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英雄たちの挽歌~銀英世界の実弾とエネルギー火器

2/7よりチョウ・ユンファ主演の『プロジェクト・グーテンベルク』が公開されます。

チョウ・ユンファといえば、当然思い浮かべるのは硝煙のロマンあふれる香港ノワールの傑作『男たちの挽歌』なわけです。もちろんてんぐも大好き。具体的には、このイベントに行くくらい。

さて。

その香港ノワールと同じくらい大好きなのが、銀河英雄伝説。Twitterの方でも色々と考察をしてまいりました。

銀英伝はSFなので個人携行火器はブラスターとか荷電粒子ライフルといったエネルギー火器が多い(かと思えばゼッフル粒子をまき散らして斧で頭のかち割り合いもはじめる)ですが、原作をよくよく読むと、意外に実弾が使用されている描写もあります。

というわけで、本日のお題は「銀英世界における実弾火器とエネルギー火器の使い分け」についての論考です。

てんぐが把握してる実弾火器についての言及、および使用シーンは以下の3つ。

1,外伝『黄金の翼』での銃撃戦でキルヒアイスが使用した拳銃弾

2,外伝『星を砕くもの』でアンネローゼ暗殺未遂犯が使用した対戦車ライフル

3,本伝3巻でのイゼルローン外壁上での白兵戦時の地の文の解説

探せば他にもあるかもしれないけど、とりあえずこの3点に沿って考察してみます。

まず、実弾を使用すると何が起こるか。まずは「音」。発砲音の発生は必然的に非常事態発生を周囲に認識させる。つまり歩哨任務においてはエネルギー火器より優れていると言えます。

次に打撃力。銀英伝の実弾として使用されるウラン238弾頭は着弾時に高温を発生させると思われる描写があります。加えて、亜音速で飛来することによる運動エネルギーの効果もあり、エネルギー火線以上に高い打撃力を標的に対して与えることが期待されます。アンネローゼを標的とした狙撃に一般的な荷電粒子ライフルでなく対戦車ライフルが使用された理由も、おそらくはこの効果にあるのでしょう。

テロリストでなく正規軍の部隊においても、地上戦における装甲車両に対する狙撃任務や、本伝3巻での要塞対要塞での外壁上の白兵戦時に言及されたように、光学的なエネルギー火線を無効化する歩兵用装甲服のミラーコーティングに対抗するために実弾が用いられるということも考えられます。本伝2巻でリッテンハイム侯の麾下にあったウェーゼル狙撃兵大隊も、こうした大口径ライフルを運用する部隊だったのでしょう。

打撃力と合わせて注目すべきは貫通性の低さ。標的から貫通した弾頭や火線が無関係の第三者や施設などへ被害を及ぼす可能性を減らす事が求められる、警察などの法執行機関においては、軍の陸戦部隊と異なり貫通力の低いホローポイント弾または軟頭弾が使用されていると想定されます。

同盟軍の帝国領侵攻作戦でも動員された「国内治安部隊」も、この法執行機関に属する部隊だったと考えられます。

以上の論点を整理すると、

A,歩哨任務

B,対装甲攻撃

C,警察、治安維持活動

この3点においては実弾火器にアドバンテージがあるといえるようですが、逆を言えば、そこ以外ではエネルギー火器が求められることになります。

また、エネルギー火器は基本的には銃口から直進するため、命中させるための難易度が実弾に比べて低くなります。さらに、引き金を引き続けながら左右上下に振れば「切断」のようなことができます。外伝3巻でRR連隊の“カルテット”のひとりデア・デッケンが有線ミサイルのワイヤーを狙撃で切断したのも、この「切断」の動作だったかもしれない。

このように使用法に融通が利く上に、エネルギー火器はバッテリーのチャージをすれば原則としていくらでも再利用できる。実弾が使い捨てになることに比べ、このメリットは部隊単位では大きいはず。

というわけで、特に装甲で守られていない標的に対して、ゼッフル粒子の高濃度散布を気にする必要のない野外のような環境下において、わざわざ実弾という嵩張る銃器を使用する必要を感じない、というのが帝国同盟両軍の見解なのでしょう。

以上が銀英世界における実弾とエネルギー火器の使い分けについての論考ですが、最後にてんぐの本音を申し上げます。

理屈は良いから実弾使おうや英雄ども。

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