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てんぐのD&D日記:ターシャ本はD&D拡張セットだ!

 先月に発売されたD&D5eデータブック「ターシャの万物釜」(通称ターシャ本)、こちらもフィズバン本同様にてんぐも購入してました。
 これは一読して、「とんでもない本が出たもんだぞ」と感嘆しました。何せ、新しいクラスや呪文だけでなく、D&DというRPGそれ自体の可能性や遊び方まで拡張する記述が満載です。
 そんなわけで、今日はターシャ本を読んで「これ、ちょっとヤバいですよ?」とてんぐが思ったポイントをご紹介します。

セッション・ゼロについて

 ターシャ本の4章は「ダンジョンマスターの道具箱」と銘打ちまして、実際にゲームを遊ぶ上でDMが直面するかもしれない様々な問題についての対応が記されてます。
 このセッション・ゼロもそのひとつです。ゼロ年代から10年代の日本のTRPGを経験した人なら、ハンドアウトの配布とPC設定の調整を行うプレプレセッションという言葉の方が通りが良いかもしれません。
 そのセッション・ゼロで、特に大事なポイントが「人付き合いの決めごと」、特にハード・リミットソフト・リミットという項目です。
 PCではなくプレイヤー自身が感じる嫌な事、受け入れがたい描写や展開というものはあります。特に、自分自身が当事者や実体験している場合はなおさらです。本書では性、搾取、動物や児童への加害、そしてレイシャル・プロファイリングも事例として挙げられています。
「これはゲームなんだから、フィクションなんだから」は万能の免罪符でも特権でもありません
 少なくとも、その卓において、卓の当事者が受容しがたいと思うような描写や展開のリミットはどこなのか。そして、リミットを守ってほしいと思う側も、それをどのように伝えて反映を求めるか。
 そして、ゲーム上だけでなく、実際に遊ぶ人間同士の態度や言動なども、どこまでがユーモアとして受容されるか否か。
 これらは決しておざなりにしてはいけません。
 このような価値観、人間としてのマナーに関する擦り合わせもまた、TRPGに限らず全ての人と人が交流する場において肝に銘じましょう

 それ以外のポイントとしては、サイドキック作成に目が留まりました。
 キャンペーンシナリオを遊んでいて、特に問題になるのがスケジュール調整。「メンバー全員がなかなか揃わない」という悩みは、TRPGユーザーなら誰しも一度や二度は経験したことがあるでしょう。てんぐもそうでした。
 その際に、参加できないPLに「シナリオを先に進めてて良い」と承諾を取ったとして、欠員となったPCの戦力としての補充をどうするか。その解決策としてこのサイドキックは活かせます。
 例えば、ローグのPLがいないときは、「冒険者ギルドからフリーランスの専門技能者エキスパートを紹介される」、なんて展開も考えられます。
 また、PLに自由にキャラメイクをさせたら全員が戦士系になってしまってパーティの回復能力が無さすぎる、なんて事態になったときも、サイドキックの呪文の使い手スペルキャスターとしてヒーラーを加入させれば誰も自分の趣味を曲げずに済みます。
 そして、実際に遊んでいってそのサイドキックの存在感が増していけば、その時は主要キャラに昇格するということもありえます。次のキャンペーンにおけるPCとか、あるいは秘めた思惑を内包したNPCとか。

 人付き合いの決めごとにせよサイドキックにせよ、その他のダンジョンマスターの道具箱には、ユーザーがいかに気持ちよくTRPGを遊べるようになるかのノウハウが詰まっています。
 もしD&Dのユーザーでなくても、この項目は読む価値が大いにあるでしょう。

D&DでSFを遊ぼう!

 この本のナビゲーターであるターシャさまは魔女の女王のはずなんですが、本書では戦士系の追加データも充実しています。戦士の追加戦闘スタイル<素手戦闘>や戦技<つかみ打撃グラップリング・ストライク>と追加特技<叩き潰し屋>は、現代社会の総合格闘家を意識させられます。ターシャさまって、実は総合格闘技が好きなんでしょうかね
 その他にも、戦士の追加サブクラスのサイ・ウォーリアー、ローグの追加サブクラスのソウルナイフ、追加特技の<テレパス>や<念動力>といったサイオニック能力、追加特技の<鉄砲使い>(これを取るとヴォクス・マキナのパーシーみたいなキャラも手っ取り早くできますね)などを見ていると、D&DでSF世界や現代世界を舞台にしたシナリオを遊びやすくなってることに気が付きました。
 例えば、PCはMCUの超人ヒーローのように現代世界でヴィランと戦い災害から市民を守るというシナリオを遊ぶ場合、サイオニック能力者は直球で活躍できるでしょうし、新クラスのアーティフィサーもサブクラス:アーマラーを選べばアイアンマンかウォーマシン、若手世代ならアイアンハートばりに違和感ありません。巷では「スタンドじゃねえかコレ!」と絶賛のモンク新サブクラス幽波紋幽波門も、MCU版Ms.マーベルの光の腕相当と考えると超能力っぽさが出ます。
 その他のクラス、特に呪文使い系クラスも設定を少し工夫すれば、現代社会でも登場させられそうです。一番ハードル低いのは、超越者との契約で呪文が使えるウォーロックじゃないかな。というか、それだけでもうシナリオフックがひとつできるくらいだし、DMやるならむしろ大歓迎です。
 呪文使いというのとは少し違いますが、バードの新サブクラス雄弁の楽派は政治家の再現にピッタリです。そういえば、埼玉県では年始に政財界のバードたちが参集する奇祭が有名でした。

