”と呼ばれるゲームジャンルをご存じでしょうか。

簡単に言うと、プレイすると憂鬱な気分になってしまうゲームです。

各ゲームごとに鬱になる理由は様々あれど、主にストーリーが暗いというのが主な理由でしょう。

今回は今から18年前に発売され、鬱ゲーとして話題となった『ドラッグオンドラグーン』を完全クリアまでプレイしてきたのでそのレビューをしていきたいと思います。


①『ドラッグオンドラグーン』とは?

『ドラッグオンドラグーン』(通称:DoD)は2003年9月11日にスクエアエニックスから発売されたPS2用ゲームです。

スクエアエニックスと言えば『FF』シリーズなどでも有名なゲームメーカーですね。

前述の通り、このゲームは”鬱ゲー”として一部のコアな人気を博したゲームでしたが、最近ではゲーム内のエンディングの一部が2017年に発売されたPS4用ゲーム『ニーア オートマタ』のストーリーに繋がっているでは!?という考察がなされ再注目されているそうです。

ゲームディレクターはヨコオタロウ氏。

他と競合しない独特な世界観を描くことで有名な方だそうで、ファンやメディアからは”ヨコオワールド”と呼ばれています。


②ストーリー解説

まずは簡単にこのゲームのストーリーを解説します。

昔、「帝国軍」「連合軍」の間で世界を揺るがす大戦争が起こった。

その原因は「女神フリアエ」の存在である。

女神は世界のバランスを保つ存在とされており、それを守ろうとする「連合軍」。それを奪い、世界の終末を目論む「帝国軍」の戦いを描くというのが大枠のストーリになります。

物語の主人公はカイム。連合軍に属しており、女神フリアエの実の兄でもあります。

カイムの両親は18歳の頃にドラゴンに殺されており、フリアエだけが唯一の肉親となっています。

そのためドラゴンという存在を強く恨んでいますが、帝国軍との闘いに勝つため捕らわれていたレッドドラゴンと契約を結ぶこととなります。

契約の代償に”声”を失ったが、カイムは強大な力を得てレッドドラゴンとともに帝国軍との戦火へと飛び込んでいくのであった。 

(さらに詳細なストーリはぜひWikipediaを参照して下さい)


③最後まで抗っても絶望しかないエンディング

このゲームはマルチエンディングシステムを採用しており、ゲームの進行によって計5つのエンディングを楽しむことが出来ます。

おそらくこれがこのゲームが”鬱ゲー”と呼ばれる所以になっています。

通常、マルチエンディングと言えばBestエンド、Normalエンド、Badエンドのように、最初はBadやNormalエンドにしかならないが、周回プレイをすることでBestエンドを目指すというのが主流かと思います。

ところがこの『ドラッグオンドラグーン』は辿り着く全てのエンディングがBadエンドになります。

うち4つのエンディングは通常通り進めていれば辿り着くことが出来るのですが、最後のエンディングに関しては”4つのエンディングを全て見る””ステージで集められる武器を全て入手する”の2つを達成している必要があり、かなりの高難易度となっています。

4つが救いのないエンディングだったから、最後のエンディングできっとハッピーエンドになるはずだ!と信じてプレイを続けた結果、最後に辿り着くエンディングが実はこのゲームで最悪のエンディングになっているという当時の少年たちを絶望させる結果となりました。

僕はこのゲームがBadエンドにしかならないと知った上でゲームを始めたので精神的なダメージはそこまで無かったのですが、ネットの情報網が今より少なかった時代にプレイしていた人たちには相当なダメージだったかと思います。

また各エンディング前のラスボスがそれぞれかなりの強敵になっており、クリアまでに相当回数のリトライを強いられます。

昔のゲームによくありがちな鬼畜難易度は僕は好きです。ただそれを乗り越えた先にあるのが絶望のエンディングというのもなかなかに精神を蝕みますね。


④地上戦があまりにもクソ過ぎた・・・

ここからはこのゲームのアクション要素に関してお話していきます。

もしこのゲームの大ファンの方がこの記事を読んでいらっしゃる場合、大変申し訳無いんですが、このゲームのアクション要素はクソでした。

このゲームのアクションパートは主に「地上戦」と「空中戦」に分かれます。

まず地上戦に関してですが、『戦国無双』シリーズのようないわゆる”無双ゲー”を意識した作りになっています。

数百体の敵をバッサバッサと切り倒していく爽快アクションが無双ゲーの楽しい所ではありますが、このゲームにはその爽快感がまるでありません。

ゲーム開始時点で主人公が出来る基本攻撃は剣を使っての3連斬りです。

そこから武器のレベルを上げるにつれて最大10連斬りを行う事が出来るのですが、残念ながら10連斬りを決めることはほぼ不可能になっています。

というのもこのゲーム、対象となる敵に向かってのロックオンが出来ません。

連続斬りをすることによって敵に向かって押し出すようなアクションになるのですが、敵にロックオンしないのでその間、右スティックを敵の動く方向へ常に正確に傾けている必要があります。

