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イリヤ・クーリックの3A

He jumps like a God.
カルガリーオリンピックの金メダリスト、ブライアン・ボイタノのクーリック評です。

ボイタノ氏もイーグルと3Aが得意。その彼にして″神の如く飛ぶ″だとか、これ以上ない賛辞ですね。完全同意でございます。
まぁ、敢えて言うならもう少し可愛げがあるものがいいですね。可愛くて美しい人ですからね。何かって言われたらちょっと思い浮かびませんから、まぁ神でいいんですけど。。

そして、同じく金メダリストのスコット・ハミルトン氏(長野オリンピックも解説してたと思う)は、the purestだと。もっとも美しくテクニカルなジャンパーだと…。

今インスタで若い人のジャンプとか褒めたりしてますけど、あなたの全盛期、それの100倍は綺麗に跳んでたからね!!

ニコ動に、イーグルからの3Aを集めた素敵動画があって、トリはボイタノさん、そのひとつ前に誰よりも長く尺をもらったイリヤクーリックがいるのですが、別格…。イーグル深いは長いわで、3Aは当然高くて、なのにソフトでうっとりさ加減も別次元でした。

3A自体、4回転が普通になってきた今でさえ特別なジャンプ感があります。3Aが得意な選手達はそれぞれの時代を彩ってきたように思います。男子も女子も。

伊藤みどりさんの恐ろしく高い3A、ヤグディンの迫力ある3A、独特な入りのリーザの3A、羽生選手の美しい3A、コストルナヤの幅のある3A、他他、素晴らしいジャンプはたくさんあるのですが…が、イリヤの、あのずきゅんと上がり、ふわっと降りてくる、鮮やかすぎるジャンプ…、何より、着氷!!普通は跳べば着地の際にぐぅっと圧がかかりますよね。それに耐えなければならない…。上半身が抑え込まれるような…。ここに挙げた一流選手達も大なり小なり、その物理抵抗が伺えるのですが、イリヤは無い…。ふんわりふわふわ…。超高級柔軟剤で仕上げてるの…かな??
飛び上がる時はロケットエンジン搭載してて、降りる時は一転、背中に羽が??と目を疑うほど。それとも天使が彼のランディングを支えているのかしら?? やはりイリヤクーリックの3Aは他と比較することは不粋な神のジャンプのように思われます。

彼の3Aは実況や解説者の素を引き出してきました。
3Aを飛んだ瞬間に彼らが発する感嘆の声、いや、漏れ。
Oh…. オァゥ….(ちょっと真似できない音)
Beautiful, so beautuful (間髪入れず)ohhh beautiful…….
その美しすぎるランディングを舞い落ちる木の葉のようだと形容したのは五十嵐さんだったでしょうか。着氷が質量のある物体のそれだと思えないのですよね。。。もしかして重力をコントロール……たしかに神にしかできないでしょう。

3Aからのコンビネーションは2つ目のジャンプ…大抵3T…も流れるようにひとつづき。フリーレッグも美しいものだから、重箱の隅をつつこうと思ってもそもそも隅がない!という感じ。

単独の3Aがまたまた特筆すべきなのは、曲の盛り上がりだったり、中盤、終盤、ピリリと効かせたいところにばっちり合わせてくるところ。いくらプログラムが良かったとしてもそうそう合わせられるものではないです、こんなの。。曲と動作の融合、フィギュアの醍醐味をイリヤは3Aを使って余すところなく魅せてくれます。

今、4回転に気を取られるばかりに美しいジャンプを飛ぶ人が少なくなってしまったように思います。
フィギュアもスポーツなので、基本、どんどん多回転には挑戦していってほしい。みんなが4回転跳ぶなら私は5回転跳ぶと言っているトゥルソワも好きだし、応援しています。

でもなぁ…。
美しさも求めるのは鬼ですかね。。
久々にイリヤクーリックの動画見て感動したんですよ。ジャンプの美しさに、高さに、流れに、惚れ惚れするような柔らかい着氷に。あれ、ジャンプってこんなに美しいものでしたっけ??っていう…。とにかく回らなきゃいけない的な4回転に見慣れていたからでしょうか。こういった無理無理4回転に対するディックさんの″雑巾を絞るような…″は言い得て妙。酷い言い草…ではなく、それくらい過酷=そこまでしてやるものではないよ、と捉えています。リッポンで跳ばれた日にゃー、まんまそれ…みたいな…。(…まぁこの人はキリン衣装にも愛ある酷評してたので、言葉の裏を取るようにしています)イリヤ全くもって捻って跳ぶタイプではなく、4回転も自然で無理なく美しかったですから。。
しかし、タラソワさんのところに移った時点では4回転はまだ試合で跳んだことはなかったですよね?誰に習ったの?自己流? 前のシーズンは”試合”で飛ばなかっただけ? 移ってすぐのシーズンで跳んできてますから、一体どうやって習得したのか謎なのです。彼は技術的なことを教えるのが非常に上手らしいですが、それを自分に落とし込んだのでしょうか。もしくはちょっとやってみたらできちゃった系……、ありえなくない。天才…じゃなかった、神なのでね。まぁ、実際はジャンプ専門のテンポラリーなコーチがいたとするのが自然でしょうか。。既に技術は完成していたようにも見えますので、ジャンプは独自の体でタラソワさんのところへ行った?? 陸上トレーニングのためのトレーナーがいたという話は聞いたことがありますが、それはスタミナUPのためだったはず。

あれは教えてもらったからといってできるものでは無い(ヴィクトールさん門下だからといって、誰もがジャンプが得意なわけではない…。寧ろ有名どころはイリヤくらい…?? ブッテルスカヤ姐さんはジャンプはどちらかというと苦手だったイメージだし)…のでしょうが、誰か継承しないだろうか…。してほしいような、唯一無二であってほしいような…。複雑な気持ち。

イリヤのジャンプは何ならパンクしてるのも好きなんです。空中でふわっと解けて着地はもっとふわっととっても綺麗…。えびせんのようにふわっと軽い…。着氷も流れも通常通り神‼️ 1997年のNHK杯、何とSPもFPもどっちも3A抜けやらかしたんですよ(しかしエキシビジョンできっちり決めてくるという…。FPではリカバリーできてましたけれども)1Aになっちゃいました。今なら転倒よりやっちゃいけないのですが…(ダウングレード?なんやらで点数がめちゃくちゃ低くなるから)でもはっきり言って、綺麗でした。いいんじゃないの?あれで、…と思ってしまえるパンク。。結果、優勝してます。何ならステップアウトも片足で耐えるのも、前に倒れちゃうのも好き…。要素点はまだしも、プレゼンテーションには影響ないんじゃない? 旧採点法バンザイ!! どうあったって美しいし…。…ここまでくると変態かしら…。

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