 あと、昨日アニメ版ガメラを一気に最後まで視聴しながら、「こういう怪獣ものもD&Dでやれるな」って思いました。

 幼体などのミニサイズの怪獣の群れはPCを含めた人間の相手としては手ごろと言えますし、怪獣ものと言えば得体が知れない特務機関だの秘密結社だのもセットで出てきます。場合によっては地球外から出張してくる方々も。

 こういう方々やそこに雇用されてる方々と協力したり対決したりするっていう怪獣ものの醍醐味でしょう。
 また、その怪獣も、時空を超えてやってきたフォーゴトン・レルムやドラゴンランス世界などでお馴染みのモンスターだった、という展開にすればD&Dらしさが倍増です。
「子供たちが大人に隠れてアウルベアの幼体を育ててる」というジュブナイル展開もありえます(こうなるとレンジャー:ビーストマスターも解禁できますね)し、五つの頭を持つドラゴンを崇めるカルト宗教が暗躍したり、七羽のカナリアを連れた怪人顔に小さく特徴的なタトゥーを入れた魔女めいたお姉さん妙に尊大なスキンヘッドのおじさんが出てきても良いです。

 逆に、ファンタジーものの舞台であるフォーゴトンレルムやドラゴンランス世界に銀河帝国の艦隊が攻め込んでくるって展開だって行けます。
 この場合の銀河帝国ってのが、スターウォーズの方なのかゴールデンバウム王朝の方なのかは、まあ好き好きといたしまして。
 というか、調べてみると結構色々あるんですね、銀河帝国って。

 D&D5eには元々汎用RPGとしての面があります。
 その汎用RPGとしての面を、ターシャ本は存分に引き出していると言えるでしょう。

モンクがターシャ本でバカ強くなった件について

 我が最推しクラスのモンクについては、何か新作データが出るたびにどのように強化されるかチェックするのが習慣になっています。
 それにしても、このターシャ本での強化についてはたまげました。これ、少なく見積もってもこれまでの5割増しくらい強化されますよ。
 ヒューマンのモンクなら、まずヴァリアントで追加特技<戦闘スタイルのたしなみ>で二刀流を得て、5LV特徴の<一撃必中>から3LV特徴<“気”追撃>のコンボを決めて、さらにそこから従来の<追加攻撃>を入れれば、モンク武器4回攻撃が可能になります。
 イメージとしては、詠春拳の八斬刀を再現しやすくなりました。

 別の路線で行きますと、2LV特徴の<モンク武器追加>でロングソードを選択した上で、3LVでフィズバン本で追加の昇竜門を選択すれば、先日の記事で言及した「竜の闘気を宿した剣士」が簡単に作成できます。
 また、モンクは能力値の優先順位が敏捷力と判断力が上位にくるため耐久力が低く、そのためHPがファイターなどに対して伸び悩みます。この問題を4LV特徴の<高速治癒>である程度は相殺できますし、これを発動することで<“気”追撃>も連動します。
 もちろん、<叩き潰し屋><切り裂き屋><刺し貫き屋>などの追加特技の効果も大きいです。
 幽波門や内功治療術ができる慈悲門も嬉しいですが、この追加クラス特徴や追加特技の連動こそ、モンクを極めて強化してくれます。

 というか、やっぱりターシャさまって格闘技好きでしょ?

ブレードシンガー、ついに全種族に解禁!

 効果的にもビジュアル的にも人気絶大なため、HJ時代はエルフ限定という制約があったはずなのに、現場のユーザーではなんやかんやと理由をつけて他種族でも使用されていたウィザードのサブクラス、魔法剣士のブレードシンガーですが、この度ついに全種族解禁です!
 そんなわけで改めてじっくりと効果を確認しましたが、ACについては相当に向上しますが、命中判定については自前の能力修正値と習熟ボーナスが頼みになります。
 ブレードシンガーになろうとするなら、どの剣を使うかをあらかじめ決定して、それを用いるための能力値を知力と同じくらいに引き上げる必要があります。理想を言うなら能力修正値+3は欲しいところです。
 前述の<切り裂き屋><刺し貫き屋>といった特技との併用を視野に入れりることもオススメします。
 ところで、音楽と剣術と法術を融合させた長命種由来の魔法剣士ブレードシンガーって、陳情令の姑蘇藍氏を連想しました。
 あの子たち、実はエルフ並みに長生きなんだよねえ。

 それと、27ページのブレードシンガーのイメージイラストって、なんか士郎正宗っぽかったですね。あの画風ってアメリカでも好かれてそうですし。

新たな能力を活かすための、新たな舞台

 上記以外にも刺激を受け、目から鱗が落ちる記述やイラストがターシャ本には満載です。
 例えば、8ページのサブクラスの変更。「サブクラスの変更は受け付けません」じゃなくて「サブクラスを変えたい? じゃ、それをお題に展開を作ろう」というのがTRPG精神です。
 “献身の誓い”を立てたパラディンが亡国の悲しみと怒りから“復讐の誓い”に代わるというのは良い事例ですし、あるいは、どこかの銀河の金髪の英雄のように、「最愛の姉を奪った貴族社会への“復讐の誓い”を立て、その復讐の成就と共に親友を喪ったパラディンが、その心の欠落を埋めるために“覇道の誓い”に切り替える」なんてこともありますし。
 もちろん、ターシャさまの本業の魔法関連の追加データだってそうですし、これらを得てPCを強化したり新PCを作って、次に欲しくなるのはそれを活かす舞台です。
 そんなタイミングで、絶好のニュースが飛び込んできました。

 スターターセットのストームレックなどのキャンペーンも楽しいですが、こういう単発シナリオは手軽に遊べるという利点があります。
 その意味でも、まさに絶好のタイミングと言えます。

皆様、良きTRPGライフをお過ごしください!

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