帰ってきたユンファに翻弄された日記:プロジェクト・グーテンベルク感想
2/7に公開された『プロジェクト・グーテンベルク』を見てきました。
チョウ・ユンファが主演で、『男たちの挽歌』をガンガンにオマージュするぜ! って感じのPRもされてたからそんな気分でいました。
で、実際に見た感想。
まさか、主演がチョウ・ユンファですってキャスティングから観客を騙す罠だとは思わなかったよ。いやあ、騙された騙された。いい具合に監督と“画家”の手のひらで踊らされたよ。
本文
このPRも含めて、テーマや雰囲気から、どうしたって『男たちの挽歌』のマークの姿を映画館の観客は、そして世代的に『男たちの挽歌』見ててもおかしくない警察官は重ねてしまう。それが、ネタでなくガチのギミックなのが、この映画の一筋縄ではいかないところ。
さらに「主役」という言葉が強く使われてるのも印象に残った。
「主役」となる人やその周囲の人物に自己投影しつつ、「観客」である自分との断絶を意識して劣等感に満ち鬱屈した生活を送る。
そんな意識を大なり小なり抱く現代において、「我々が見たいと思うストーリー」を「彼らがそうかもしれないと感じさせる話術」で騙れば、自在に意識を翻弄できる。それをわかっているのが、本作の主人公にしてヴィラン“画家”と、そして『インファナルアフェア』の脚本担当だった監督だったんでしょうね。
こういう背景なので、とにかくチョウ・ユンファの描き方が贅沢。『男たちの挽歌』1と2のマークやケンのような軽薄な明るさの裏に潜む狂気や、ベテランになってから見せるようになった大仏様のようなアルカイックな微笑み、そして獰猛なくらいの黒社会のカリスマ性。いずれも「こんなユンファをもう一度見たい!」というもので、それだけに終章で見せた彼の本当の姿(この演技も良いんですよ)と、自分が騙された意味に愕然とするわけです。
ともあれ、『プロジェクト・グーテンベルク』。もの凄いクセの強い映画で万人に薦められるタイプではありません。でも、ハマる人にはクセになるくらいハマる映画でもあります。どちらに転ぶか、できればまずは一度スクリーンで見てください。
プロジェクト・グーテンベルクを見るうえで全く役に立たないウンチク
チョウ・ユンファは昔、ドラマ版『笑傲江湖』に出演していた。しかも令狐冲役で。
似合うかどうかは、かなり微妙な線だな……。
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