運よくコンボが繋がったとしても、敵によっては6~7連目くらいにほぼ確実にガード→カウンターを入れてきます。つまり、そもそも10連斬りを入れることが不可能なんですよね。

ですが、このゲームにはほぼ安定してどんな敵でも倒せる行動があります。それがフィニッシュブローです。

フィニッシュブローとは通常攻撃(□ボタン)で攻撃中、一定のタイミングで△ボタンを押すと周りの敵に一気にダメージを入れることが出来る大技になります。

具体的なコマンドとしては□→△→□→△・・・・の繰り返しです

これは特に回数制限が無く、タイミングさえ合えば永遠に出し続けることが出来る技になっています。

これでどんな敵もフィニッシュブロー→敵ダウン→ダウン中にフィニッシュブロー→敵ダウン→ダウン中にフィニッシュブロー・・・・・・・・とほぼ無限コンボに近い攻撃を入れることが出来ます。

ですが、裏を返すとどんなステージ、どんな敵が来ても上記の行動の繰り返しになるのですぐに飽きてきます。

さらに、ステージによってはクリアに30分くらい要するステージもあり、30分同じ攻撃を繰り返すのは地獄でしかないです。

筆者はそのステージを9割くらいクリアしたところでゲームオーバーになり、また1からリトライするハメになって発狂しかけました。

今日も早く帰ってゲームの続きがしたい!ではなく、今日も作業しなきゃ・・・って気分になります。

また前述の通り、このゲームには剣、槍、斧、ハンマーなどそれぞれ性能の違う60種類を超える武様々な武器を使用することが出来ます。

ステージや敵、状況に合わせてどの武器が適切かを考えるのもアクションゲームの醍醐味ですが、ぶっちゃけどのステージも初期からある「カイムの剣」1本でいいです。

筆者は最終的に「焔の簧」という武器をレベルMAXまで育てましたが、1つ目のエンディングを見るまではカイムの剣しか使用していません。


⑤まだギリギリ楽しめる空中戦

空中戦は良いとは言えませんが、地上戦に比べるとまだ楽しかったです。

レッドドラゴンを操作し、敵の飛行艇や敵を炎のブレスやホーミング弾、大魔法技でひたすら倒していきます。

ブレスやホーミング弾で敵にダメージを与えると少しずつMPのようなものが溜まっていき、一定数に達すると大魔法技を撃つことが出来ます。

大量の敵を大魔法技で一掃した時は結構気持ち良いです。

しかし溜まったら適当に撃てばいいというわけではなく、現れる敵の量や敵の種類によって撃つタイミングを見極める必要があったりなど、戦略性は幾分感じることが出来ました。

ただ、これも仕様なのかどうか分かりませんが、大魔法技で敵を一掃した時のSEがとんでもなく爆音になるのだけはどうにかしてほしかったです。


⑥人生初の3D酔いを経験した

地上戦、空中戦共通して筆者が気に入らなかったのはカメラ操作です。

筆者はこれのせいで初めてゲームで酔いました。

このゲーム、プレイヤーに対してカメラの回り込みが出来ないんです。

例えば地上戦で大量の敵に周りを囲まれてしまったとします。

当然その場合、敵に背を向けて逃げる必要があるのですが、自分の背後の敵を確認したいのにカメラが90度くらいしか動かないんです。つまり後ろから追いかけてきている敵の状況を把握することが出来ません。

「それはキャラの視線を意識してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、そのまま180度振り返ってもカメラは背後に回りません。

右スティックでカメラを動かせるので背後にカメラを回そうとスティックを操作するのですが、ちょっと動いてはデフォルトの位置にカメラが戻ります。結果、画面がガックガクになってめちゃくちゃ酔います。

