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セルフミステリーツアー

今日は、外に出たがらない自分に鞭打って、昨年お世話になったコメダに新年の挨拶をしに行った(ただの通常モーニング)。
だけど今日もなかなか混んでいて、席を待つ人が出てきたので早々に退席することにした。
ただ帰宅するには早いし、家に1人でいると鬱々としてきてしまう。
どうしようかと思いながら適当に散歩してたけど、途中で「そうだ電車でも乗ってみよう」という気持ちになった。

偶然にも私にしては遠出に耐えうる服を着ていたのも大きい。
この格好なら電車に乗っても恥ずかしくない。
そう思って、とりあえず最寄駅に向かった。

電車に乗ろうとは思ったが目的地を決める意欲はなく、ましてや携帯で調べるなんてめんどくさい事もしたくなかったので、ひとまず人が少ない方面の電車に乗った。
そしてそのまま終着駅まで乗っていることにした。

車内の座席に座って外を眺めながら、目的地とかやる事を決めない遠出もいいものだな、と感じていた。
頭の中で次はアレしてコレしてって組み立てる必要がないから、ただ目の前の景色とか電車の揺れなんかを味わえる。

終点まで行ってもそれほど目新しい光景もなかったので、そのまま隣路線の電車に乗り継いだ。
こじんまりとした2両編成だった。
こんな電車久しぶりに乗るなあ。
でもこの感じが今の私には丁度良かった。

どこで降りるか決めずに乗りこんで、ぼんやり電車に揺られていた。
ただ静かな見知らぬ土地に連れていってほしかった。

車内の窓から、流れる景色を眺める。
どんどん乱立する高層ビルや繁華街から遠ざかっていく。
よしよしいいぞ。
ガチャガチャしてないところならどこだっていいんだから。

たまに窓からの景色が一気に抜けたと思ったら、息をのむほど美しい湖と山々が眼前に飛び込んでくる。
こんな景色が見られただけでも、この電車に乗ってよかったと思った。
改めて自分は、華やかな都会風景よりも、山や川の景色に心が躍るタイプなのだと実感する。

電車が進む途中で、無人駅をいくつか通過した。
それが成立する平和さや静けさが羨ましいと思った。

乗車中ぼんやりする時間が長かったからか、今まで何度考えたかわからないけど、気づいたら休職に至った経緯に思いを巡らせていた。
改めて、私は自分のことを何にもわかってなかったのだなという結論に達した。

そんなことを取りとめなく考えていたら、またもや終点まできてしまった。
ようやく観念して、着いた駅で降りて街を歩いてみることにした。

最終的に辿り着いたのは、岐阜県多治見市。
皆さんはご存知だろうか?
東海地方に住んでいる方以外はあまりご存知ないかもしれない。
私が多治見市について知っていることと言えば、たびたび国内最高気温を更新する、日本一暑い市と言われていることくらいだ。
多治見市に住んでいる方がいたら申し訳ない。
でも行ってみたら、なかなか素敵な街だった。

駅に降りたは良いものの、意地でも携帯で行き先を調べたくなかったので、駅構内の観光案内所に寄った。
道中の電車内から、いくつか神社やお寺を目にしたことで、自分も行きたい気分になっていた(初詣は済ませているけど)。

観光案内所のパンフレットによると、多治見市一押しのお寺は永保寺というらしい。
案内所の人に永保寺への行き方を聞いて、歩いて向かうことにした。
パンフレットに、私が好きそうな「書店に隣接するレトロなカフェ」も載っていた。
ついでにこのカフェのことを案内所の人に聞いてみたが、お店はまだお正月休みだそうだ。
残念だったが聞いておいてよかった。知らずにそのまま行っちゃうところだ。

駅を出て、もらった地図を見ながらふらふら目的地まで歩く。
永保寺周辺は、思ってたよりも山道に近かった。

お寺よりも先に辿りついたのは大きな公園だった。虎渓公園というらしい。
園内になかなか立派な展望台があったので登ってみた。
私の他に誰もおらず、多治見市の景観を独り占めだった。結構圧巻だ。
展望台から下を覗きこんで、「この高さから落ちたら死ぬかもしれないな」と思った。
そう思ったら、体の内側からゾワッとした痺れが指先まで走った。
ああ、まだ私は死にたくないんだな。

そこから少し道に迷ったけど、ようやく目的の永保寺にたどり着いた。
とても清らかで気持ちのいいお寺だった。

ゆっくり見てまわっていると、池のほとりに野鳥がいた(知識がなくて鳥の種類は分からない)。
結構長い時間、じっと1羽で佇んでいる。

その佇まいにめっちゃ共感する


1人でぼんやりしに来たように見える姿に、思わず「わかるわ〜」と口に出しそうになった。
同じ種族だったら番だったかもしれない。

敷地内に、賓頭盧(びんずる)さま:別名を撫仏(なでぼとけ)と呼ばれる像が置いてあった。
御身体をなでると同じ部位が治癒するといわれる仏様とのこと。
私も先客にならい、お賽銭を入れて頭を撫でさせてもらった。治るといいなあ。

その後は参拝して、観光案内所の人に勧められた場所に少し寄ってから駅まで戻った。

電車の本数が少なかったので、帰りの時間までカフェで過ごした。
結局、移動時間を合わせて外出時間の半分以上は本を読むことになった。

何の計画も立てず気の向くままに行動したので、観光としては失敗なのかもしれない。
でも私は妙に満足して帰宅した。

最近鬱々としてたけど、少し気持ちがスッキリしたような気がする。