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魂を入れない創作物には命が宿らない
私は読者に夢を売らなくてはいけない仕事をしてきた。
でも、今の私はその世界に魅力を感じなくなってしまった。だから書けなくなった。
「離婚歴はNGである」というルールにぶち当たったのがきっかけで、心の糸がプツンと切れた。離婚は失敗の象徴。失敗は恰好悪い。だからNGなのだ。
理屈はわかる。以前の私なら離婚歴の部分を婚約歴に書き換えて作品を完成させただろう。でも今回、それができなかった。
もちろん完璧な成功物語に魅力を感じる人は大勢いるし、私も10年前はそうだったので、その世界を否定するつもりはない。
自分の価値観が変化したのが書けなくなった大きな理由だ。魅力的だと思う部分を削ることがどうしてもできなかった。
創作の世界では、価値観の変化で新たなものを生み出せなくなる人は少なくないと思う。テンプレがあれば、メカニカルにできる人はいるかもしれない。でも、私には難しいことだった。
自分が価値を感じていないものを表現する。これは創作者にとっては自分に嘘をつくというのとほぼ同じ行為で、本当にきつい作業になる。どんな作品であっても、自分の中で「これが素敵だ」と確信を持てているものじゃないと輝かない。
こんなに年月をかけなくちゃわからなかったっていうのが驚きだけれど、会社員として働けなかった自分がお金を得るのに「表現して換金すること」はどうしても必要だった。だからここまでみっともないほどにしがみついた。 でももう崖にしがみついていた手を離すことにした。
この後、どうなるかはまだわからない。不安だけれど、枯渇した井戸を掘ってもどうしようもないので別の道を歩くしかない。
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本来表現っていうのは「お金のためにやる」ことではないと思う。表現していたものが認められてお金になる、っていうことはあると思うけれど。
そういう意味で、私が抱いてきた「表現で成功する」という目標も間違っていたんだと思う。成功を意味するのが「たくさん売れて儲かる」っていうイメージだったから。それが間違っていたんだと思う。
自分の魂から出た作品が、少数であれ誰かの目に留まって心を揺さぶる。
今はそれが「成功」だと思っている。
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