プレイしていて分かったのは、ガードを張ることでカメラがようやく後ろに回ってくれる(こともある)ということでした。

ただガードには若干のロックオン機能があり、関係ない敵が近くにいるとそっちにカメラが行くので向きたい方向に向けずかなりイライラします。


⑦攻略本無しではほぼ不可能に近い武器集め

前述の通り、このゲームを完全クリアするにはステージ中やフリーミッションと呼ばれるモードをクリアすることで得られる武器を全て入手する必要があります。

しかし、ただ殆どの武器はステージをクリアするだけでは入手することは出来ず、一定の条件を満たしてクリアする必要があります。その条件とやらを一部紹介します。

「一部のエリアにいる敵を殲滅すると隠し宝箱が出現」

「大魔法技を使わず3分以内にクリア」

「敵を1234体倒すと隠し宝箱が出現」

条件としてはそこまで珍しいものではないかもしれません。

ですがこれらの条件、全てノーヒントです。どのステージでどの条件が適用されているのかさえゲーム内では一切分かりません。

筆者は攻略サイトを参考に全武器を収集しましたが、発売当時、そこまで情報が普及していなかった時代はどうやって探していたんでしょうか。考えるだけで鳥肌が立ちます。

そして筆者が一番ヤバいと思った入手条件がこちらです。

「ステージ開始から25分経過すると隠し宝箱が出現」

武器やプレイヤーレベルにも多少左右されますが、この条件を要するステージは普通にプレイすると10分~15分あればクリアできます。

つまりクリア直前でプレイを止めて残り10分ほど放置する必要があるということです。

なんですかこれ。『たけしの挑戦状』ですか?

もうお腹いっぱいかもしれませんが、極めつけにもう1つ。

実はこのゲーム、オプションからゲームの難易度をEASYかNORMALで設定することが出来ます。どちらでも試してみましたが、EASYではかなり難易度を下げることが出来ます。

アクションゲームが苦手な方でも楽しめる要素としてこれは非常に素晴らしいシステムだと思います。

ですが、これによってとんでもない事が起こります。

先ほどからしれっと書いてますが、武器のほとんどは”隠し宝箱”から入手することになります。

しかしこの宝箱、EASYとNORMALで中身が変わることがあります。

NORMALだと当然、武器が入っていますが、EASYだとただの回復アイテムになることがあります。当然、ゲーム内でこの仕様は知らされません。

筆者はこれを知らず、先ほどの25分待つステージを4回やり直してます。

NORMALでしか達成できないという条件に関しては良いという意見もあると思いますが、この仕様をどこにも表記しないというのは果たしてどうなんでしょうか。


⑧結局このゲームは鬱ゲーなのか

長々とアクション部分に対する文句を述べてきてこんな事言うのも何ですが、ストーリーを楽しむことをメインにプレイするとそこまで悪くないゲームだと思います。

特に最初に到達するであろうAエンドでは主人公の憎しみの対象であったレッドドラゴンが自らの命を犠牲にして世界を救うというエンドなのですが、これまで冷酷だったカイムが涙を流し、レッドドラゴンが自分の名を生涯で初めてカイムに伝え消えていくシーンはなかなかに感動出来ます。

最後の「さらばだ馬鹿者」っていうセリフはシンプルながらもなかなかグッとくるものがありましたね。

実際にプレイしてみてこのゲームが鬱ゲーと呼ばれる理由が分かった気がします。

少なくともバッドエンドしか用意されてないから鬱ゲーというわけではないです。

PS2時代特有の中途半端にリアルなイベントムービー。オプションやタイトル画面にはBGMが一切無い。全体的に画面が赤黒い。ストーリーに笑いが一切無い。ムードメーカー的立ち位置のキャラが1人も居ないなど陰鬱な雰囲気作りが細部にまで徹底されてるんですよね。

細かい部分で言うと、例えばステージ内で時折、仲間のセリフが入ったりするのですが、普通は敵をたくさん倒すと「すごいぞ!」とか「なかなかやるな!」みたいなセリフが入るものですが、このゲームだと「お前には慈悲の心が無いのか!」とか「無用な殺生はするな!」とかひたすら主人公を責めてくるんですよ。これが地味に辛い。

ちなみに一部を除いて敵を倒さずにステージをクリアすることは出来ません。どうしろと。

同じくバッドエンドしか用意されていないゲームに『SIREN』という作品があります。

しかしこのゲームが鬱ゲー”と呼ばれることはほぼありません。それはなぜでしょうか。

それはこのゲームには所々、ネタ(お笑い)要素が含まれているからだと思います。

急にファミコンチックなゆるーいミニゲームが遊べたり、陽気な音楽が聴けたり、製作スタッフの内輪ネタのようなものが含まれていたりなど、お笑い的な要素を含んでいるため陰鬱なストーリーが緩和されてしまっているのではないかと思います。

しかし前述の通り、『DoD』には笑いたる要素が一切ありません。タイトルからメニューからBGMまで隅々まで徹底して暗い雰囲気を作っているなと感じました。


⑨最後に

令和の時代に約20年前のPS2ゲームレビューを書いてるのはおそらく僕だけだと思います。自分で言うのもアレですが、相当トチ狂ってます。需要もどこにあるか分かりません。

ただ僕も趣味の一環として物書きをしているので人を鬱な気分にさせるゲームというのはどんな物だと大変興味がありました。

そこで「ストーリー」と「ゲーム性」2つの視点からこのゲームをレビューさせて頂いた次第です。

居るかどうかは分かりませんが、この記事を読んで興味が出た方は一度プレイされてみてはいかがでしょうか。

なお鬱になっても責任は一切負いませんのであしからず。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?